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パート8 翔太

人混みで賑わう駅前。

私白石架菜は古ぼけた時計台の下で大切な人が来るのを待っていた。

翔太と待ち合わせの時間まであと20分もあるのに。

今日が世に言う初デートってやつで。

おかしいよね?

小さい頃からずっと一緒に育って、ほとんど毎日のように会ってるのに、初デートで待ち合わせの場所を決めるなんて。

この事をアミに話したら。

時間を決めて待ち合わせの場所を決めて、そこに着く前にお互いどこかでばったり会うなんてこと考えたりしなかったの?何てアミに言われてしまった。

私の一番の親友のアミはきっとそう言っていつも私たちの仲を可愛く冷やかしてくるのだ。

いつも私たち二人を遠くから見守って、励ましたりからかったりしてくるアミにもこの間ようやく好きな人ができたみたいで、親友が幸せになる姿を早く見たくて仕方ない。

翔太の私服なんて見慣れてるし、私の私服だって翔太はイヤって言うほど見てるから、今日のデートのために新しい服を買うこともしなかったけど。

昨日の学校帰りに翔太と別れてから、今ここにいる私が一つだけ変わった事がある。


実は、今日約束の時間前に美容院に行ってきたの。

ほんの少ししか髪切って無いから、気付く訳ないんだけど、気付いて欲しいのが本当の気持ち。

でも、これぐらいじゃ気付く訳ないよなー。

ショーウィンドウに移る自分の姿。

亜麻色の腰までの髪をほんの少し切って、今日は巻いてもらった。

鏡に向かって右側に着けている黒のリボン型のバレッタは去年の誕生日に翔太からプレゼントしてもらった物だ。

黒のレースのついているキャミの上に白のカーティガンを羽織り、タータンチェックのミニスカート、先月のバーゲンで買った黒のサンダル。

完璧なコーディネート。

でも、やっぱり翔太にはこの変化気付いて貰えないよね。

私は右手の人指し指で髪の毛をクルクルした。

思いきってバサッと切っちゃえば良かったかな?

でも、そんなことしたら、


「失恋した?って言われるかも?」


え?

私の心の声を言葉で表された。


「しょ、しょ、翔太。いつからそこにいたの?しかも私の心の声…」

本当に驚いて何て言っていいのか分からない。


「架菜の考えてることぐらいすぐに分かるよ」

「…」

「ここに来る前に美容院寄ってきたんだろう?」

そう言いながら、翔太が私の頭に触れた。

「うん。よく似合ってる」

そんなストレートに言われること、全く想像していなかった訳じゃない。

でも、でも。

実際に言われると嬉しくて嬉しくて、舞い上がってしまいそう。

「こんな少しの変化、たいして変わってないと本当は思ってるんでしょ?」

素直にありがとうって、何で言えないの?

本当自分で自分がイヤになる。

こんな風にしてたらいつか翔太が離れて行ってしまうかもしれない。

どうでもいい人には素直になれるのに、一番大切な人には素直になれない。

「架菜のことは何でも分かるってずっと言ってるだろう。本当に似合ってるよ。ほら、早く行こう。架菜の見たがってる映画人気あるから、早めに行った方がいいよ」

大好きな翔太が差し出してくれた手にゆっくりつかまった。

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