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16 田中!女神は幼猫のように小悪魔に

田中 拓哉(17)顔面モンゴロイドの自称、イケてる高校3年生。


路地裏の女神(23)カフェ「エレンコ」の看板娘。

田中の目指す路地裏のカフェ「エレンコ」は、まどろみに酔うようなボサノバの調べがつつんでいる。


人もまばらな路地裏にあって、洒落たウッドデッキのオープンテラスに、インディゴブルーの日傘をさしかけたモダンな店だ。


女神をはじめ店の従業員は、ラフなコットンのカッターの襟を立て、濃いめのジーンズで店支給のあかぬけた黒のエプロンで決めている。


店のオーナーらしい男は、40を越え50に届きそうな、白髪混じりの紳士然とした男。若い頃は、さぞ、女にモテたであろうLeon風のイタリアテイストでまとめたこざっぱりした精悍な面持ちだ。


さて、ようやく田中の目指す路地裏の女神のご登場である。


嬢然と整えた長い髪。艶やかなその黒髪を、首筋から胸元へかけてながしつける。


透き通るような白い肌に、幼猫をおもわせる大きな瞳。


つつましくも色っぽいその口元に、愛嬌たっぷりな微笑みを浮かべる。


店内を見渡せば、仕事帰りの若いサラリーマン。勉強道具を広げた、予備校生。


あとは、人のよさそうな履歴書を書く男に、年金暮らしのご隠居と、言ったところだろうか。


まばらに、OL 風の女も見えるが、まあ、男の比率が圧倒的だ。


それにしても、男たちの体たらくぶりは情けない、目の前の仕事や勉強がおろそかだ。


ちらちらチラチラ、女神の仕事振りを盗み見しては、


「はぁ~」


と、どいつもこいつも情けないため息なんかついている。


それを見て、OL 風の女は、関係ないのにピリピリしたムードをかもし出している。これも、いただけないのだが。


そうカフェ「エレンコ」は、看板娘である女神の、その無意識に発する小悪魔的なフェロモンに魅了された愚かな男どもの巣窟なのだ。


まあ、店の男たち、思春期大爆発の田中ならずも作者だって、恋におちれば男なんてみな、はたから見れば滑稽な生き物に映るだろう。









つづく

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