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一人じゃない

「ショウタくんは今まで誰かを好きになったことないの?」

小六の時の女の子以外に。

小さく続けて聞いてみた。

学校帰り、小さな池のある公園に寄ってみた。

見たことのない顔の赤い鳥がたくさんいることに驚きながらも、ベンチに座って話した。

「うーん、無いかな。中学時代は部活が楽しかったし、今は今で毎日の生活が楽しくて充実してるし。」

ショウタくんが話しながら池に向かって投げた小石は水面上を数回跳ねて向こう岸へ落ちた。

「オレそう言う気持ちに疎いのかもしれない。」

「そう。」

「架菜さんは、翔太さんのどこを好きなったの?」

「優しいとこかな?いつも見守ってくれるとこも。」

「ふぅん。でも、優しいとこが好きって言う人は自分が優しくないからだって、何かで言ってたよ。」

予定外の言葉が返ってきて驚いた。

「まぁ、優しいとこが好きって言うのは一般的な答えだよな。」

私の表情を見て、自分の返答があまり思わしくないと思ったのか、すぐに言い直した。

「でもさ、前にオレに告白してきた子の話をしたことあったじゃん。あんな風に誰かを想えるのは幸せだなって思ったよ。」


翔太は、本当にいつもいつも私の事を見てくれていた。

物覚えの悪い私が勉強やバイトで何度も同じ間違いをしても、優しく教えてくれた。

ちょっとした私の表情の違いでその時の気持ちも分かってくれた。

翔太が側にいてくれるだけで、心が温かくなるのを感じた。



「イテ…。」

「?」

「さっきの石で指が切れてた。」

見ると、ショウタくんの右手の人指し指が少し傷ついてた。

私は鞄から絆創膏を取り出した。

ここの世界に来てからも、元いた世界の私と同じ習慣が身に付いていて、元いた世界が常に持っていた物を持ってないと不安で、もし、その行動をしなくなったら元の自分を忘れてしまうのじゃないかと思っていた。

「ありがとう。女子力高いね。」

ショウタくんに誉められて嬉しくなる。


「元の世界ではね、私の方がよくケガをして、その度に翔太がこうして絆創膏を貼ってくれたの。」

「…。」

「『またケガしたの?架菜は本当にそそっかしいんだから。オレがいつもいるって限らないんだから、自分で絆創膏持ってなよ。』って言いながら。」

話しながら、声がどんどん鼻声になっていくのが分かる。

「架菜さん。いつでもポジティブでいなきゃダメですよ。ネガティブな気持ちはどんどんネガティブを引き寄せるから、いつも前向きに、ね。オレも架菜さんが早く元の世界に帰れるように協力するから。」

そう言っていつものショウタくんの癖である自分の髪をくしゃと触った。


『架菜のいいとこはいつも前向きなとこだろう。』


翔太の声が聞こえた気がした。


でも…。こんな状態で前向きになんて…。


そうだ、私は今一人じゃない。

こんな私を支えてくれる人がいてくれる。









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