下僕が出来たよ。やったね、魔王ちゃん!(おい、馬鹿者!やめんか!うわーー!?)
メイドを雇ってから、我の生活も多少は改善された。まあ、前が酷すぎるだけ、とも言うがの。ただ、このメイド・・・メアリーにも多くの問題がある。この娘、美しい金髪と容姿、それにナイスバディをしているのだが・・・
「メアリーさん、ブレイブの面倒をお願いしますね。」
「は~い!お任せ下さい。」
あの夫婦が居なくなると・・・
「あ~、かったり~。やってらんねーよ!」
こんな感じじゃ。椅子にもたれかかり、足を机の上に乗っけて文句ばかり言いよる。これ!ちゃんと仕事をせんか!?
「あぶー!」
「あ!?何よ、うっさいわね!何か言いたいんなら、人間の言葉を喋りなさいよ!」
「あぶ!?」
こ、こやつ・・・魔王たる我を叩きおった。と言うより、完全に仕事放棄であろう!単純に許せんな・・・この娘。どうしてくれようか・・・。そうじゃ!ちと、脅かすか。今の我でも魔力を込めれば、軽い物を持ち上げたり、強度の低い物を壊したりはできるはず。クックック・・・あの娘の焦る姿が目に浮かぶわ。さてと・・・
『ギッ・・・ギッ・・・』
「ん・・・?何?」
我はありったけの魔力を込めてメアリーの座っている椅子の脚を見る。椅子の脚は音を立てながら少しずつ捻れていく。クッ・・・思ったより集中力が要るの~。
『バキッ!』
「きゃーっ!?」
耐えきれなくなった椅子の脚が折れる。バランスを崩したメアリーは悲鳴を上げながら床に崩れ落ちた。クックック・・・良い気味じゃ!
「いたた・・・。もう!何なのよ!?急に脚が折れるなんて!」
メアリーは椅子を蹴飛ばしながら悪態をつく。この娘、気性が荒いのう。お嫁さんにしたくない候補No.1じゃ。別にそんなもの、おらんがの。さて、どんどんゆくぞ!
『ピーーッ!!!』
「ちょ・・・ちょっと!何で勝手にお湯が沸くわけ!?」
『ドガシャーーン!!!』
「何で急に物が落ちてくるのよ!?」
「キャッキャ、キャッキャ!」
「何で赤ん坊が勝手に笑うのよ!?」
そこは怒るでない!つい面白くなって笑ってしまっただけじゃ。
「はあ・・・はあ・・・さっきから何なのよ、一体・・・。」
メアリーは疲労困憊の顔で我に近づいてきよる。
「まさか・・・この子の仕業じゃ・・・」
メアリーは我をゆっくりと持ち上げた。お?改心したのか?ようやく自分の仕事を思い出しおったか・・・。まったく!仕様の無い奴じゃ。これに懲りたら・・・
「この子さえ居なければ・・・」
ぎゃーっ!全然懲りとらん!!我を窓から投げ捨てる気か!?ここは二階じゃぞ!?や、やめろ!やめてくれ!!クッ・・・仕方がない!これをやると・・・後で解くことができんのじゃが・・・。
「な、何・・・この子の目・・・」
我は目に魔力を集中する。この状態で相手の目を凝視すれば・・・
「この目・・・引き・・・込まれ・・・」
クックック・・・かかりおったわ。これでこやつは我が下僕!・・・こんな危険な下僕・・・本当は要らんのじゃが・・・。こうなれば後は簡単。思念で会話ができるわ。
(良いか、メアリー。お前は魔王ベルベント=ハーネスの下僕じゃ。)
「はい・・・魔王様。私は・・・魔王様の・・・下僕。」
(普段は普通に振る舞うが良い。だが、我の命を最優先にせよ!)
「はい・・・畏まりました。」
クックック・・・これで我が生活も安泰。薔薇色の未来が待っておるわ!・・・ん?何か焦げ臭いのう・・・。
『バチバチバチ・・・』
ぎゃーっ!!火・・・火が着いておるぞ!?派手に暴れまわったからかの?メアリーに早く火を消させなければ・・・
「魔王様・・・危険・・・」
メアリーは我を高々と持ち上げ、窓に近づく。え?おい!ちょっと!?待て・・・まさか!?
「魔王様・・・脱出を・・・」
『ポイッ』
「ばぶーーー!!?」
うわーーー!!?この、アホメイドがーーーーー!!!やっぱりこんな奴、下僕にするんじゃなかったーーーー!!
その後、火事はボヤで済んだが、当然ながらメアリーはクビになった。