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心のバイク
よろしくお願いします。
ある日の私はカラッポだった。
何もできずにただ、空を眺める毎日だ。
それは小鳥たちが舞い踊る春、セミの喝采の夏、紅葉彩る秋、しんしんと積もった雪、何回も何回も巡っていった。
ある日初老の男が私の店を訪ねた。
しばらく店をウロウロして、私の方を見る。
「君は綺麗だね。僕と一緒に旅をしないか」
初めてそんなこと言われた。
私は歳もそれなりだし、身なりも奇麗とは言い難い、なぜこの男は私なんかを気に入ったのだろうか。
わからない、だがそれはとても嬉しいことであった。
それは夏のできごとだった。