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 魔王、這いずり回る

 もう一週間程経ったかのう。運良く拾われ連れて帰られたのは良いが、この夫婦・・・とんでもない奴らじゃ。まず、女の方・・・エミールという名じゃが、『うっかり』では済まぬ粗忽者じゃ。


 その1 乳のあげ方が分からぬとほざき、哺乳瓶に熱湯を注ぎ込んで飲ませようとする。


「ブレイブ。ご飯よ!」

「んー!んー!(熱いわ!馬鹿者!)」


 その2 風呂の入れ方が分からぬとほざき、そのまま湯船に沈めようとする。


「ブレイブ。お風呂に入りましょうね!」

「がぼ!がぼぼ!(苦しいわ!馬鹿者!)」


 その3 我を寝かせようとするも、先に寝落ちして蹴り飛ばす。


「う~ん・・・邪魔!」

「あぶ!(痛い!)」


 その4 外出時に手を滑らせ我を川に落とすも、オロオロするばかり。


「きゃーっ!ブレイブが川に!?ど、どうしましょう?」

「がぼぼぼぼ・・・。(いいから早よ助けに来んか~い!)」


 その5 買い物時に商品を持って帰る代わりに我を忘れて帰る。


「君のお母さん・・・戻って来ないね・・・。」

「あぶ~?あぶぶ・・・。(我の苦労が分かるか?八百屋のオヤジよ・・・)」


 まったく!この一週間で何回命の危険に晒されたことか・・・。我は魔王だぞ!?勇者と違ってコンティニューできんのだぞ!?そこんところ分かっておるのか?


 さて、次に男の方・・・グレッグという名じゃが、こいつも『熱血』では済まぬ阿呆じゃ。


 その1 おしゃぶりの代わりに石を口に突っ込もうとする。


「柔らかい物より硬い物の方が鍛えられるだろ?」

「んんー!んー!(何を突っ込んどるのだ!馬鹿者!)」


 その2 屋根から投げ捨てる。


「ほ~ら、すごく高い高~い!」

「あぶーー!!(高過ぎるわーー!!)」


 その3 箸も持てぬ赤ん坊に剣を持たせようとする。


「できる!絶対できる!頑張れ!気持ちの問題だから、な?」

「あぶーぶ!?(できる訳ねーだろ!?)」


 その4 喋れもしない赤ん坊に字を教えようとする。


「いいか、ブレイブ。この字を覚えるんだぞ?」

「だー・・・。(お前、字が間違っておるぞ・・・。)」


 その5 いかがわしい店に連れていく。


「これも・・・勇者には必要だから・・・。」

「あぶ・・・(中々良い女がおるの・・・)」


 まったく!録な事をせんな、この男は!ここまで来ると我も思うことがある。ひょっとするとこやつらは、我の息の根を止めに来た刺客では無いかと・・・。まあ、真偽は定かでは無いが、このままでは我が命が危うい。誰か何とかしてくれんかの~。


「ブレイブ。ご飯よ!」


 さあやって来おったわ、地獄の時間が・・・。哺乳瓶の中身がグツグツ言ってるのがデフォルトになってきたわ。そのまま飲まされてたまるか!我が渾身の力をとくと見よ!


「うー・・・うー・・・」

「あっ!あなた!見て、見て!ブレイブがハイハイしてる!」

「やっぱり、僕達の育て方は間違ってなかったんだよ!」

「ばぶ!?」


 こやつらの浅はかさ・・・この魔王の目を持ってしても見抜けなんだ。


 それから数日して、阿呆共はようやくメイドを雇った。目に見えて我の元気が無くなったのを見て気付いたらしい。遅すぎるわ!

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