灰かぶり
「灰かぶりっ!
お前は私たちがお城のパーティから帰ってくるまでに家の掃除を全部終えとくんだよ。
暖炉にも灰が結構たまってきたからね。暖炉の灰もちゃんととっておくんだよ。」
継母が無理を言ってきます。
私の家は落ちぶれているといっても一応は貴族です。
なので家もそれなりに広くそれを一人で掃除するなどとてもとてもできません。
ああお父さんが戦争に行ってなければ継母がここまで好き勝手することはなかったのに。
お父さんが戦争に行ってうちに帰ってくることがほぼないため継母はこの家の実権を握り私を召使いのごとく扱ってくるのです。
「あらお母様、また灰かぶりに暖炉の掃除を頼んだの?
あの子の名前通りまた灰をかぶることになるのね。
また汚い灰かぶりが部屋の中をうろつくかと思うと ゆううつですわ。」
今度はいやな姉が来ました。
私にもちゃんとした名前があるというのに灰かぶりといつも読んでくるのです。
この姉は継母の連れ子で容姿は普通です。
この姉は何かあると私を呼びつけさんざん罵倒していくのです。
あなたにとってはいいストレス発散になるのでしょうけど私にとってはいい迷惑です。
「まあまあお姉さま、そんなこと言わないで差し上げたら?
灰かぶりは灰かぶりなんですから。彼女には彼女の個性があるのです。」
このフォローをしているように見せかけて私を思いっきり罵倒してる女はさっきの女の妹です。
ですので当然私と血はつながってません。
この女の容姿は美しいのですが心根の方が最悪です。
ですので見目麗しいにもかかわらずまだ結婚をしていませし婚約者もいません。
そもそも灰をかぶっているのは「お前たちが私にばっかり暖炉の掃除をさせるからだろう」って罵倒をしたくなるのですが私も腐っても貴族の娘です。
そんなはしたないことはできません。
それにそんなことをすれば継母たちからどんな仕返しが来るかわかりませんし。
「あなた達、灰かぶりにかまってないでパーティの準備はできたの?
今日は王子様の結婚相手を見つけるための舞踏会ですのよ。
もしあなた達が王氏様の目に留まって結婚すれば家もこの没落した状況から脱出できるのですよ。
気合を入れていきなさい。」
継母が鼻息を荒くして言います。
そう今日はお城での舞踏会なのです。
お相手の王子様の容姿や性格などの情報はありませんがもし今回のことで結婚できたなら確かに家もまた盛りなおすでしょう。
まあ可能性はあります。
普通の容姿の姉は無理でしょうけど、
きれいな方の姉は性格はあれですがしゃべらなければかなりの美人です。
ですから王子様もうっかりだまされて姉と結婚してしまうかもしれません。
「もちろん準備はできてますわ。」
普通な容姿の姉が言います。
「あとちょっと、後は髪を整えるだけ。」
きれいな方の姉は普通な方の姉と違って準備にも時間をかけています。
普通な方の姉は自分が美しいと思っており着飾りすぎない自分が一番美しいと思っています。
きれいな方の姉は自分の容姿は自分がきれいだと自覚してますが、
自分の美しさが上の中ぐらいだということも自覚しています。
ですので自分磨きにも余念がありません。
私?私ですか。
私は自分を磨く暇もありません。
継母たちに様々な用事を言いつけられているので自分の時間を取ることができないのです。
ただ素材自体はそれなりだと自負しています。
私の母はそれはもう美しい人でした。
その血を継いでいる私も着飾ればそれなりになるのでしょうが・・・・・・
流れるようなきれいな金髪は灰や汚れでごわごわで汚れてますし、
自慢だった白磁のようにきれいな肌は栄養不足か少しかさかさです。
そして私が今着てる服ですがもとはそんなに高くはないですけれどそれなりにきれいだったのですが、
掃除を毎日させられているうちに汚れが移ってしまいとても汚らしくなっています。
とても舞踏会に行けるような容姿ではありません。
舞踏会に女性が参加するにはいくつかの制限があります。
まず一つ目、舞踏会に参加できるのは貴族であること。
これはクリアしてます。
二つ目、王子に求婚されれば必ず結婚しなければいけないこと。
まあこれは見初められることもないですしいいでしょう。
もし見初められてもうれしいことですし。
三つ目、それなりに見目麗しい娘であること、もしくはその親族かお付の人。
これはとてもではありませんが胸を張ってクリアできるとは言えません。
いえ胸を張らずにも言うことはできません。
せめてお父様がいるころであれば言えたのですが。
きれいな方の姉ですので私は参加することは可能ではありますが姉たちが連れて行ってくれるはずがありません。
まあ仕方ありません。
私はおとなしく家で掃除でもしていましょう。
暖炉の掃除をしているといえの呼び鈴が鳴らされました。
今家には私しかいないので私が出るしかないのですが、私は今灰をかぶっていてとてもお客様に見せられるような格好ではありません。
ですがお客様をあんまり待たせるわけにはいかないので、
私は体中についている灰を一通り払ってから、
サイズの大きい継母のフードつきの服を羽織って私の格好が見えづらくなるようにしてからお客様をお出迎えに行きます。
玄関には年を取った老婆が立っていました。
「灰かぶりや、お前は幸せになるべきなんだよ。
だから私がお前をお城の舞踏会に連れて行ってやろう。」
この老婆はなにをいってるのでしょうか?
今の汚れてる私がお城の舞踏会に行ったとしても王子様に見初められるわけがないでしょうに。
そんな私の内心を見透かしたのか老婆はさらに言いつのります。
「私が魔法でお前をきれいにしてあげるよ。
ああ、お前のもとの素質を出すだけだよ。
それでもお前は美しいからきっとお前は王子様に見初められるだろう。」
なんとこの老婆は魔法使いだったのです。
そして魔法で私の姿を昔の綺麗な姿に変えてくれるというのです。
ただお城の舞踏会は興味がありましたが、王子様にはそれほど興味がなかったので断ろうと思ってましたが私はある策を思いついたので老婆の提案を受けることにしました。
そこからは不思議の連続でした。
老婆が呪文を唱えると、
かぼちゃを持ってくるとかぼちゃの馬車に、
私のみすぼらしいと継母の服はきれいな純白のドレスに、
そしてどこからかナイスミドルな御者が出てきました。
「おばあさん、魔法ってこんなにすごいものだったのね。
けどおばあさん私はこの綺麗なドレスや馬車に合うような靴を持ってないし、
ダンスもじょうずに踊れないの。
だから残念だけどお城の舞踏会には行けないは。」
昔はこのドレスに合うようなきれいな靴も持っていたのですが継母に捨てられてしまっていたのです。
「大丈夫だよ。そんなこともあろうかと私が魔法の靴を持ってきているから。」
そういって老婆はガラスの靴を取り出しました。
老婆が言うにはこの靴を履いていればダンスもじょうずに踊れるようになるというのです。
それにガラスなのですがとっても丈夫なうえ履いていても痛くならないというのです。
一番最後のは私にとって一番うれしかったです。
私の持っているような硬い革靴ですと履いていると足がとっても痛くなってしまうからです。
だから私は素直に喜びました。
「まあおばあさんとってもきれいな靴ですこと。これならお城の舞踏会にも行けるわ。」
喜ぶ私に老婆はくぎを刺しました。
「灰かぶり、私の魔法は十二時になるととけてしまうんだよ。
だからそれまでには帰ってくるんだよ。良いね十二時だよ。」
「はい、わかりました。」
それは大丈夫です。
お城の舞踏会は十一時半には終わるので十二時までには帰ってこれます。
だから私は安心してお城の舞踏会に行ったのです。
お城の舞踏会はとってもきらびやかで楽しいものでした。
それに私は見事王子様に見初められて結婚することになりました。
その時の継母たちの顔は見ものでした。
絵に書いて残しておきたいと思うぐらいバカみたいな顔をしていました。
さて舞踏会も終わって私もほかの客といっしょに帰ろうと思いましたが、
王子に引き止められてしまいました。
まあそれも予想どうりだったので私は老婆に話しかけられたときに思い付いた策を実行することにしました。
「王子様、折入ってお話ししたいことがあります。」
私が固い顔でいうと王子様はまじめな顔になって答えます。
「なんだい難しい顔をして、それにもう君は婚約者だ。そんなに固くならなくてもいいんだよ。」
婚約者であったとしても気軽に話すわけにはいきません。
今の私は婚約者であったとしてもただの一貴族令嬢。
相手は王族ですから結婚するまでは気軽には話せません。
「いえ結婚するまではこのままでお願いします。
それで私がお話ししたいことですが実は魔女の事でして・・・・・・・・」
「灰かぶりっ!恩をあだで返すとはなんて娘だっ!」
私の前で老婆が口汚く何事かをののしってます。
「お前を幸せにしてやろうとしたっていうのにその礼がこれかいっ!」
老婆は今体を十字架にはりつけにされてます。
「お前のことを呪ってやるよ、灰かぶりっ!」
老婆の足元にはわらが、その上には木材が置かれています。
「幸せになれるとは思わないことだねっ!魔女の命をかけた呪いなのだから!」
そこに男が松明を持って近づいて行きます。
そして男が今わらに火をつけました。
「ひゃハハ、ひゃーハハハハハ、ひゃーーハッハッハハハ。」
老婆は最後まで狂ったように笑いながら死んでいきました。
こうして悪(魔女)は死に、かわいそうな少女(私)は王子様と結婚し末永く幸せに暮らしたのでした。
めでたしめでたし。
ってなるはずだったのに。
「王子様っ、助けてください。
私は今十字架にはりつけられています。
「これは何かの間違いなんです。私の子があんな異形のはずがないんです。」
私は必死に王子に助けを求めます。
「そうきっとあの魔女の呪いなんです。だからっ。」
そこまで言ったところで王子は厳しい顔で私を睨みつけてきます。
そんな厳しい顔を私に向けられたことがなかったため私は思わず黙ってしまいました。
「だから助けろと?助けるわけないだろう。
お前の腹からあの怪物が生まれてきたことは事実だ。」
そこまで言ってから王子は呆れるような顔をして言いました。
「ということはだ。お前が怪物と交わりあの怪物が生まれてきたということだろう。」
「そんなっ、私はあなた以外と交わったことなどっ。」
私は必死に否定します。
「だとしたらお前がもともと怪物だったということか。
怪物の子は怪物。まあ当然のことだな。
よくも今までおれをだましていたものだ。」
「そんなことはありませんっ!きっとあれは魔女の呪いで 」
「だとしたらお前は神に見捨てられたことになるな。
敬虔な信徒であれば魔女の呪いぐらい跳ね返せたであろうに。
もしくは異教徒であったか。
まあどちらにせよお前の火刑は決まっている。せいぜい苦しんで死ぬんだな。」
こうして魔女という悪と、魔女ををだましあまつさえ恩をあだで返すということをした悪は滅び、
この国はその後も末永く繁栄したそうな。
めでたしめでたし。




