第55話 戦争を続ける理由が、消えた
正式承認の報は、戦場にも届いた。
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「カリクスは中立国家として認められた」
「軍事圧力は禁止」
「封鎖案は、却下」
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前線の天幕で、将校たちが顔を見合わせる。
「……つまり」
「今の状況が、前提になる」
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補給は止まらない。
物価は崩れない。
兵は飢えない。
だが――
戦果も、出ない。
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「押し込めば?」
「補給線が長すぎる」
「引けば?」
「体面が傷つく」
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誰かが、小さく言った。
「……勝てないのではなく」
「続ける意味が、薄い」
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ベルグラント本営。
将軍は地図を見ていた。
侵攻線は、伸びている。
だがその奥にあるのは、
カリクスを通る補給網。
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「封鎖できない」
「圧も効かない」
「敵は出てこない」
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静かに、椅子に座る。
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「……戦争は」
「怒りで始まる」
「だが」
「計算で終わる」
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将軍は立ち上がる。
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「撤退案を作れ」
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同じ頃。
ハブリス。
倉庫では今日も荷が動く。
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「北便、問題なし!」
「南回り、到着!」
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リリアが報告をまとめる。
「戦線縮小の動きがあります」
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「……ですか」
ノアは、湯呑みを持ったまま言う。
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「戦争、終わりそうです」
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「終わるというより」
「……面倒が増えなくなっただけですね」
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その夜。
ベルグラントは、正式に前線縮小を発表した。
大国も、それに続く。
勝利宣言はない。
敗北声明もない。
ただ、
**続ける理由が消えた。**
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この日。
戦争は終わらなかった。
だが――
**止まった。**
(つづく)
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