9 田中カウンター
【登場人物】
田中拓哉(17)顔面モンゴロイドの自称、イケてる高校3年生。盛りのついたオス。
KJ(8)拙作「秘密結社KJラボ☆」の主人公。おサルのキンタくんを捕まえに来た。
キンタ(5)盛りのついたサル。オス。
互いに、捨身で飛掛かった田中と、キンタくん。
田中の放った左腕が、まさに同じタイミングで、キンタくんの右腕と クロスした。
クロスカウンター。
それは、梶原一騎の名作「明日のジョー」の矢吹ジョーと力石徹のように美しい死闘の結末であった。
よそ見をせずに、しっかり見ていたKJには、少なくともそう見えた。
けれど、客観的に見ると、田中の腕がキンタくんの腕より5センチ長かっただけの話だが。。。
「キンタくん!あぶない!!」
死力を尽くして闘った田中とキンタくんには、もはや、捨身の一撃から態勢を立直し、我身を守る力は残っていない。
燃尽きた灰が、風で吹きすぎるように、田中とキンタくんは地上へ向かって落下して行く。
“猿は仲間を殺さない”
田中の魂の奥で、何かが目覚めた。
落下する田中は、意識の無いキンタくんを抱き抱え、自らその身を投出す格好で地上に打ちつけられたあまりの出来ごとに、びっくりしたKJは、とりあえず田中と、キンタくんに首輪とリールをかけてから
「キンタくん!無事かい!」
と、声を掛けた。
田中は、朦朧とする意識で、フラフラと立上がり、その場にはいない路地裏の女神の幻想を追って歩き出した。
「女神さま……向かえに行くよ……」
つづく