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ジーニー  作者: やどかり
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カナ(1)

人間は誰かに認識されることによって人として扱ってもらえるのなら


母からは疎まれ、父からは恥辱せしめられ、しかれども生かされている、認識されている私は、この二人を憎んだとしても、殺したいと思っても、


私が人として存在するためには必要なのでしょうか?


―――――――――――――――――――――――――――――――――――



その少女は、ポータプル便座に無理矢理ガムテープやら荒縄で木材やベニヤ板がくっ付けられた椅子に座りながらドア付近の天井のヤニで黄色に変色した辺りを見つめていた。



窓にはベニヤ板がネジ穴のつぶれたネジで固定され、ドアには外側から鍵とチェーンがかけられていた。


毎日8時、12時、18時

カギが開けられ、チェーンごしのその隙間から食事と飲み物がだされる。


その担当は母なのだろうか。見えるのは女性の手だった。


私がここに閉じ込められてから、最初の何日かは隙間から、か細くしかし恨みつもった声で”あんたなんか、生まなかった良かった”と呟いていた。

他にも何か呟いていたが、やけにその言葉が記憶に残っていた。


それ以外で開くことは、父が私を犯しにくる時くらいだった。


父は、一週間に二、三度私を犯す。

その時だけチェーンは外されてある。

私を乱暴につかみ、犯し、それが済むと何錠かの錠剤を口に流し込まれて、その後、ドアの前に座りタバコを吸う。


タバコの匂いには未だに慣れなかった。


何日、何十日ここに閉じ込められてからたったかはわからない。




中学を卒業する前まではいたって普通の生活だった。

地元の中学からやや離れた高校に進学した私は電車通学をすることになった。

別に深い理由はなかった。父と母から”いい学校に行きなさい”と言われていたのかもしれないがもう忘れた。

それとも、都市部の生活に憧れていたのかもしれない。

地元の友達と離れるのは辛かった部分もあったが、会おうと思えば会える距離だったし、高校入ってからは中学でも続けていたバレー部に加入し、同じ部活の友達もできた。


ただ、あることがあった。


父は、地元では有名な会社の重役だった。結構な反感を買っていたようだ。


それが原因なのかどうかわからないが、私は部活帰りに拉致された。


しかし、友達と別れてすぐだったため、その友達が警察に連絡し、すぐにその拉致犯は捕まった。私も何もされることはなく家に返された。



その後からだ。

父は私をこの部屋に閉じ込めた。

最初の頃はドアを何度も叩いた。

ドアがダメなら窓も叩いた。

家がダメなら、外の人にと何度も叩いたが、何も助けはなかった。窓には、いつの間にかベニヤ板が貼られていた。


ドアを何度も叩いていると、父は私の服を脱がせ、便座のイスに私を座り拘束した。動こうとして横転し倒れた私を父は少し笑みを浮かべながらドアにカギをかけた。



そのまま丸一日放置された。

何とか壁を使い縦になることができた。


しかし、外そうと1日中身体を動かしたためか、縛れた縄が私の身体に痣を作った。皮膚にめり込んでおり、身体を動かすと痛みがあった。痣がまるで生きているかのように感じた。


疲れからか眠たくなっていたところ、ドアのカギが外れる音がして父が入ってきた。


“お父さん!出して!”



しかし父はまじまじと血痣だらけの裸の私を脚から胸、そして股を一通りみると、やがて



“カナ、綺麗になったな。お父さん嬉しいよ。こんな綺麗なカナを他の人に見せるのがそもそも間違いだったんだ。俺にとってはカナは大事な宝物なんだ。改めて気づいたよ。一番だ。わかってくれるよな。”



“分かんないよ!早く出して!”

私は声を荒げた。こんな大きな声がでるのかと妙に冷静な私がいた。

しかし、父は何も言わず、ドアを閉めた。


静かだった。



父はすぐに戻ってきた。片手には大きなキザ刃の鋏を持っていた。

私は解放してくれるのだと思い、嬉しいやら恨みが混ざった上目遣いの眼で父を見つめながら


“お父さん…”

と呟いた。



父は私の背中へ周り、拘束した縄をバチッ、バチッと切断した。

拘束が外れた瞬間、私は前方に倒れかかっていき、地面に四つん這いに近い姿勢になった。


手に力が入らない、脚にも。

それでも、何とかドアに出ようと向かおうとすると、肩を捕まれた。押さえ込まれた。



“カナもお父さんが好きだよな。

お父さんもカナが大好きなんだ。”





私は犯された。


“やめて!”



声は出しつくしたのか、思いの他小さかった。


“お母さん!助けて!”



“カナ、母さんなら今いないぞ。カナの高校に行ってもらってるんだ。カナは、大切な宝物だからな、しっかりしまわないとな。”



そういうと、父は私の顎をつかみ近くにあった、姿見で私に自分の顔を見せた。父のやや黒い腕で私の肌がより白く感じた。

その姿見は昔父が私が中学にあがった際に買ってくれた私の身長よりやや大きいものだった。


それをみて、私は思った。ここは私の部屋だったんだと。


それからの記憶がない。


気づくと、私は姿見の側で倒れていた。

タバコの匂いが微かにしたが、次第に気にならなくなった。


何故か涙が出た。


“ヴッ…ヴッヴッ……”


ベニヤ板から漏れだした僅かな光が姿見で反射して床の一部分を照らしていた。


そこだけは、ほのかに暖かった。







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