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ワガママ無双 ~面倒くさがりが転生したら、必要なスキルが勝手に生えて街と国ができていた件~  作者: 七瀬ミコト


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第1話 面倒だから、必要になったら勝手にスキル生やして

面倒なことが嫌いだ。


努力とか、計画とか、長期目標とか。

正直、考えただけで疲れる。


だから俺は、

「必要になったら考える」

という生き方を選んできた。


……まさかそれが、

女神に「じゃあそうするね」と言われて、

異世界で実現するとは思わなかったが。


これは、

世界を救う気も、国を作る気もない男が、

面倒を避け続けた結果、

なぜか街と国ができてしまう話である。


なお本人は、

今も全力でこう思っている。


「……面倒なこと、増えないといいな」

 白かった。


 上下左右、全部白。

 壁も床も天井もないのに、なぜか“白い部屋”みたいな場所。


(……あー、これ)


 だいたい察した。

 察するのは得意だ。考えるのが面倒だから。


「はーい! 転生者さーん!」


 やたら元気な声がして、白の向こうから女神が出てきた。


 金髪。白いドレス。

 笑顔が眩しい。眩しすぎて目が痛い。


「あなたは不慮の事故で亡くなりました! なので異世界転生です!」


「要点だけで」


「え?」


「長い説明、面倒なので」


 女神が、いきなり片足だけつまずいたみたいな顔になった。


「え、ええと……異世界に行って、第二の人生を、え、えっと……」


「危険あります?」


「あります!」


「努力必要?」


「たぶん!」


「社会人スキル必要?」


「……え、あ、あるかも」


「面倒ですね」


「即答しないで!?」


 女神が叫んだ。


「普通はもっとこう、ワクワクするものなの! 剣と魔法! 冒険! 仲間! 成長!」


「歩くの多そう」


「……」


 女神の顔がスッ……と真顔に戻った。


「あなた、歩くの嫌い?」


「はい」


「めんどくさいの嫌い?」


「大嫌いです」


「じゃあ……チートいりますね」


 女神が妙に納得した。


「転生者には特別に、スキルを授けます!」


 女神が指を鳴らすと、空中にずらっと選択肢が並んだ。


【剣聖】

【火魔法極】

【聖属性加護】

【無限成長】

【召喚術】

【勇者適性】


「はい、好きなのを選んで!」


「全部説明されます?」


「もちろん!」


「それ、地獄じゃないですか」


「ひどい!」


 女神が口をとがらせた。


「転生ですよ? 人生の再スタートですよ? もっとこう……“俺つえええ!”って」


「俺つええは好きです」


「ほら!」


「でも選ぶのが面倒です」


「台無し!」


 女神が頭を抱えた。


 俺は、両手を軽く上げる。


「こうしましょう。必要になったら、その時に勝手にスキルください」


「……え?」


「今決めるの面倒なので。必要になったら“お願いします”って言います」


 女神は目をぱちぱちさせた。


「そんな雑なスキル発注、初めて見た……」


「発注って言わないでください」


「でも理屈は分かる……くっ……」


 女神は悔しそうに唸った後、観念した。


「わかった。じゃあ条件付きで許可します」


「条件?」


「あなたが“必要だ”と思った瞬間に、自動で最適なスキルが生えます」


「生える」


「生える!」


 女神が胸を張る。


「わたしが選ぶ。あなたは悩まなくていい」


「最高」


「褒められると悔しい!」


「文句は言いません」


「そこは“ありがとう”とか言って!」


「ありがとうございます」


「よし!」


 女神が満足そうに頷いた。


「じゃあ最低限の三つは渡すね。これがないとあなた死ぬから」


 その言い方はどうなんだ。


【鑑定】

【転移】

【収納】


「……便利そうですね」


「でしょう! あなた向けに調整した!」


 女神が指を折って説明する。


「調べたい時は鑑定! 歩きたくない時は転移! 荷物持ちたくない時は収納!」


「完全に俺です」


「完全にあなたです!」


 女神が勝ち誇ったように笑う。


「じゃあ最後に抱負を!」


「楽したいです」


「正直すぎる!」


 女神が笑いながら、手を振った。


「ま、あなたはそれでいいや。世界の方が勝手に苦労するから」


「それ、俺のせいですか?」


「さあ?」


 女神はニコッとした。


 嫌な笑顔だった。


「では――良い異世界ライフを! いってらっしゃい!」


 白い世界が、ぐにゃっと歪んだ。


 落ちる感覚。

 風。

 草の匂い。


 ――次の瞬間。


 俺は、青空の下で立っていた。


「……うん」


 空が高い。

 空気が軽い。


 遠くに森。

 さらに遠くに、建物が見える。


「歩くの面倒だな」


 そう思った瞬間、頭の奥で何かが“カチッ”と鳴った。


(転移だ)


 俺は迷いなく言った。


「転移」


 世界が一瞬で切り替わり、俺は街道の上に立っていた。


「……最高」


 歩かなくていい時点で、この世界は当たりだ。


 俺は遠くの街を見た。


 小さくて、静かそうな街。


「……とりあえず、あそこに行くか」


 面倒が少なそうだから。


 街は、想像していたより小さかった。


 城壁は低く、

 門番も二人だけ。


 人の数も少ないし、

 全体的に静かだ。


(……いいな)


 騒がしい場所は疲れる。

 この街は、その逆だ。


「冒険者か?」


 門番に声をかけられた。


「たぶん」


「……たぶん?」


「今日からです」


 門番は一瞬だけ首を傾げたが、

 鑑定で問題ないと分かったのか、すぐ通された。


 説明が短いのは助かる。


 街の中を歩く。


 露店は少なく、

 食べ物も質素。


 肉は、干し肉が少しある程度だ。


(……貧乏だな)


 同情はするが、

 どうこうする気はない。


 俺はただ、

 楽に暮らしたいだけだ。


 ギルドは、街の中央にあった。


 中に入ると、

 冒険者は数人だけ。


「登録ですか?」


 受付の女性が聞いてきた。


「はい。簡単なのあります?」


「森の魔物間引きなら……」


「それで」


 説明が始まる前に、即答した。


 長い話は聞きたくない。


 ダンジョンは、街のすぐ外にあった。


「近い」


 それだけで高評価だ。


 中に入ると、

 湿った空気と、

 魔物の気配。


 最初に出てきたのは、

 ゴブリンだった。


「……弱そう」


 鑑定。


【ゴブリン】

【脅威度:低】

【肉:可】

【皮:可】


「肉、あるのか」


 それだけで、

 少しやる気が出た。


 転移。


 背後に移動して、短剣を振る。


 倒れる。


「解体……」


 一瞬考えて、

 やめた。


(今やるの面倒だな)


 収納。


 ゴブリンの死体が、

 丸ごと消える。


「……便利」


 血も付かない。

 臭いもしない。


 これは使える。


 次もゴブリン。

 次もゴブリン。


 倒す。

 収納。


 倒す。

 収納。


 途中でオークも出たが、

 同じだ。


(……これ、止め時分からないな)


 だが、危なくない。


 危なくないなら、

 続ける。


 その結果――


 気づいた時には、

 収納の中がいっぱいだった。


 肉。

 皮。

 骨。

 魔石。


(……狩りすぎたか)


 そう思ったが、

 もう戻ることにした。


 初日は、このくらいでいい。


 街に戻る。


 ギルドに直行。


「終わりました」


「え?」


「依頼です」


「……もう?」


 受付が、明らかに困惑している。


「素材は……?」


「あります」


 収納を開いた。


 次の瞬間、

 床が埋まった。


 肉。

 魔物。

 素材。


「…………」


 受付の顔が、

 完全に思考停止している。


「えっと……」


「多かったですか?」


「多いとか、

 そういう次元じゃ……」


 後ろにいた冒険者たちも、

 固まっていた。


 だが、

 騒ぎにはならない。


 この街は、

 騒ぐ元気すらない。


 その日の夕方。


 街の露店に、

 肉が並んだ。


 干し肉じゃない。

 新鮮な肉だ。


「……安くない?」


「今日、いっぱい入ったらしい」


「久しぶりに腹いっぱい食えるな」


 そんな声が、

 あちこちで聞こえる。


 俺は、宿で飯を食っていた。


 スープに、

 しっかり肉が入っている。


「……うまい」


 ただそれだけの感想だ。


 だが、

 この日を境に。


 この街の空気は、

 確実に変わり始めていた。


 俺はまだ、

 それに気づいていない。


 気づくのは、

 だいたい面倒になってからだ。

ここまでご覧いただきありがとうございます。


当面の間は、1日に3話を投稿予定です。


ブックマークをして、続きを楽しみにお待ちいただけると嬉しいです。

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