--- 始まりの場所
よろしくお願いします。本日投稿分の一話目です(1/2)
真っ白の空間に一人。
白い大きなシャツを着た黒髪の少年が立っている。
ぶかぶかの服から伸びた手足は骨ばかりかと思うほど細く、やつれているように見える。
彼の上半身くらいの大きさもある球体を眺めながら、静かにその頬を濡らしていた。
「何度やっても、駄目だ・・・」
瞬間、球体がきらりと光ったかと思うと一瞬で消え去り、残ったのは真っ黒の球体。
少年は手をかざし、球体を元に戻す。
球体にはいくつもの青をベースに、いくつもの緑、茶、白がブチ模様にちりばめられていた。
それは少年が管理している世界そのものだった。
少年は神と呼ばれることがあった。
神と呼ばれるものは他にもいて、それぞれ世界を管理していた。
少年はその中で、若者とか新人と呼ばれていた。
それが年を意味するものなのかどうかはわからなかった。
ただ、ほかの神がそう呼ぶのは少年の気質によるものだった。
「そんなに心を傾けるのはやめなさい」
遠い昔、一人の神がそう言った。
「愛するのはおやめなさい。観察するだけでいいのです」
遠い昔、またほかの一人の神がそう言った。
「手をかけるほどむなしくなるものだよ」
遠い昔、一人の神が呆れたようにそう言った。
何を言われても少年は変わらなかった。
その世界を愛していた。
愛しすぎてしまった。
それが、よくない方向に転がることをほかの神々が知っていたかどうかはわからないけれど、彼らの言うとおりになってしまった。
愛しすぎて、少年は一つの間違いを犯した。
そうして、その世界は間違ったまま進み始めた。
少年は今日も世界をやり直す。
何度やり直しても、何度やり直しても、弾けて消えてしまうその世界を愛していた。
少年は世界を観察し手を加えることはできる。
しかしよくない方向に転がり出したその日から、少年が出来ることは限られてしまっていた。
与えることはできても、奪うことができない。
弾け消えてしまわぬために、たった一つ奪えばいいだけだと気づいていても。
それができなかった。
消える世界を何度も何度もやりなおし、奪う一つを世界の中で移動させ続けた。
他のところに置けば、消えぬ未来をつむげるのではないかと。
世界中を転々とさせても、必ずその一つがきっかけとなり世界は弾けて、消えて。
残るのは闇だった。
少年は流せぬはずの涙を流した。
自分が間違えたその日から、少年は神ではなく人に近くなっていた。
いや、もとより人に近かったのだろう。
神は人を慈しみはしても、少年のように愛することはないのだから。
次の話も同時にアップされてます。