1田中。先生、消しゴム取ってもいいですか?
新連載です。よろしくお願いいたします。
テスト中。。。
おっちょこちょいの田中君は、いつもビリッ尻の点数で馬鹿にされている。
今度こそ!!はち切れんばかりの筆箱から、エンピツを取出すと、やりて受験生さながらにクルンとエンピツを回して見せる。
「私もやれば出来るというところをご覧に入れよう」
一週間前からみんなを見返してやろうと学校を休んで秘密の特訓をし、意気上がる田中君だったのだが。。。
「ムムムッ!?」
ーはじまって5分ー
田中君は伝家の宝刀エンピツ転がしをはじめている。
どうやら、田中君の"読み"ははずれたらしい。
「(心の声)どうする田中?お前の一週間のがんばりはこんなものか!」
田中君の怒りにも似た焦燥のベクトルは、わずか10門の選択問題で振切れた!
何か禍々しい意思に背中を押されるように、ゆっくりと、はち切れんばかりの筆箱に右手が伸びる。
「僕にはまだ奥の手があるんだ」
ー前日。
勉強ノートが切れたので文房具屋へ寄った。
“まとまる君(Big)“
勉強は出来ないが文房具マニアの田中君は、このめずらしい手のひらはあろうかという巨大消しゴムを思わず購入した。
ーその夜。
転ばぬ先の杖にと、「使わなければ罪にはならないよ」と、あろうことか、消しゴムへカンニング用にメモを記しておいたのだ。
「あんだけ勉強したんだ、神様は僕の味方さ」
田中君は、消しゴムを取出した!!
………いや出せない!
むしろ、筆箱のなかで悪者に追われたヒロインが、必死で扉を掴んで抵抗しているようにすきがない。
必要以上に大きい消しゴムは、筆箱に追い込むのも、角がとれるほど苦労した。
今度はヒロインが抵抗しているもうタダではすまない。
悪魔と契約した田中君は、筆箱もろともに引裂かんばかりの怪力で、大きなヒロイン消しゴムの腕を引っ掴み、無理やり引っ張り出した。
おやめになって~
筆箱から引出されたヒロイン消しゴムは、力余って、田中君の手から教室の床に投出された。
コロコロと投出されたヒロイン消しゴムは、幸運にもべタべタと音をたてるある障害物に当たってピタリと止まった。
健康サンダルだ!!
ー時間よ止まれ!
と叫んだ田中君の願い虚しく、可憐なヒロイン消しゴムは、健康サンダルに救出された。
「先生!消しゴム拾っていいですか?」
エンピツが机をたたく静かな教室のなか、虚しい田中君の淡い夢と、正義を貫くであろう健康サンダルの結末は、もはやここに記す必要はないだろう。
おっちょこちょいの田中君、彼の伝説はまだはじまったばかり、がんばれ田中!!闘え田中!!
そして、突然いったい誰やねん田中君!
つづく。
明日もまた、よろしくお願いいたします。