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頑張る君たちへ

作者: 澪ナギ
掲載日:2026/05/13

「祈童くんの家ってご褒美制なの?」


 そんな声に顔を上げれば、いつもの笑みは絶えぬまま、目だけは興味津々といった道化がいた。


「なんでだ?」

「だって妙にご褒美推すから」


 それに、あぁと思い至って。ゆるく首を横に振る。


「そういうわけじゃないさ。僕の家は逆にご褒美という感じはないんじゃないかな」


 すべては神にささげるもの。掃除を頑張れど、毎日祈りをささげど。ご褒美なんてものは出ない。当然のことをしているのだから。

 そう言えば道化はふぅんと言って、前の席へと座る。意外としとやかに座る彼女が腰を落ち着けたのを見計らって。


「ただ」

「うん?」

「……少し、その方がいいかと思っただけさ」


 思うのは、頑張り屋なのに自分を苦しめてしまうそのヒトたち。

 己の考えで、己を苦しめていく。

 そして本当に「頑張った」という努力は、ただのタスクとしてカウントされ、自分を褒めることもない。逆に己を卑下してしまう。


「たとえば推しているから、続きが出たから、というものでなく。……心から欲しいとか、食べたいとか、そういうご褒美をつけた方がいいと思った」


 ずっと頑張っているのだから。


 そして。


「その頑張りは、タスクとして数えていいものじゃない。他の誰にもできないであろう、立派な偉業だ」


 諦めず、続けること。目的をもってやり遂げること。

 簡単にできることじゃないから。


 だから。


「必要だろ、ご褒美は」


 窓から外を見てそうこぼせば、心地いい笑い声が聞こえる。


「そうね」


 そうして、穏やかに肯定してくれて。


「祈童くんのその考え好きよ」


 心地よく紡がれる言葉に、礼をこぼした。


『頑張る君たちへ』/結




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