読書家女子の攻略法
某夏休み。
私は地元の大型ショッピングモールにきていた。その中にあるスター〇ックスでお気に入りのカフェオレを買い、勉強する。静かなところでは集中できない私にとって、ざわざわとしているスターバックスはとてもいい勉強場所になっている。
「カフェオレの一番大きいサイズ下さい」
今は10時。開店時間から、今日は夕方まで居座るつもりだった。大好きな浅井長政がモデルになっている小説をすこし読んでから勉強しよう。
「すみません。机半分借りてもいいですか?」
店内の隅のほうの机が2つくっついている席で、浅井長政に萌えていた私は急に声をかけられた。
「あ、はい」
「ありがとうございます。……それ、浅井長政がモデルの本ですよね?おもしろいですよね。俺、好きなんです」
「そうなんですか?私もこの本、大好きなんです!」
男の人、と身構えた私だったが漢字の良さそうな人ですこし安心する。
そして、いつの間にかその人、駆くんとおしゃべりをしていた。
「あ。………いつの間にこんな時間」
ふと、時計を見るともうお昼の12時になっていた。そろそろ勉強しないと今日の分のノルマが終わらなくなる。
「もう勉強しなきゃ」
駆くんにおしゃべりはもうやめようという意味を込めて数学の問題集を取り出した。
「…数学、やるの?」
話している間に同じ高校でさらに同じ学年だということが発覚した駆くんが机に出した数学の問題集をのぞき込む。ついでに高校は1学年300人のいわゆるマンモス校だ。クラスが9つもある。
「…う、うん」
駆くんが数学の問題集をみているだけなのに、思ったより近い私との距離にすこしびびるが動かない。駆くんとはいままでおしゃべりしていて気をけっこう許していた。
「数学苦手なんだよねー」
勉強する気になれず問題集の表紙をにらむ。
「……俺、数学得意な方だけど?」
なぜか軽く私に目くばせしながら言われたか何を言いたいのかわからない。
「わからない問題あったら教えるよ?」
私がクエスチョンマークでも頭の上に出していたからだろうか。駆くんが補足してくれる。
「え?いいの?」
数学を教えてくれるのはありがたい。正直、基本問題でもわからないのがあるレベルだから。だけど、今日知り合った人にそこまで頼んだもいいのだろうか。駆くんのほうを見ると、顔が赤かった。ここ、あついかな?私には寒いくらいだけど。もしかして暑がりとか?
「…あのさ、」
駆くんはなぜか緊張している時みたいに、私をまっすぐに見て息を吸ってから続きを話し出す。
「…連絡とりたいから、数学の。メアド教えてもらってもいい?」
後に、駆くんはもともと私のことを知っていたという事実を知った。校内ですれ違って、私に一目ぼれしていたそうだ。
これが、わたしたちのなれそめ。