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運命の相手

朝目覚めると、やっぱり泣いている自分がいる。

ショウタくんのおかげで少し精神的に楽に過ごせるようになったものの、やっぱり泣いていた。

そして、思い出せない夢。

翔太…。

翔太に会いたい。


******

「泣いてる?朝起きると?」

賑わっている店内の一番奥の席で、ショウタくんは静かに聞いてきた。

放課後、私たちは学校帰り例の店に来ていた。

私と翔太が一緒にバイトしていた思い出の店とそっくりのお店。

いつもほぼ満席のこのお店。

それでも、私たちはこのお店が大好きだった。

「それはただ単純に元の世界に帰りたいってそれだけのことなんじゃないの?」

そう言われてしまうとそうなのかもしれない。

でも、何かがすごく胸に引っ掛かってる。

それが思い出せない夢と深く関わっている気がする。

「思い出せないけど、とても悲しい夢の気がする」

「夢なんて、たいてい覚えてないもんじゃない?見た直後はかろうじて覚えてるかもしれないけど、ほとんどの夢なんて一日覚えてることなんて滅多に無いからそんなに気にすること無いんじゃないのかな?」

そう…だよね。

と、元の世界にいた頃の私ならそう思えたと思う。

夢なんて自分の潜在意識の中のものだから、自分の願望が夢に表れることもあるし、逆に不安要素を夢に見てしまうことがあるけど、どれも結局現実ではない。

でも、ここの世界にいる時に見る夢はとても大切なキーワードを私に教えようとしていて。

思い出さなくてはいけないことのような気がする。

「取り合えず、架菜さんはその翔太さんの誕生日の前の記憶があやふやなんですよね?」

「…うん」

「誕生日かー。オレ今年の誕生日何したっけなー?」

「ショウタくんの誕生日っていつ?」

「ん、4月7日」

ここも翔太と一緒だ。

「あ、友達の家でお祝いしてもらった」

思い出した、と右手で拳を作りそれを左手の手のひらにポンと鳴らして続けた。

「ショウタくんって彼女いないの?」

疑問に思ってたことを聞いてみた。

「いないよ。ちゃんとした彼女なんて…」

え?

それってちゃんとしてない彼女はいるのかな?

と思わせてしまう発言だったけど、私の表情見て、ショウタくんもそのことに気付いたようで、

「違う違う。小学六年生の時に付き合ってた彼女はいたよ。小学生の時の彼女とか…、一緒に帰ったりするだけのただの友達の延長。それでも、その子は嬉しかったって言ってた。それ以来彼女いないよ」

慌ててそうつけ加えた。


私の翔太もいつも一緒に帰ってたな。

周りに冷やかされたこともあったりしたけど、そんなの関係無いって翔太は言ってくれた。


「ショウタくんに彼女いないなんて信じられない」

前にユカだってショウタくんはモテるって話してたし。

正直イケメンだと思うし、性格だって悪くないし、身長だって高いし、悪いとこなんて見当たらない。

「いないものはいないから仕方ない。でも、一度だけ真剣な告白をされたことあるよ」

「…」

「どこでどんな風にとかあんまし覚えてないけど、すごく真剣な告白だったよ。まぁ、彼女はオレの運命の相手じゃないって直感的に感じた。彼女はきっと…」

「きっと?」

「本当はオレに告白したかったんじゃないと思う」

「え?」

ショウタくんの言葉の意味が分からず何て言っていいか分からなかった。

「あ、ごめん、何でもない、忘れて忘れて」

慌てた感じで首を振り、話を終わらせた。


高校生の恋愛で運命の相手を探すのは難しいかもしれないけど、少なくとも最初に出会う運命の相手は、私にとって翔太だった。


その時、テーブルに置いていたグラスの水がグラグラと軽く揺れた。

地震…!!

ものすごい恐怖を感じる。

怖い…。

軽い地震は一瞬で治まったのに、

「架菜さん、大丈夫ですか?顔真っ青ですよ」

気持ち悪い。気持ち悪いなんてもんじゃなかった。

全身が震えてる。

何この感じ?

頭の中も心の中も恐怖でしかない。


元の世界のここで何かあった?






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