プールではしゃぎ過ぎたオッサン的なテンション
「牛頭さーん!? しっかりしてください! 牛頭さーん!」
『いやぁー勘違いしてごめんねぇ。あんたが半裸の女の子に突如として掴みかかってたから何事かと思っちゃって!』
何の文句も言えねぇ……寧ろ殴られただけで済んだのがありがたいというか。有馬さんの恩情で助けられてしまった。ありがとう有馬様。喜んでこのまま地べたを舐めさせていただきます。
『取り合えず中に運ぼうか……で、母さん。あのモンスター何処に放り出してきたの?』
『大丈夫大丈夫一固めにして来たから。もう逃げられない』
『成程、ひと塊に……あれ? 一固め? 塊ではなく?』
固めって何だろう……あ、兄貴ゴメンなさい。肩貸してもろて。もういよいよ頭グラグラで立てなくなってしまって。ちょっと回復したのが全部すっからかんになっちゃって立てないから。うん。
『ったく、母さんは手加減ってものを……』
『いや……兄貴も……余り手加減ってものを……知らなかったけれどもね?』
ボロボロになった主な原因って兄貴だよね。手加減を一切してくれなかったし。ちょっとは罪悪感を覚えてくださっても宜しいのですよ……!
『しかし、馬鹿息子が悪かったねぇ。ビックリしただろう?』
「え、っとなんで頭撫でられてるんだろう私……というか、牛頭さんは大丈夫なんですか!? えげつない音がしてましたけど!?」
『大丈夫大丈夫。アイツはね、私に似て頑丈なんだよ本当に』
「どうして頷いてらっしゃるんですか?! 大丈夫って事で宜しいのですか!?」
け、ケータイが使い物にならないから連絡も取れんのだ……でも大丈夫! 俺ってば頑丈だから! 直ぐに回復できるから! そこまで心配せんでも大丈夫! 一時間もすればあっと言う間に回復できるから! 多分。あ、廊下がちょっと濡れてる。後で拭いとかないと……
『えっと、ソファは……あったった。良し、寝かせるよ……よい、しょっと』
『悪いな……あぁ、漸く休めた気がする……』
「ご、牛頭さんあんなにぐったり……」
『ハイハイアンタはこっち。とりあえず服を着なさいな』
母さんすまん。コレで有馬さんが兄貴の奇異の視線に晒されなくて済む……しかし、折角のホームパーティだったのになんでこんな疲労困憊なんだろう、俺。
『はぁ……ったく、終わった……漸く……終わった……ぼろぼろじゃ……』
『まぁ休めばいいと思うよ、不幸とかも重なったし、その権利はあると思うけど』
『楽しいホームパーティの筈だったんだけどなぁ……』
こんなボロボロの糞みたいな状況になる筈じゃなかったんだけどなぁ……俺……ええいもう、アイツらマジで、ちゃんと警察に突き出さない……と?
『はー、ったく、本当に疲れたよ……』
「ご、牛頭さん! 大丈夫ですか!? 大丈夫ですよね!?」
『あ、有馬さんゆすらないで……辛いから……』
あ、ちゃんと服着てるね。良かった良かった。
『いや違う……母さん、あの、ゾンビは兎も角、ぶん殴って潰しておいた奴らが……!』
『あの若い連中だろう? アンタ等が取っ組み合いしてる間に建物に入れたよ』
えっ
『あのデカブツ相手にしてたんじゃ……』
『おつむがダメだからねぇ、私がちぃとばかり挑発してやれば直ぐに怒って追いかけてくるんだ。引き寄せつつ、纏めて抱えて放り込んでおいたのさ。まぁ縛っては無かったから逃げ出せない訳じゃない。確実に確保できてるかっていえば微妙な所だけどね』
いや、でも何もしてないよりは……まぁ、何人かは間違いなく……転がしておいた研究者共は無理だな少なくとも。とはいえ気絶させておいたから、そう簡単には目は覚めないと思うけど。
『後はマジで俺の管轄外だ……此処まで疲労するまで仕事したんだ、もういいだろうよ』
『何がだい?』
『あーいや、独り言独り言。特になんかある訳じゃねぇよ……』
もう、ホント今日は限界まで仕事したから、後は警察の仕事だよ。パトロールからの不審者発見、通報で良かったのに、対処迄サービスでやったからね。ホント。いや、望んでやった訳じゃないけれどさ。
「うぅ、服もボロボロ……きゃぁー!? 携帯まで壊れちゃってますよ!? 本当に何があったんですか!」
『それは兄貴の大罪だから兄貴に言ってくれ……』
『うーん不可抗力だと言っても言い逃れは出来ない……弁償するから許して』
『とうぜん同じタイプの奴な。ワンランクでも世代落したら承知しないぞ』
『えー、って事は最新型のアレかぁ……高いんだよねぇ。僕も携帯慎重しようと思ってたんだけども、もうこれは来月にお預けなのかなぁ』
ったく、連続ログインボーナスコレでチャラになっちまった……じゃなくて。これじゃあ警察からの返事も受け取れないし。
『面倒だぞぉ……一応場所だけは伝えてあるけど、結構大雑把だし、正確には伝える暇なかったしなぁ。警察、来れるかちゃんと』
「すっごい長いため息ついてる……鼻息も荒い……」
そりゃあ吐きますよ。面倒が雪だるま形式で膨れ上がってるんだもの。
『警察かぁ……そういえば、僕らは事情聴取とか大丈夫なのかな』
『まぁしなけりゃならんとは思うが、そんなに緊張しなくても大丈夫だろ』
なんか事情聴取ってレポート形式でも大丈夫っぽいし。いっつもアイツが『レポート書いてくれ』って専用の用紙をくれて、それを書くっていう感じだし。
『ただ、俺が直接事情聴取の紙に書いて良いのか、とは思うけども』
『え? 直接書くの? 刑事さんとかが書く奴に? それいいの?』
『少なくとも、俺はまぁそれで大丈夫だったよ。それを渡せば「おっけおっけ。あとは俺が適当にやっとくから。心配すんな、こういう時は臨機応変」って』
『はー……日本の警察は進んでるんだねぇ。まぁでも一々口頭のやり取りを調書に起すのも面倒になったから、少しずつシステムを変えてるのかな』
そうかもなぁ……
『しかし、俺ら四人まとめてやる事になるんだろ? 俺と爺ちゃんは大丈夫としても兄貴と母さんは日本語慣れてないし……?』
あっ!
『ちょっと待て、そう言えば爺ちゃんはどうした』
「きゃっ!? は、鼻息が……っ」
『あっ、ゴメン急に起き上がって、びっくりさせちゃったね……えっ、待って鼻息?』
そんなに荒かったかな。じゃなくて! やべぇ、完全に爺ちゃんのこと忘れてた!
凄い怠くなりますよね。




