第29話 ノアがいない方が、うまく回ることもある
問題は、外で起きた。
それも――
かなり広い範囲で。
発端は、海だった。
嵐。
海流の乱れ。
港の一時閉鎖。
結果――
物流が止まった。
港町マレア。
「船が出せない!」
「次の入港は未定だ!」
「生鮮が腐るぞ!」
街が、ざわついた。
さらに悪いことに。
その影響は、
内陸にも波及した。
食料。
資材。
価格。
どれも、
一気に不安定になる。
「……まずいな」
マレアの商人が、
頭を抱えた。
「ハブリス経由の
代替ルートは?」
「……既に、
動いています」
「え?」
ハブリス。
ノアは――
いない。
朝から、
ダンジョンに潜っていた。
(静かでいい)
それだけだった。
一方、街では。
「港が止まった?」
「じゃあ、
山側から回そう」
「倉庫、
まだ余裕ある」
「加工優先度、
切り替え!」
誰かの号令ではない。
いつもの判断だ。
商業代表。
治安代表。
運搬役。
全員が、
自分の範囲で動いた。
「国外向けは、
一旦止める」
「国内流通、
優先」
「価格は、
動かすな」
決定は早い。
迷いがない。
マレアからの使者が、
慌てて来た。
「港が――」
「聞いてます」
「代替、
あります」
「……え?」
使者は、
倉庫を見て固まった。
「……なぜ、
まだ余裕が?」
「備蓄です」
「誰の判断で?」
「……誰でしょう」
誰も答えられない。
同時刻。
別の国。
「物流が止まったぞ!」
「代替は?」
「ない!」
慌てる街。
荒れる市場。
差が、
はっきり出た。
数日後。
嵐は、
収まった。
港は、
再開した。
だが――
評価は、
もう変わらない。
「……ハブリスは」
マレアの商人が、
静かに言う。
「ノアがいなくても、
止まらない」
それは、
最大級の賛辞だった。
その頃。
ノア。
ダンジョンから帰還。
街に入るなり、
言われた。
「大変でした!」
「……何が?」
「嵐で!」
「……ああ」
正直、
あまり覚えていない。
「でも、
問題なく
回りました!」
リリアが、
誇らしげに言う。
ノアは、
一瞬だけ驚いた。
そして――
少し笑った。
「……それは」
「楽ですね」
夜。
宿の部屋。
ノアは、
ベッドに転がりながら思う。
(俺が
いなくても
回る)
それは、
少し寂しく。
でも――
最高に、
楽だった。
この日。
ハブリスは、
仕組みとして完成した。
誰か一人に
頼らない。
止まらない。
そして――
ノアは、
その完成を
祝うつもりもなかった。
面倒だからだ。
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