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頑張ろうって…。

「最近寝ぼけなくなったね、お姉ちゃん」

妹の音色が入れたてのコーヒーを口に含み、あち、と舌を出した。

朝の朝食風景、お父さんがパンを食べているとこにも見慣れてきてしまった。

「ここ最近のお姉ちゃんよく寝ぼけてたもんね」

音色がにたーって笑顔をこちらに向けた。

朝6時15分。

朝の食卓もお父さんお母さん妹との生活も馴染んできたけど、たった一つ今だに慣れないこと。

慣れないと言うより、慣れたくない。

何て言っていいか分からないけど、心が寂しいの。切ないの。


ここの世界に翔太は迎えに来ない。

それは認めたくないけど、認めざるえないこと。


朝の情報番組で、高校生カップルのリア充トークが特集されていた。

「お姉ちゃんもいい加減彼氏ぐらい作ったら?」

それを見ていた、音色が私に向けて言った言葉が刺さる。


私たち二人はこんな風に特集されているようなバカップル…(少し語弊があるけど)のようなことはしていなかったけど、ずっと一緒にいられると思っていた。

それは17年間一緒に過ごした時間がより一層強くそう思わせてくれた。

翔太がいなくなることなんて無いと思ってたのに。


いつも通りの電車に乗る。

窓から見える景色にも慣れてしまった。

私はいつまでこの世界にいるんだろう?

次の駅で電車が止まり、ショウタくんが入ってくる。

「おはよう…、ございます」

朝弱いらしいショウタくんが静かに挨拶してくる。

「おはよう…、ございます」

つられてショウタくんと同じ言い方をしてしまった。

目が合って、くすりと笑ってしまう。

束の間の穏やかな時間が流れる。

「て言うか、最近、ショウタくん時間ギリギリで電車に乗らなくなったよね?」

この世界に来た当初は、ショウタくんはいつも扉の締まる直前ぐらいに電車に飛び乗る事が多かったのに。

「ああ。…。だって」

そこで言葉を区切って、いつもの温かい笑顔で、

「朝のこの時間なら架菜さんとゆっくり話ができると思ったから」

その笑顔でその言葉を言われたら、ドキドキが止まらなくなる。

顔も声も翔太そっくりとかじゃなくて本人そのものなんだよ。

「この間架菜さんから、パラレルワールドの話を聞いて、架菜さんは相当不安だろうなーって思った」

「…」

「誰も本当の自分を知っている人がいないのに、自分として生活していかなければならない。相談したくたって誰にも相談できない。その上、みんな本来の自分の周りにいた人たちそっくりで…。もう頭の中パニックだろうなって。オレが架菜さんの世界にいた一日の記憶はもうほとんど無いけど、きっとオレもかなりパニクってたと思う」


私は、いつでも翔太に支えられて生きてきた。

翔太がいてくれれば何も怖いものなんて無かった。

この世界に初めて来た日、見た目そっくりの家族や友人たちはいるのに翔太がいなくて、ただそれだけで頭がパニックだった。

そして、やっと、翔太を見付けた。

その人物は翔太では無かったけど、今こうして私の前にいてくれる。


きっと。どこの世界にいても翔太は翔太なのかもしれない、なんて自分に都合のいい解釈をしてしまったけど。

少なくとも、今の私がここで頑張ろうと思えるようになったのはショウタくんのおかげであることに間違いはないから。







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