第23話 外の国が、放っておくわけがなかった
最初に来たのは、
商人だった。
しかも――
見たことのない服装だ。
「失礼」
港町マレア経由、と名乗る男は、
やけに丁寧だった。
「こちらが、
ハブリスで?」
「そうです」
「……噂通りですね」
何が、とは言わなかった。
倉庫。
素材の山。
昨日より、
さらに減っていない。
むしろ――
増えている。
(鍛冶屋、
働きすぎでは)
「これは」
商人の声が、
震えた。
「どこから?」
「ダンジョンです」
「……どこの?」
「近くの」
商人は、
ゆっくり息を吐いた。
「国外では、
見たことがありません」
来たな、と思った。
「取引を」
男は、
即座に言った。
「ぜひ」
「量は?」
「あります」
「価格は?」
「相場で」
即答だった。
ノアが言ったのではない。
リリアだ。
「……条件は?」
商人が、
ノアを見る。
(こっち来るな)
「面倒なことは」
ノアは、
先に言った。
「しません」
「独占も」
「縛りも」
「定期契約も」
全部、
嫌だ。
商人は、
一瞬考えた。
そして――
笑った。
「……素晴らしい」
予想外の反応だった。
「一番、
取引しやすい」
(そうなのか?)
「では」
「単発で」
「必要な時だけ」
「その都度」
「こちらから来る」
「どうでしょう」
ノアは、
少しだけ考えた。
少しだけだ。
「……楽そうですね」
決まりだ。
数日後。
港町マレアから、
大型船団が動いた。
目的地は、
内陸。
前代未聞だ。
ハブリス。
街の外に、
臨時の積み替え場ができた。
馬車。
箱。
人。
「……内陸で、
これは」
周辺の街が、
ざわついた。
国外向けの素材。
武器。
建材。
加工品。
どれも、
質が高い。
鍛冶屋が言う。
「この素材」
「加工が楽すぎる」
「……逆に怖い」
ノアは、
聞かなかったことにした。
代わりに来たのは、
金だ。
銀だ。
信用だ。
情報だ。
バルドが、
帳面を見て呟く。
「……取引先」
「国外、
三か国になりました」
「もう?」
「はい」
(早すぎる)
街に、
変化が出始めた。
外国語の看板
異国の料理
見慣れない服
新しい貨幣
世界が混ざり始める。
夕方。
城壁の上。
ノアは、
街を見下ろした。
広い。
動いている。
止まらない。
「……なんで
こうなるかな」
独り言。
素材を持ち帰っただけだ。
考えたくなかったから、
ダンジョンに行っただけだ。
リリアが、
隣に立つ。
「外の国から」
「正式な使者が、
来るそうです」
「……また?」
「はい」
「目的は?」
「たぶん」
一拍置いて。
「友好と確認です」
ノアは、
深く息を吐いた。
「……ダンジョン、
もう一回行くか」
「現実逃避ですか?」
「はい」
即答だった。
この日。
ハブリスは、
内陸の街でありながら、
世界と繋がった。
点だった街は、
線になり、
面になり――
今や、
外へ伸び始めている。
ノアの意思とは、
関係なく。
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