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俺たちは夕飯にする為メシ屋を探す、これも一応諜報活動も込みなんだよ、適当な怪しそうなメシ屋に入ってメニューを見るあまり期待はせずに今日のお勧めって奴をミケーネと俺の分を注文する。
「店員さん今日のお勧め2人前頼む」俺はそう言って店員さんを呼ぶ、
「は~い少々おまちください~」
しばし待っていると店のおかみさんらしき人が俺たちのテーブルに料理を運んできた、
俺たちは一口含んでから只無言でたいらげて行った、
「ミケーネ俺は35点位だと思うがおまえは?」
「30点、材料の仕上げが手を抜き放題」
「うむ、やはりそんな所か」 俺たちはどんなにまずくても料理を残したりはしない、残すって事は食材に対して失礼だと思うからなんだよ、下手に作られた食材を弔う意味で完食する事にしているんだ。
俺たちは「ごちそうさま」と言って代金を払いそのまま店を出た、
宿に戻り明日の事を考えながら就寝。
昨日のクマ獣人のキリーを訪ねて城に行くことにした、キリーの伝手を使い強引に資料室へ入り込んでこの土地の鉱物の産出具合を調べていたんだ、変わった金属がこの土地で産出されるようなんだが全く加工が出来ない難儀な金属が産出されるらしい、俺は昔のお伽話に出てくるオリハルコンじゃないかと当たりを付ける。
サンプルがあった、それは見た目黄金か真鍮のように見えた、しかし加工が出来ないからこの国では価値を見出せないので只の難儀な金属として認識されているようだった、
「キリー、この金属はどの辺で取れるんだ?」
「ん?これか、金鉱床に近いところから出たな、これを見つけた時は工夫達が大層喜んだらしいが叩いても変形しないしどんなに加熱しても溶けないから加工も出来ない難儀な金属ってことでコレの名前もナンギって名前で呼ばれてる、」
「このナンギって金属は沢山あるのか?」
「山に行けば少し掘ると出てくるぞ、」
「そうか、ちょっとこれ売ってくれないか?」
「そこの見本ならあんたにやるよ、」
「そうかい、すまないな、有難く頂戴していくぜ」
俺は宿屋近くの鍛冶場に行き早速加熱してみた、ナニコレいくら加熱しても溶ける所か柔らかくもならない、これじゃあ加工も出来ないなと、思い魔法で火を出してタングステンと一緒に加熱してみる、がタングステンの沸点5555度を超えてもナンギは溶ける気配も見せない、俺は加熱して溶かすと言う事をあきらめた、魔法で金属を溶かすと言う手法を考え出す事にした、最初はイメージだ、金属がとろけていくイメージをこのナンギにぶつける、10分くらいナンギに魔力を注いで変形させようと試みる、
鍛冶場の連中が俺に注目している様だ、このナンギな金属を加工すること自体が珍しいようだ、
「いよう、兄ちゃんそいつは溶けねえし加工も出来ねえ難儀な金属ってしらねえのか?」
ドワーフの職人らしき男が声をかけてきた、
「それが出来たら面白いと思わねえか?」
俺は笑いながら答えて見せた、
「おう、そうかいじゃあ加工出来たら俺が1杯おごってやるぜ兄ちゃん!」
俺はその言葉で気合が入った、
「じゃあもうちょっとだから見ていてくれよ!おっちゃん、」
そう言って少量の魔鋼をナンギな金属の隣に置く、すると互いに二つの金属が溶けて混ざり始めた、
「おおっ!兄ちゃん溶けたじゃないか!」
「ああ、思った通り熱じゃあ加工が出来ない金属のようだな、だから魔力を使って加工してみたんだ」
俺は残りの魔力がかなり少なくなってかなりヤバイ、全長60cm程の片手剣の形状を作り出した所で俺の残りの魔力が全体の5%以下になると目の中に緊急警告のアラームが点滅し始める、枯渇停止ですべてが終わるところだった。
「すまねえ、魔力枯渇寸前で意識が朦朧としたようだ」
俺はドワーフに何度も声を掛けられていたらしい、
「おう、そうだったかあのまま倒れちまうんじゃねえかと思ったぜ」
「じゃあ気付けに一杯おごってくれ」
「ああ、加工が出来たら一杯おごる約束だからな、」
ドワーフのおっちゃんは陽気に答えた、ってか単に飲みたいだけの気がするよ、まあ とりあえず片手剣に汎用の鍔とグリップに柄頭と鞘を付けて完成させた、軽く振ってみる バランスは悪くない、
「おっちゃん軽く打ち合ってみないか?」
「戦斧しか使えねえぞ、俺は」
「じゃあそれで頼めるか?」
「ああ、しかしお前さん体はもういいのか?」おっちゃんは鍛冶場の棚に置いてあった戦斧を掴み構えを取る、
「体力は十分大丈夫だ魔力がかなり少なくなってふらつくだけだからな」
それを聞いたおっちゃんが怪訝そうな表情で振りかぶって大上段からの一撃を放つ、俺は戦斧を受け流すように戦斧に片手剣の刃を当てたつもりが何かが刃に当たる感覚だけが手に残る、
俺は間合いを間違えて柄を切ったのかと思ったんだ、両者共その場で固まる、戦斧の刃が半分になってその破片は俺の左斜め後方に落ちていた、
「お、俺の戦斧が...」
「おっちゃんすまねえ、戦斧ダメにしちまった、詫びにこの片手剣と同じ材料で作る、それでいいか?」
「いや戦斧はいいんだ、だがこうもあっさりと俺の作った戦斧が切れちまうなんて...」
「ひょっとしてこれがアダマンタイトってやつなんじゃ?」
「そうかも知れないし違うかもしれない、わしには何とも言えないな、城の古い資料にそれらしき記述があると言う噂を聞いたことがあるが、」
「城か~明日にでもキリーに頼んでその資料を見せてもらってくるよ、だが今日はこれから酒場だからな~」
「おう、そうだったな ちょいと作業場をかたずけてから俺の行きつけの店があるんだ、そこに行こう」
俺たちは作業場を軽く掃除してこの鍛冶場のある通りを城の方に向かって行くと昼間っから陽気に騒ぐ声が聞こえた、さすがこの街の鍛冶場街昼間っからドワーフの御一行さんたちがたむろしていた、
「おう、ここだ」
店内に入るとウエイトレスの姐さんが席が相席になるがよろしいでしょうか?と訪ねて来るがここは当然相席で構わないと伝えエールとつまみを注文する。
「挨拶が遅くなった、俺はジュン・コーナ、武器商人をやっている」
「俺はハンス・ミュンヒだあそこでずっと鍛冶屋をやっている」
「ほう、武器商人かどんな武器を扱っているんだ?」とハンスは興味深そうに聞いてきた、
「大抵の物は扱ってるぞ、扱っていないのを探すのが難しい位だ」
「じゃあこんなのはどうだ?」懐から紙とペンを出してなにやら絵を描き始めた、
「ん?コンパウンドボウか、この噂もう広まっているのか」
「知っているのか?この弓を、」
「ああ、よく知ってる、だって俺が作って売ってるんだから」
「そうだったのか、あんたがこれを...っでな早速これを複製して作った奴がいてな、4射目で弦が切れて弓のリム部にクラックが入って使い物にならなかったらしいぞ」
「そうだろうな、あれにはミスリルで作った弦とリムにミスリルの合金板を使っているからな、既存の材料で作るとすぐに切れたり割れたりして本当の性能の半分も出ないんだよ、」
「ミスリルを使っていたのか、それじゃあ複製はできないな」
「そうだな、ミスリルの源材料と加工技術は門外不出だし たとえそれが判っても作り出すには大量の魔力が必要だからな、現状この世界では俺しか作れないんじゃないかな」
俺たちは飲み物食い物をさらに注文していく、いつの間にか一人増えていた、いつの間にか増えていたそいつが到着した食い物をガンガン食っていく、その姿をハンスは茫然と眺め俺は声をかける、
「ミケーネ食う前に挨拶位したらどうなんだ」
「いただきます」
「ハンス紹介する妹のミケーネだ」
ミケーネはハンスに向かって軽く手を振って挨拶としたらしい、
「っで今日のナンギ材で作った剣を基にして更に金剛石を切れる剣を今考案中って事なのか?」
「まあ そんなところだ」
「それを作るところを見せてくれないか?」
「まあ 明日城の資料室で確認してからって感じかな」
「じゃあ城から戻ったら鍛冶場に来てくれ結果を知りたい」とハンスが言った、
そうして俺たちは解散し酒場をあとにし宿に戻った。
「ミケーネ明日は城の資料を知らべにいくが お前はどうする?」
「なぜ?」
「今日鍛冶場でナンギって材料を加工していたんだが超高温で加熱しても溶ける気配もない加工不能金属だったんだ、っでその金属を魔法で溶かして剣の形に仕上げたのがこれだ」俺はアイテムボックスから片手剣を取り出しミケーネに手渡す。
軽く振ってみる「これ柄頭をあと10g軽くして」とリクエストがあった、
俺は真鍮製の柄頭を外して樫の木で出来た柄頭を装着してバランスを変える
「これでどうだ?」
「これでいい」 と言っていきなり仕舞い始めた、ってかこの剣まだミケーネにやるとは言ってないんだが。
まあいい殆どただで作ったもんだからな、でもこれ貸し一つなっと思いながら明日の城の資料に思いを馳せる。
翌朝俺は城に行きキリーを探す、遠くからでもすぐに見つけられたクマミミを付けた大男 早速朝の挨拶と資料室閲覧の許可を取る交渉からだ、キリーに話すと資料室の長を紹介してくれた、
「キンドルさん初めましてこれキリー団長からです」 そう言って紹介状を渡す、
彼は紹介状に目を通し書いてある文章に頷きながら俺を資料室に案内してくれた
「君の探している資料はこの奥の棚の下の段にあったと思う」そう伝えられた俺は一言礼を言って奥に進む、
「アダマンタイトはどんなに加熱しても溶けず変形も殆どしない加工には適さないが黄金色が美しい鉱石である、更に魔鋼との比率により性質が変わりオリハルコンとなる時もある、但しここ1000年だれも作ることが出来ないので幻の金属と呼ばれるようになった、」
ほう、過去には作れていたのか、どこかにサンプルって無いのかな、そう思い資料室の長キンドルさんに聞いてみよう、
「キンドルさん、アダマンタイトとオリハルコンで出来た剣ってこの国に有るんですか?」
「この城の宝物庫に確かアダマンタイトのロングソードとオリハルコンの片手剣がありますが」
「それって見せてもらうことは可能なんでしょうか?」
「結果から言うと可能ですよ、私の上司とその上と色々計8名のサインが必要になり閲覧するときは20人の兵士に囲まれた状態での閲覧となります、更に閲覧料金貨20枚が必要です、」
「じゃあアダマンタイトの鑑定ってやってもらえるんでしょうか?」
「出来るけれどお勧めはしません」
「なぜですか?」
「もしアダマンタイトでなかった場合その剣は恐らく使い物にならなくなってしまうからです。」
「ひょっとしてアダマンタイトの剣で打ち合うんですか?」
「はい、その持ってきた剣が切れなければその剣は本物のアダマンタイトと言う事ですね」
「色々ご説明頂き有難うございました」
俺はちょっと興奮気味にその場を後にした、早速鍛冶場に向かいハンスを探す、
ハンスは炉の前で火の勢いを上げている最中だった、とりあえず俺はハンスに声をかける
「ハンス行ってきたぜ」
「どうだった?」
「本物かどうかテストはしてくれるらしい、有料でね、」
「っでナンギ材はあるのかこの工房に」
「あるぞ、大量にな、」
「ちょっと分けてくれないか」
「ああそれは構わないが、やるのか?」
「この国の宝物のアダマンタイトの剣を叩き切るのが目標だ!武器製作者の心に火をつけてくれたんだから」
俺はミケーネを念話で鍛冶場に呼び出し手伝ってもらうことにする、先に手間賃としてアダマンタイトの片手剣を渡してあるんだから嫌とは言わないだろう。
「っでミケーネこのナンギ材はどうやらアダマンタイトの材料のようなんだが加工するのに大量の魔力が必要らしいんだ、協力してくれ」
「ん」
「ミケーネの了承があったことだしハンス、ちょっと場所借りるぞ」
「おう、そっちの作業台を使ってくれ」
俺たちは作業台のところに集まる この作業台の下の方に金敷とハンマー水桶が置いてあり更に近くには火の入った炉があった、俺はミケーネにこの金属が柔らかくなるイメージを魔力に込めて纏めてもらう、俺は魔鋼を少量50対1の割合で配合して、金敷の上に乗せる 此処から俺も魔力を込めて金属を折り返していく、ハンマーを使って叩きながら6回ほど折り返したらあとは形を整えていく、ミケーネがドタっと倒れた、おそらく魔力切れだろう。
ミケーネを休憩室に運んで休ませる、俺は形の出来上がった剣に刃を付けて仕上げる慣れてきたとはいえかなり魔力を使って残り10%を切ってきた、ここまでくれば明日に作業を残しても問題ない所まで来ている明日の作業は鍔とグリップに柄頭の取り付けって所だね、俺は半完成の剣をアイテムボックスに仕舞い込みかたずけ準備だ、
掃除も終わり皆に挨拶をしてミケーネを担いで宿まで移動、宿屋の女将さんが心配そうにしていたが、単なる魔力の枯渇だと説明してとりあえず部屋に運んだ、
「ミケーネ大丈夫か?何か食いたいものはあるか?」と聞くと
「いつものゴブ肉セットが食べたい、大盛であとプリンも大盛で」
「よしちょっと待ってろ」 俺はアイテムボックスから材料を出しテーブルの上に簡易コンロを出す 飯は以前に大量作成した奴がアイテムボックスにある、俺は野菜をカットして炒める、その間にもう一つフライパンを火にかけて油を引く そこへたれに漬け込んでおいたゴブ肉を焼く、薄切りのゴブ肉にさっと火が通りきる直前に野菜炒めを投入 炒めながら混ぜ合わせ完成したら皿に盛って完成だ、次は汁物をアイテムボックスに作り置きしておいたものを温めなおして出来上がり、
ミケーネが食べ終わりそうな頃を見計らってプリンを出してやる、
「どうだ?少しは落ち着いたか?」
「ん」
「そうか、そりゃよかった」
俺はアイテムボックスに入れておいた作ったばかりの剣を点検してみる、形状はこの世界でもよく見られるバスタードソードで見た目金色のちょっと派手目な剣である、ブレードが派手だから鍔とグリップに柄頭は地味に作ろうかと思う、明日はキリーに相談してこの剣の鑑定を出来るかどうか聞いてもらってこよう、
続く