ん?まてよ
ん?まてよ。少年はふと思った。ここで終わらせようとしたときであった。この後下人は、老婆がいったことが正しいなら俺が貴様の服をハギッとても怨みはせんな。そうせねば俺も飢え死にをする身なのだ!みたいなことを言って老婆の着物を剥ぎ取り羅生門からさっさと逃げていった。
そして最後に”下人の行く方は 誰も知らない。”である。
老婆の着物を剥ぎ取っていって、いくらになるんだ。少年はふと思った。
そうだ!少年はピカンと思った。授業で教えてもらったことはうそなんだ!!
(その正当化されたことを思って下人は盗賊になる決意をするわけですが、最初に悪だといって老婆に刃を突きつけ、今度は気が変わり老婆の着物を剥ぎ取るとはえらく身勝手な人だなと思いました。)
これでいんだと思った少年の筆は止まりません。
(大体この下人、カツラのほうが売れるのに何故、わざわざ服を取ったのでしょう。この下人無能すぎです。死人の服を取るなり、そのまま老婆を殺して金銭を持ってないか探すなどをすればいいのに、なぜしないんでしょうか。
そして服を剥ぎ取るなり、さっさと逃げるなどどんな腰抜け人間なんでしょう。こんなのが盗人になれるはずが無いのです。そして最後に下人の行く方はだれもしらないとなっていますが知ってるはず無いんです。たぶん数日後死体になってますよ。下人はあまりにも小さい。せこせこ雨の下で悩んで、あばらなんか年じゅう気にして、しかも何も出来ないのです。これでは駄目です。とても飢餓の世の中を渡っていくことなんか出来ません。人生の敗北者です。僕は宣言します。この下人は、ほどなくせこせこした盗みをしくじって、その時、斬り殺されてしまうに決まっています。)
そして少年はしめの言葉としこう書いた。
(つまりは心理描写に指向性を与えておいて、読者が皆さんご一緒に騙されるように仕組んだのです。すごい演出方法です。さすが龍之介です。僕が見込んだ小説家です)
(僕は将来、こんなコソコソした屑野郎にならないように気をつけようと思います。)
「よし書けた」ちょうど時計は3時を指していた。
下人の行く方は誰も知らない。俺も知らん。そんなどうでも事を思いながら、翌日作文を出した。
=少年がどうなったか俺は知らない。=
どうも。ありがとうございました。ああ、これで終わりじゃないんで心配なく。
では今日はここまでで。