第7話 気づいたら、周りに人がいました
最近、俺の周りに人が多い。
いや、正確には――
俺の近くに長居する人間が増えた。
(……落ち着かないな)
朝。
宿の一階に降りると、
見覚えのある顔が揃っていた。
ギルドの受付、リリア。
帳面を持った年配の男。
それから、見知らぬ冒険者が二人。
「……何かあります?」
そう聞くと、
全員が一斉に俺を見た。
(やめてほしい)
「ええと」
最初に口を開いたのは、リリアだ。
「ちょっと、話し合いをしようかと」
「……俺、必要です?」
「必要というか……」
リリアは言葉を選ぶ。
「ノアさんがいる前提の話なので」
(それがもう面倒なんだが)
年配の男が、軽く頭を下げた。
「バルドと申します。
以前は、別の街で記録係を」
「記録?」
「はい。
人、物、金、土地。
整理するのが仕事でした」
「……今は?」
「今は、
この街が気になりまして」
(理由が重い)
次に、冒険者風の男が名乗る。
「俺はダン。
この街に来た冒険者の代表みたいなもんだ」
「代表?」
「勝手に担がれた」
それは少し同情する。
「で」
俺は椅子に座った。
「要件は?」
全員が顔を見合わせたあと、
リリアが言った。
「この街、
回り始めちゃってるんです」
「知ってます」
「止める気、あります?」
「ありません」
即答だ。
止める方が、面倒だ。
「なので」
バルドが帳面を開いた。
「“回る前提”で、
最低限の整理をしたい」
「……俺、
何すれば?」
「何もしなくて結構です」
それは助かる。
「ただし」
リリアが続ける。
「困った時の最終判断役だけ、
ノアさんにお願いしたくて」
「……判断って、
考えるやつですよね」
「考えなくていいです」
「?」
「“楽な方”を選んでくれれば」
それなら、できる。
ダンが腕を組む。
「冒険者も増えてる。
勝手にやると、
揉める」
「……面倒ですね」
「だから、
ここに来た」
理屈は分かる。
分かるが、
引き受けた覚えはない。
「まとめると」
俺は指を折った。
「バルドは整理。
リリアは窓口。
ダンは冒険者側」
「はい」
「俺は?」
全員が、
少し困った顔をした。
「……そこにいる人」
「象徴」
「基準」
ろくな答えがない。
「まあ」
俺は立ち上がった。
「勝手にやってください」
「え?」
「困ったら呼んでくれれば、
楽な方を選びます」
それ以上は、
関与しない。
それが一番、
長続きする。
話は、それで終わった。
はずだった。
昼。
街を歩くと、
人の動きが変わっていた。
案内役がいる。
掲示が整理されている。
冒険者が無茶をしていない。
(……早いな)
夕方。
宿に戻ると、
リリアが声をかけてきた。
「一応、
役割、決まりました」
「聞いてませんが」
「言っても面倒そうだったので」
正解だ。
夜。
部屋で、ベッドに腰を下ろす。
「……仲間、
ってやつか?」
正直、
実感はない。
だが――
面倒が減っている。
それだけで、
十分だ。
この日。
ノアんとこには、
“自然発生した運営陣”が揃った。
俺が集めたわけじゃない。
俺が選んだわけでもない。
ただ、
楽を選んだ結果だ。
そして次は――
街の外と、
もっと繋がる。
それが、
次の面倒だ。
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