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第56話 戻るという決断
撤退は、進軍よりも勇気がいる。
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ベルグラントの将軍は、
兵に命じた。
「国境線まで戻れ」
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兵士たちは、安堵と困惑の混じった顔をした。
「負けたのか?」
「違う」
「終わっただけだ」
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グレイシアも軍を引く。
各国が、静かに兵を戻す。
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世界会議は、
「停戦」という言葉を使わなかった。
使う必要がなかったからだ。
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ハブリス。
市場は、少しだけ賑やかだった。
「遠回り、減りました!」
「魚が早い!」
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リリアが微笑む。
「……戻りましたね」
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ノアは、頷く。
「戻るのが」
「一番、面倒が少ないですから」
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戦争は、
歴史書に大きくは載らない。
だが、
世界の秩序は、確かに変わった。
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カリクスは、
戦わずして、
**戦争を成立させなかった国**として刻まれた。
(つづく)
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