第37話 何も考えずに潜ると、だいたい当たりを引く
ノアは、
久しぶりに何も考えていなかった。
「……最近」
街。
国。
対等。
全部、
頭が重い。
「……ダンジョンだな」
理由はそれだけ。
現実逃避としては、
最高だ。
向かったのは、
地図の端。
正式には記録されていない場所。
理由は簡単。
面倒だから調査されていない。
入口。
古い。
静か。
嫌な予感がしない。
「……良さそう」
基準は、
完全にノア基準だ。
中に入る。
空気が、
軽い。
魔力が、
澄んでいる。
「……当たりだな」
魔物が出る。
速い。
数が多い。
だが――
考える必要はない。
転移。
背後。
打撃。
収納。
次。
囲まれる。
転移。
天井。
落下。
沈黙。
「……久しぶりだな、
この感じ」
汗も、
疲労もない。
ただ、
静かに片付いていく。
奥。
階層を進むほど、
素材が変わる。
鑑定。
【高純度魔力結晶】
【自己修復素材】
【流動安定金属】
「……面倒」
だが、
手は止まらない。
さらに奥。
空間が歪む。
床が、
鏡のようだ。
「……隠し、
だな」
転移。
広間。
巨大。
中央に――
核。
今までより、
一段格が違う。
「……壊すと
面倒になるやつだな」
ノアは、
近づく。
手を伸ばす。
収納。
ダンジョンは、
静かになった。
崩れない。
暴走しない。
ただ――
終わった。
帰還。
転移。
ハブリス。
街の外。
ドン。
ドン。
ドン。
見たことのない素材が、
地面に並ぶ。
最初に気づいたのは、
職人だった。
「……何だ、
これ」
「加工……
楽すぎる」
「いや、
壊れない」
混乱と、
興奮。
ノアは、
欠伸をする。
「……また」
「街、
変わりますね」
リリアが、
遠い目で言う。
「でしょうね」
否定はしない。
夜。
宿の部屋。
ノアは、
久しぶりに
すっきりした顔で
ベッドに倒れた。
「……やっぱり」
独り言。
「考えないで
動くのが
一番楽だ」
この日。
ハブリス圏は、
次の段階に進む素材を
手に入れた。
何が変わるかは、
まだ分からない。
だが一つだけ、
確実なことがある。
ノアが、
また何も考えずに
動いたということだ。
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