第11話 それ、誰が決めたんですか
最近、掲示板を見るのが少し怖い。
理由は簡単だ。
知らない単語が増えている。
朝。
ギルド前の掲示板に、新しい紙が貼られていた。
【物流協力拡張案】
【レグナ街・周辺村との連携について】
「……連携?」
ノアは、首を傾げた。
(そんな話、
聞いてないが)
「ノアさん」
リリアが、いつもの帳面を抱えてやってきた。
「昨日の件ですが」
「昨日?」
「物流です」
「……ああ、
魚が少しダメになったやつですか」
「それは解決しました」
「ですよね」
なら問題ない。
「問題は、
その後です」
リリアが、紙を一枚差し出す。
商人ギルド発行の文書だった。
【ハブ都市ノアんとこを中心とした
広域物流網について】
「……ハブ?」
聞き覚えのない言葉だ。
「いつから?」
「昨日の夕方からです」
(展開、
早すぎない?)
バルドも合流した。
「外では、
もっと話が進んでいます」
「進んでいる、
とは?」
「“経済圏”
という言葉が使われ始めました」
「……」
ノアは、
一瞬だけ考えた。
考えたが、
すぐやめた。
(面倒そうだ)
街の外。
馬車が、
昨日より増えている。
荷台には、
見覚えのある箱。
保冷箱。
木材。
石材。
「ここを通すと、
楽だからな」
商人が、
何気なく言った。
「……楽?」
「道が整ってる。
人もいる。
話が早い」
それだけだ。
(理由、
それだけか)
昼。
市場で、
知らない商人に声をかけられた。
「ここが、
ハブリスか?」
「……え?」
「内陸の中継点だろ?」
(もう名前ついてる……)
リリアが、
少し疲れた顔で言う。
「外では、
こう呼ばれてます」
「……否定した方が
いいですか?」
「すると、
説明が必要になります」
(却下)
午後。
バルドが、
帳面を広げる。
「既に、
数字が変わり始めています」
「どんな?」
「物価が安定しました」
「……それ、
いいことですよね」
「はい」
「じゃあ、
放置で」
バルドは、
一瞬言葉に詰まったが、
頷いた。
「……承知しました」
夕方。
街の外れで、
小さな会話が聞こえた。
「ノアんとこ、
通さない理由ないよな」
「うん。
遠回りする方が面倒だ」
それが、
答えらしい。
夜。
宿の部屋。
ノアは、
ベッドに腰を下ろした。
「……勝手に
名前も立場も
増えてるな」
否定もできる。
止めることもできる。
だが。
止める理由がない。
むしろ、
止める方が面倒だ。
この日。
ノアんとこは、
公式では何も変わっていない。
だが外では、
こう呼ばれ始めていた。
「ハブリス」
中継の街。
通ると楽な街。
ノアは、
まだその名前を
正式に使っていない。
だが――
使わない理由も、
もうなかった。
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