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ワガママ無双 ~面倒くさがりが転生したら、必要なスキルが勝手に生えて街と国ができていた件~  作者: 七瀬ミコト


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第9話 うちにも回せって言われても、俺は何もしてません

 朝。


 門の前が、少し騒がしかった。


 怒鳴り声ではない。

 だが、妙に硬い声だ。


(……面倒そう)


 俺は、

 できるだけ関わらない方向で

 迂回しようとした。


「ノアさん!」


 リリアに呼び止められた。


(捕まった)


 門の外には、

 見慣れない馬車が三台。


 紋章付き。

 ちゃんとした街のものだ。


「隣の街、

 レグナからです」


 リリアが小声で言う。


「魚の件で、

 話があると」


(来たか)


 代表らしき男が、

 一歩前に出る。


「貴殿が、

 ノア殿か」


「はい」


「貴殿の街で、

 生魚が流通していると聞いた」


「してますね」


 事実なので否定しない。


「我々の街にも、

 同等の供給を求めたい」


 丁寧な言い方だが、

 要求だ。


「我々は内陸だ。

 貴殿の街だけが

 特別である理由はない」


(理由、

 めちゃくちゃあるけどな)


 俺は、

 答えをリリアに投げた。


 視線だけで。


「現在、

 魚の供給は

 複数の商人と

 契約ベースで行われています」


 リリアの声は、

 落ち着いている。


「量も品質も、

 保証はできません」


「それでもいい」


 代表は即答した。


「だが」


 今度は、

 声が少し強くなる。


「貴殿の街だけが

 中継点であるのは、

 不公平ではないか?」


(出た)


 バルドが、

 一歩前に出た。


「不公平、

 というのは」


「物流を独占している、

 という意味だ」


 言い切った。


 周囲が、

 少しざわつく。


(……あー)


 面倒な単語が出た。


 俺は、

 深く考えずに言った。


「独占、

 してませんよ」


「何?」


「保冷箱、

 誰でも使えます」


「……?」


「馬車も、

 道も、

 自由です」


 事実だ。


 ノアんとこは、

 通過を止めていない。


「ただ」


 俺は続ける。


「うちを通る方が、

 楽なだけです」


 沈黙。


 代表の顔が、

 微妙に歪んだ。


「……それが、

 問題だと言っている」


「そうですか」


 正直、

 どうでもいい。


 リリアが、

 ため息をついた。


「要件を整理します」


 彼女は、

 帳面を開く。


「レグナは、

 安定供給を求めている」


「はい」


「だが、

 ルート構築や

 リスクは

 負いたくない」


「……」


「それを、

 ノアんとこに

 肩代わりしてほしい」


 代表は、

 否定しなかった。


(まあ、

 そうだよな)


 俺は、

 即答した。


「それ、

 面倒です」


「……は?」


「楽じゃないので、

 やりません」


 場が、

 完全に止まった。


「我々は、

 交渉に来たのだぞ!」


「はい」


「その返答は――」


「楽じゃない、

 って理由で

 断りました」


 事実だ。


 しばらくの沈黙の後。


 代表は、

 言葉を変えた。


「……では、

 提案を変えよう」


 来た。


「我々を、

 この物流網に

 正式に組み込め」


(同盟、

 というやつか)


 俺は、

 リリアを見る。


 バルドを見る。


 二人とも、

 静かに頷いた。


(処理、

 任せていいな)


「条件は?」


 俺が聞く。


「貢献」


 代表が答える。


「馬車。

 護衛。

 中継拠点」


「……」


 それなら、

 少しだけ

 楽になる。


 俺にとっては。


「じゃあ」


 俺は言った。


「やるなら、

 “対等”で」


「……?」


「うちに

 指図しない」


「……」


「楽な方を

 選びます」


 代表は、

 しばらく黙り込んだ。


 そして、

 苦笑した。


「……分かった」


 その日の夕方。


 街の掲示板に、

 新しい紙が貼られた。


【物流協力試験運用】

【対象:レグナ街】


 正式な同盟ではない。

 だが、

 線が一本、増えた。


 夜。


 宿の部屋。


「……面倒、

 増えたよな」


 独り言だ。


 だが同時に、

 こうも思う。


(俺、

 ほとんど何もしてない)


 選んだのは、

 楽な方。


 それだけだ。


 この日。


 ノアんとこは、

 “通ると楽な街”から

 “通らないと損な街”に

 変わり始めた。


 それに気づいたのは、

 外の街の方が

 先だった。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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