第22話 鍛冶屋が増えると、街は勝手に広がる
朝。
ノアが目を覚ます前に、
街はもう起きていた。
というより――
起きすぎていた。
「場所が足りねえ!」
「炉を増やせ!」
「いや、
この素材は温度管理が――!」
怒鳴り声。
金属音。
火の音。
(……うるさい)
宿の窓から外を見る。
昨日まで空き地だった場所に、
仮設の炉が並んでいる。
人。
人。
人。
(増えすぎだろ)
「ノアさん!!」
リリアが、
すでに疲れた顔で駆けてきた。
「鍛冶屋が……」
「増えました?」
「増えました!」
即答だった。
「昨日の素材を見て」
「周辺の街から」
「港から」
「鉱山都市から」
「……職人が、
勝手に集まってきています」
(勝手に、
は大事だな)
倉庫前。
素材は、
まだ半分も減っていない。
それなのに、
周囲は人で埋まっている。
「これ、
一生分の素材だぞ……」
「いや、
十年だ」
「加工が追いつかん!」
鍛冶屋たちは、
目を輝かせていた。
「問題は」
リリアが、
真顔で言う。
「場所です」
「でしょうね」
「炉、作業場、
倉庫、宿舎」
「全部、
足りません」
ノアは、
少し考えた。
本当に、
少しだけ。
「……外、
使いましょう」
「外?」
「街の外」
リリアが、
一瞬で理解する。
「……城壁、
拡張ですね」
「はい」
「許可は?」
「……後で」
(今は、
勢いだ)
その日のうちに。
杭が打たれた。
線が引かれた。
仮の区画ができた。
「ここ、
鍛冶」
「こっちは、
建材加工」
「住居は、
こっちだ!」
誰が指示したのかは、
分からない。
だが、
全員が動いている。
バルドが、
帳面を抱えて来た。
「……数字が、
おかしいです」
「いつも通りですね」
「建築速度が、
想定の三倍です」
「素材、
ありますから」
それだけの話だ。
夕方。
街の外周に、
新しい道ができ始めた。
まっすぐ。
広い。
馬車が、
すれ違える幅。
(あー……
これは)
「ノアさん」
リリアが、
少し困った顔で言う。
「街の形、
変わります」
「いいんじゃないですか」
「……碁盤の目に」
「楽そうですね」
即決だった。
夜。
焚き火の数が、
昨日の倍になっている。
笑い声。
金属音。
活気だ。
宿の主人が、
嬉しそうに言った。
「部屋、
全部埋まりましたよ」
「……増築、
考えます?」
「もちろんです!」
(流れが、
止まらんな)
その頃。
街の外。
馬車が、
また一台。
また一台。
素材を目当てに、
人が来る。
仕事を目当てに、
人が来る。
この日。
ハブリスは、
街として一段階、
大きくなった。
計画ではない。
宣言でもない。
素材があり、
人がいて、
やる気があった。
それだけだ。
夜。
宿の部屋。
ノアは、
ベッドに倒れ込む。
「……街作りって」
天井を見る。
「放置が
一番楽だな」
もちろん、
そんなはずはない。
だが――
今は、
そう見えていた。
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