〇〇弐:俏(あで)やかなる藩金蓮 簾(すだれ)の下で情を勾(つ)り 老練なる王婆 茶坊にて技を説く
潘金蓮の心の声(誘惑の始まりから拒絶まで)
この雪の夜、部屋の暖かな火が私の肌を優しく撫でるわ。外の吹雪なんて、関係ない。武松のあの逞しい体躯、鋭い目つき……兄の影武者なんかじゃない、本物の男。酒を勧めて、襟を少し緩めて、視線を絡めて。私の曲線が彼を誘うはずよ。焦りが募るわ、心臓が鳴り響く。なぜ動かないの? 彼の拒絶の視線が刺さるけど、これはただの意地っ張り。もっと近づいて、息を混ぜて、運命を変えてみせる。なのに……この冷たい拒絶が、私の情念を燃やし尽くす。悔しい、でも諦めない。この男を手に入れるまで。
武松の心の声(誘惑の始まりから拒絶まで)
雪が天地を覆い尽くすこの夜、部屋の火が熱くても、心は氷のように冷たい。金蓮の視線が絡みつく、酒の杯が差し出される。兄の妻だぞ、そんな誘惑に屈する俺じゃない。体が熱くなるのを感じるが、これは怒りだ。拳を握りしめ、睨みつける。妖艶な曲線、媚びる表情……全てが罠。義理を重んじる俺の血が、拒絶を叫ぶ。外の吹雪のように、心の嵐が荒れ狂う。払いのける瞬間、運命の重みが肩にのしかかる。兄を裏切れない、この情欲の炎を、俺の正義で吹き消す。
【しおの】
詞に曰く
芙蓉の如き艶やかな顔、氷雪の如き透き通る肌、
生まれついてのたおやかな姿は、歳まさに十五、六の笄を挿す頃。
しなしなと門に寄りかかる様は、
梅の蕾が半ば綻び、開くかと思えばまた羞らいて閉じるが如し。
初めて簾の辺りで見初めれば、恥じらいを含んでなほ留まり、
再び楼のあたりを過ぎれば、歓びてあたたかく持て成す。
行くもよし、立つのもよし、座すもよし、
人に寄り添うその風情は、いよいよまた愛らしきものなり。
話は戻って、あの日。武松は県庁前の宿舎に戻ると、荷物や寝具をまとめ、土兵(役人付きの雑兵)に担がせて、兄の武大の家へとやって来た。
兄嫁の金蓮はそれを見るなり、まるで黄金の宝でも拾ったかのように喜びの色を浮かべ、すぐに一室を掃き清めて武松を落ち着かせた。武松は土兵を帰し、その晩は兄の家で一夜を明かした。
翌朝、金蓮は慌ただしく起き出し、湯を沸かして武松に顔を洗わせる。武松は身支度を整え、頭巾を巻き、県庁へ出勤の点呼(画卯)に向かおうとした。
すると金蓮は声をかけた。
「義弟さん、点呼が済んだら、早く帰ってきて朝餉を食べておくれよ。外で適当に済ませちゃいけないよ」
武松は承知して出かけた。県庁で点呼を済ませ、午前中の公務を終えて家に戻ると、金蓮はすでに万端、食事の支度を整えて待っていた。
武大、金蓮、武松の三人が揃って飯を食べ終えると、金蓮は両手でうやうやしく茶碗を捧げ持ち、武松に差し出した。
「姉上には苦労をかけます。これでは私のほうが心苦しい。明日にでも土兵を一人よこして、雑用をさせましょう」
すると金蓮は声を張り上げて言った。
「義弟さん、なんて水臭いことを言うんだい! 身内のことじゃないか、赤の他人の世話をするわけじゃあるまいし。あの小娘の迎児はいるけれど、あれに何かさせようとすれば、あっちへふらふら、こっちへよろよろ、全く当てになりゃしない。土兵なんかよこしたって、鍋釜の扱いも乱暴で汚いだろうし、あたしはああいう連中、見ているだけでも虫が好かないんだよ」
「それじゃあ、姉上のお言葉に甘えるとしますか」
詩に曰く
武松の儀表は凛々しく風流なれど、
嫂の淫心は収まるを知らず。
言葉巧みに籠絡して家に住まわせ、
相思の情、常に衾の温もりを想う。
細かな話は省こう。武松が兄の家に移り住んでから、彼は銀子を取り出して武大に渡し、餅や菓子を買わせて近隣の人々に配った。隣人たちも金を出し合って武松に祝いを贈ったので、武大もまた返礼の宴を設けたことは言うまでもない。
数日が過ぎ、武松は美しい彩色の緞子を一匹取り出し、義姉への贈り物として着物を仕立てるよう勧めた。金蓮は満面の笑みを浮かべて言った。
「義弟さん、こんないい物を! でも、あたしに下さるというなら、断るのも野暮というものだね」
彼女は万福(女性の礼)をして受け取った。
それからというもの、武松は兄の家に寝泊まりし、武大は相変わらず通りに出て炊餅(蒸しパン)を売り歩いた。武松は毎日県庁へ出勤し、帰りが遅かろうが早かろうが、金蓮は茶を出し飯を出し、いそいそと嬉しそうに武松の世話を焼いた。武松のほうも、かえって気が引けるほどであった。
金蓮は時折、秋波(流し目)を送り、思わせぶりな言葉で彼をからかったが、武松は強情で実直な男(直漢)である。必要な話があれば語り、なければ短く済ませるだけ。そんなふうにして、知らぬ間に一ヶ月余りが過ぎた。
十一月に入り、連日冷たい北風が吹き荒れ、空は厚い雪雲に覆われたかと思うと、紛々と瑞雪が舞い落ちてきた。なんという大雪か! それが見て取れる詩がある。
万里に雪雲密布し、空中に瑞祥として簾をなす。
瓊花片々として軒先に舞い、
剡渓のこの際、子猷の船を濡滞さす。
頃刻にして楼台みな白く圧し倒され、江山は銀色相連なる。
空飛ぶ塩の如く、粉を撒きて漫りに天に連なり、
かつて呂蒙正、破窯にて銭無きを嘆ぜり。
その日、雪は夜が更けるまで降り続き、世界は銀化粧を施し、天地は玉を碾き詰めたようになった。
翌日、武松は県庁へ行ったが、昼になっても帰ってこない。武大は金蓮に急き立てられて商売に出かけ、金蓮は隣の茶店を営む王婆に金を渡して酒と肉を買わせ、武松の部屋に良い炭火を熾させた。
彼女は独りごちた。
「今日こそ、じっくりと仕掛けてやろう。あたしがこれだけ心を砕いて誘えば、いくらあの石部金吉(堅物)だって、情にほだされないわけがないさ」
金蓮は一人、冷え冷えとした簾の下に立ち、雪の中を乱れた玉を踏みしめるように帰ってくる武松を待ち構えていた。
武松の姿が見えると、金蓮は簾を高く押し上げ、笑顔で迎えた。
「義弟さん、寒かったろう?」
「姉上、ご心配感謝します」
家に入ると、武松は編み笠を脱いだ。金蓮がすっと手を出して受け取ろうとすると、武松は「お手を煩わせるには及びません」と言って自分で雪を払い、壁に掛けた。帯を解き、鸚哥色の絹の上着を脱いで部屋に入る。
金蓮は言った。
「朝から待ってたんだよ。どうして昼餉に帰ってこなかったのさ?」
「知り合いに食事に誘われましてね。また一杯やろうと言われたが、煩わしいのでそのまま帰ってきました」
「そうかい、それじゃあ火に当たりなよ」
「それはありがたい」
武松は油靴を脱いで靴下を替え、暖かい部屋履きに履き替えると、椅子を引き寄せて火鉢のそばに腰を下ろした。
金蓮は下女の迎児に言いつけて表の閂を降ろさせ、裏門も閉めさせた。そして煮た野菜や肴を部屋に運び込み、卓の上に並べた。
武松が尋ねた。「兄上はどこへ?」
「兄さんなら商売に出かけてまだ戻らないよ。義弟さん、あたしと二人で三杯ばかりやろうじゃないか」
「兄上が帰ってから一緒にやるのも遅くはないでしょう」
「あの人を待ってたら日が暮れちまうよ!」
言い終わらぬうちに、迎児がほどよく燗のついた酒を持ってきた。
「また姉上に気を使わせましたな」
金蓮も椅子を持ってきて、火鉢のそば、武松の向かいに座った。卓には酒肴が並ぶ。金蓮は酒盃を手に取り、艶めいた眼差しで武松を見つめて言った。
「義弟さん、まずは一杯」
武松は受け取って一気に飲み干した。金蓮はまたなみなみと注いで言った。
「寒いからね、もう一杯、対になるように飲んでおくれ」
「姉上もどうぞ」
武松はまた飲み干し、今度は自分が注いで金蓮に渡した。金蓮はそれを受け取って一口すすると、酒瓶を持って再び武松の前に酒を注いだ。
その時、金蓮はずらりと着物の襟をくつろげ、羊脂のように白く柔らかな胸元をわずかに覗かせ、雲のような黒髪を半分ほど解きほつれさせ、顔に満面の媚笑を浮かべて言った。
「ねえ、人から聞いたんだけど、義弟さん、県庁の前の通りに歌い女を囲ってるって話があるじゃないか。本当かい?」
「姉上、人の噂なんぞ信じちゃいけません。この武松、決してそんなふしだらな真似はしませんよ」
「あたしゃ信じないね。口ではそう言っても、心の中は違うんじゃないのかい?」
「信じられないなら、兄上に聞いてみるといい」
「あらいやだ、兄さんの話なんかしないでよ。あの人が世間の何を知ってるって言うんだい? まるで酔生夢死(なにもなさずぼんやり生きている)のような人だよ! もしそんな甲斐性があるなら、しがない炊餅売りなんかしてないさ。……さあ、もう一杯」
そうして三杯、四杯と勧め、金蓮自身も三杯ほど酒が腹に入ると、内に秘めた春の情欲がムラムラと湧き上がり、もう抑えがきかなくなった。欲心は火の如く燃え盛り、彼女はただならぬ言葉を口にし始めた。武松も八、九分通り察しがついたが、わざと頭を低くして相手にしない。
金蓮は立ち上がって酒を温めに行った。武松は部屋に残って火箸で炭火をいじっていた。
しばらくして、金蓮が温めた酒を持って部屋に戻ってきた。片手で酒瓶を持ち、もう一方の手で武松の肩をぎゅっと摘まんで言った。
「義弟さん、そんな薄着で寒くないのかい?」
武松はすでに不快感が五、七分ほど募っていたので、返事もしなかった。
金蓮は返事がないのを見ると、ひったくるように武松の手から火箸を奪い取り、しなを作ってこう言った。
「義弟さんは火のいじり方を知らないね。あたしがやってあげるよ。……この火鉢の火みたいに、芯まで熱けりゃいいのさ」
武松はいら立ちが八、九分に達したが、まだ黙っていた。
金蓮は武松のいら立ちにも構わず、火箸を放り投げると、一杯酒を注ぎ、自分で一口含んでから、その残りの酒を武松の目の前に突き出して言った。
「ねえ、もしその気があるなら、あたしの飲みさしのこの酒、干しておくれよ」
その瞬間、武松は金蓮の手から杯をひったくり、酒を床にぶちまけて言い放った。
「姉上! こんな恥知らずな真似はやめてもらおう!」
ドン、と手を突き放すと、金蓮はよろめいて転びそうになった。
武松は眼を怒らせて言った。
「俺は、天をいただき地に立つ、歯噛みして髪を逆立てるほどの男子だ! そこらの人倫を破り風俗を乱す、猪や犬のような輩と一緒にするな! 姉上、こんな慎みのない真似は金輪際やめるんだ。もし風の便りにでも不貞が聞こえてみろ、俺の眼は姉上と認めても、この拳は姉上とは認めんぞ!」
金蓮は散々に言い込められ、顔を真っ赤にして、小女の迎児に「さっさと片付けておしまい!」と叫んだ。そして口先だけで取り繕った。
「あたしゃただの酔興な冗談のつもりだったのに、本気にするなんて野暮だね。人の親愛の情もわからないなんて!」
食器を片付けさせ、自分は厨房へ引っ込んでしまった。まさにこの詩の通りである。
落花意ありて流水に随わんとすれど、
流水情なくして落花を恋わず。
金蓮は武松を誘惑し損ねたばかりか、手ひどく叱責され、武松は部屋で一人、憤まんやるかたない様子であった。
そうこうするうち、時刻は申の刻(午後四時頃)。武大が天秤棒を担いで大雪の中を帰ってきた。
戸を開けて荷を下ろし、奥へ入ると、金蓮が目を真っ赤にして泣いている。「誰と喧嘩したんだ?」と武大が聞く。
「あんたって人は、甲斐性なしにも程があるよ! 外の男にあたしをいじめさせて!」
「誰がいじめるって言うんだ?」
「誰だと思う? あの武二(武松)の野郎さ! 大雪の中帰ってきたから、親切心で酒飯を用意して暖を取らせてやったのに、あいつ、誰もいないのを見計らって、ふざけた口をきいてあたしをからかうんだよ。『姉上、一緒にどうだ』なんてね。あたしが取り合わないと、挙句の果てに手出ししようとしやがった。迎児だって見てたさ、嘘じゃないよ」
「弟はそんな奴じゃない。今まで実直だったじゃないか。……大声を出すなよ、近所に笑われる」
武大は金蓮をなだめ、武松の部屋に行って声をかけた。
「二郎、飯は食ったか? 一緒にどうだ」
武松は返事もせず、しばらく考え込んでいたが、やがて大股で出て行こうとした。
「二郎、どこへ行くんだ?」
武松は答えず、そのまま出て行ってしまった。武大が部屋に戻って妻に聞く。
「呼んでも答えず、県庁のほうへ行ってしまったが、一体どうしたんだ?」
金蓮は口汚く罵った。
「間抜けな餛飩野郎だね! わからないのかい? あいつ、きまりが悪くてあんたに合わせる顔がないから逃げたんだよ。きっと土兵か誰か呼んで荷物を運び出し、ここを出ていくつもりに決まってる。引き留めたりするんじゃないよ!」
「弟が出て行ったら、それこそ人に笑われる」
「この阿呆の魑魅魍魎め! あいつがあたしに手を出そうとしたことこそ、人に笑われる種じゃないか! あんたがどうしてもあいつと一緒にいたいなら、あたしに離縁状をお書き。あたしが出て行くから、あんたたち二人で仲良く暮らせばいいさ」
武大はそれ以上口を開けず、妻に罵られるがままだった。
夫婦が言い争っていると、武松が土兵を一人連れ、天秤棒を持って入ってきた。部屋の荷物をまとめ、そのまま出て行こうとする。
武大は慌てて言った。「二郎、どうして引っ越すなんて言うんだ?」
武松は言った。「兄上、理由は聞かないでください。言えば兄上の面子に関わる。ただ私の勝手にさせてくれ」
武大は気の弱い男ゆえ、それ以上詳しく聞くこともできず、武松が出て行くのを見送るしかなかった。
金蓮は奥でぶつぶつと罵っていた。
「せいせいするよ。『親しき仲にも礼儀あり』って言うけど、都頭(警備隊長)になったからって兄夫婦を養うどころか、かえって飼い犬に手を噛まれるとはね! まさに『花木瓜、空しく見るに好し』(見かけ倒し)だよ。出て行ってくれて天に感謝さ、目の上のたんこぶが取れたってえもんさ」
武大は妻の剣幕と弟の態度に挟まれ、心中穏やかではなかった。
武松が県庁前の宿舎に移ってから、武大は以前のように通りで炊餅を売り歩いた。本来なら弟を訪ねて話をしたかったが、妻に「絶対に関わるな」ときつく言い含められていたため、こっそり会いに行くこともできなかった。
武松が兄の家を離れてから、指折り数えるうちに雪は晴れ、十数日が過ぎた。
ある日、本県の知県(県知事)が、着任から二年余りで民から吸い上げ蓄えた多くの金銀を、東京(開封府)の親戚に預けようと思い立った。三年ごとの朝覲(天子への拝謁)に備え、権力者への賄賂にするためである。だが道中の盗賊を警戒し、腕の立つ男が必要だった。そこで白羽の矢が立ったのが、都頭の武松だった。
知県は武松を呼び出して言った。
「東京に朱勔という親戚がおって、殿前太尉の職にある。そこへ贈り物を一担ぎと、手紙を届けたいのだが、道中が心配でな。お前なら勇猛果敢、安心して任せられる。苦労をかけるが、戻れば重く賞しよう」
「閣下のお引き立てに感謝します。命とあらば、直ちに出発いたします」
知県は大いに喜び、酒三杯と路銀十両を与えた。
武松は知県の命を受け、宿舎に戻って土兵を呼び、街で酒瓶と料理を買って武大の家へ向かった。
ちょうど武大が商売から帰ってきたところだったので、武松は門前に座り、土兵に台所で酒宴の準備をさせた。
金蓮はまだ武松に未練があり、彼が酒と料理を持ってきたのを見て、しめたと心の中で思った。
「あいつ、あたしを想って戻ってきたのかね? そうでなきゃ何しに来るんだい。あとでじっくり聞いてやろう」
彼女は二階へ上がり、化粧を直し、髪を整え、殊更に色っぽい服に着替えて門前に出てきた。
「義弟さん、どうしてこんな行き違いになっちまったんだろうね。何日も顔を見せないから、心配でどうしようもなかったよ。今日はよく来てくれたね。でも、お金を使わせて悪いねえ」
武松は言った。「兄上に話があって参りました」
「まあまあ、二階へどうぞ」
三人は二階へ上がった。武松は兄夫婦を上座に座らせ、自分は下座に椅子を置いた。土兵が酒と料理を並べる。
酒が数巡したところで、武松は杯を手に取り、武大に向かって言った。
「兄上、私は知県様の命で東京へ公用に行くことになりました。明日出発し、早くて一ヶ月、遅くとも三ヶ月で戻ります。そこで言っておきたいことがあります。
兄上は元来気が弱い。私がいない間に誰かにいじめられはしないかと心配です。明日から、炊餅を売るならいつもの半分の五籠にしなさい。遅く出て、早く帰るのです。人と酒を飲んではいけません。帰ったらすぐに簾を下ろし、戸を閉めて、余計な揉め事を避けるのです。もし誰かが因縁をつけてきても、決して争わずに待っていてください。私が戻ってからカタをつけます。兄上、承知してくれるなら、この杯を干してください」
武大は酒を受け取り、「弟の言う通りにするよ」と言って飲み干した。
武松は次に二杯目を注ぎ、今度は金蓮に向かって言った。
「姉上は賢い人だ、多くを言う必要はないでしょう。兄は実直で、全ては姉上が頼りです。『表壮は裏壮に如かず』(外見の強さは内助の強さに及ばない)、姉上が家をしっかり守ってくれれば、兄が悩むこともない。古人も言います。『垣根が堅牢なら、犬は入らぬ』と」
その言葉を聞いた瞬間、金蓮の耳元からさっと紅が差し、みるみる顔色が紫色に変わった。彼女は武大を指差して喚き立てた。
「この役立たずの阿呆! 外で何を聞いてきたか知らないが、あたしをいじめに来たのかい! あたしはね、頭巾こそ被っちゃいないが男勝りの女丈夫さ! 拳の上に人を立たせ、腕の上で馬を走らせることだってできる。膿も血も出ないような意気地なしとは訳が違うんだよ! あたしが嫁いでから、蟻一匹入れた覚えはないね。何の垣根がどうしたって? 犬がどうしたって? ふざけたこと言うんじゃないよ! 一言一句に落とし前をつけてもらうよ。瓦を投げりゃ地面に落ちる、言葉を吐けば責任が伴うんだ!」
武松はふんと鼻で笑って言った。
「姉上がしっかりしてくれるなら結構。心と言葉が一致していればいいんですがね。その言葉、しかと記憶しておきます。さあ、この杯を」
金蓮は手で杯を突き飛ばし、ドタドタと階段を駆け下りながらわめき散らした。
「賢しらぶるのもいい加減にしな! 『長兄の嫁は母の如し』ってね、あたしが嫁に来た時、やかましい小舅がいるなんて聞いちゃいないよ。どこから湧いて出たんだか。親戚でもないのに偉そうに説教して、まったくあたしゃ運が悪いよ、こんな厄介ごとに巻き込まれるなんて!」
彼女は泣きわめきながら降りて行った。
苦口の良言、諌め勧むること多けれど、
金蓮、恨みを懐きて風波を起こす。
自家、惶愧して存坐し難く、
気殺す、英雄の小二哥。
金蓮が芝居がかった癇癪を起こしたので、武松と武大も白けて酒を飲む気になれず、二階を降りた。兄弟は涙を流して別れを惜しんだ。
「弟よ、早く帰ってきてくれ」
「兄上、いっそ商売を休んで家にいてもいいのです。生活費は誰かに送らせますから。……言ったことを忘れないでください。戸締りは厳重に」
武松は武大に別れを告げ、宿舎に戻って旅支度と護身の武器を整えた。翌日、知県の贈り物と金銀を駄馬に積み、旅費を受け取って東京へと旅立った。
さて、武松が出発してからというもの、武大は妻に三、四日の間、罵り続けられた。武大は声を忍んで耐え、ただ弟の言葉を金科玉条の如く守って、炊餅を半分だけ作り、夕方前には帰宅した。荷を下ろすとすぐに簾を外し、大門を閉めて部屋に籠る。
金蓮はそれを見てイライラし、罵った。
「時勢を知らない朴念仁だね! お天道様がまだ高いのに門を閉める馬鹿がどこにいるんだい? 近所の笑いものだよ、『あの家は鬼でも飼ってるのか』ってね。あいつの言うことを真に受けて、巣に帰る鳥みたいな真似しやがって、恥ずかしくないのかい!」
「笑わせておけばいい。弟の言うことは正しい。トラブルがないのが一番だ」
金蓮は武大の顔に唾を吐きかけた。
「ぺっ! 汚らわしい! 男のくせに自分で決められず、人に指図されてるなんて!」
「なんとでも言え。弟の言葉は金石の語(揺るぎない真実)だ」
それでも武大は頑として守り続けた。金蓮は怒り狂って何度か喧嘩になったが、やがて慣れてしまい、武大が帰ってくる頃になると、自分から簾を外し、門を閉めるようになった。
武大はそれを見て、ひそかに喜んだ。「これでいいんだ、これでこそ」
詩に曰く
慎みて事し、関門して並びに早く帰る、
眼前の恩愛、崔嵬の山を隔つ。
春心一点、糸の如く乱れ、
牢籠に鎖すと任も、総てこれ虚し。
白駒隙を過ぐるが如く、月日は機を織る杼のように早く流れ去る。雪の底で梅が咲いたかと思えば、早くも春の陽気が戻ってきた。
ある日、三月の春光うららかな頃。金蓮はあでやかに着飾り、武大が出かけるのを待って、門前の簾の下に立っていた。武大が帰ってくる時刻が近づくと、彼女は簾を下ろし、部屋に戻ろうとした。
だが、事の起こる時は起こるもの。ちょうどその時、一人の男が簾の下を通りかかった。
古来、偶然なくして物語は生まれず、悪しき因縁はこうして結ばれる。
金蓮が竿を持って簾を下ろそうとした瞬間、一陣のいたずらな春風が吹き、竿が手から滑り落ちて、その男の頭にゴツンと当たってしまった。
金蓮は慌てて愛想笑いを浮かべ、その男を見た。
歳は二十五、六。いかにも浮ついた遊び人風である。
頭には房飾りのついた帽子、金の透かし彫りの簪、金井玉欄干の輪。長身で、緑の羅の襞付き上着をまとい、足元は細い組紐底の陳橋靴に、清水のような薄青の布靴下。手には金粉を散らした四川扇子を揺らしている。
顔立ちは張生(『西廂記』の美男子)のよう、姿は潘安(古代の美男子)のよう。風流で好ましい男が、簾の下からじっと流し目を送ってきた。
竿をぶつけられた男は立ち止まり、怒鳴りつけようと振り返ったが、そこにいたのが絶世の美女だと気づいた。
黒々とした鬢は濡れたカラスの羽のよう、眉は三日月のよう、口元は香り立つサクランボ、鼻筋は通り、頬は桃色、顔は銀盆のように白く、体つきは花のようにしなやか。指は白魚、腰は柳のように細く、腹は柔らかく白く、足は小さく尖って纏足も愛らしい。豊かな胸、白い足……。
その美しさは見尽くせない。その装いはどうだろうか?
頭には黒々とした髷を結い、香雲を漂わせ、周りには小さな簪を挿し並べる。
斜めに挿した双頭花、櫛が後ろ髪をあざやかに押さえる。
絵にも描けぬ柳の眉、二輪の桃花のような頬。
玲瓏たる耳飾り、露わな胸の白き玉は価なし。
紺の広袖の上着、下には湘江の浪のような絹のスカート。
袖口には透かし模様の汗拭き、身辺には芳しき香袋を下げ、
胸当ての紐は喉元で固く結ばれている。
下を見れば、尖った金蓮(纏足)、雲の模様の靴。
白綾の高底靴は、香る塵を踏むにふさわしい。
紅の紗の膝袴、歩くたびに風がスカートを揺らす。
口からは蘭麝の香り、サクランボのような唇は笑みを湛える。
人、これを見れば魂は消え失せ、あでやかさを売り込む罪な人。
男は一目見るなり骨抜きになり、怒りは遥か彼方のジャワ国(爪窪国)へ飛んでいき、顔はふやけたような、にやけ笑いに変わった。
金蓮はまずいと思い、手を組んで深々と一礼して言った。
「風に煽られて手が滑ってしまいました。旦那様、どうか悪く思わないでください」
男は頭巾を直しながら、腰をかがめて答礼した。
「構いませんよ、奥さん、お気になさらず」
その一部始終を、隣の茶店の王婆が見ていた。
「おやまあ、どこの旦那様が軒下を通ったのかと思えば。いい当たり所だったねえ!」
男は笑った。「いや、私が悪いのさ。ぶつかったのは私のほうだ、奥さん、気にしないでくれ」
金蓮は答えた。「旦那様、お咎めなきよう」
男はまた笑って大袈裟に礼をし、「滅相もない」と答えた。
その長年花を漁り草を惹いてきた(放蕩の限りを尽くしてきた)好色な賊眼は、金蓮の艶めかしい肢体から離れない。立ち去り際にも七、八回名残惜しそうに振り返り、ようやく扇子を揺らしながらふらふらと去って行った。
風日晴和にして漫ろに出遊し、
偶ま簾下より嬌羞を識る。
ただ去り臨みて秋波の転ずるに因り、
春心を惹き起こして自由ならず。
金蓮のほうも、男が風流で言葉巧みなのを見て、少し心が動いた。「どこの誰だろう。もしあたしに気がないなら、あんなに何度も振り返りはしないよね」
彼女は簾の下で男の姿が見えなくなるまで見送り、ようやく簾を片付け、門を閉めて部屋に入った。
さて読者諸君、この男は誰あろう、風月を嘲笑い、翠を拾い香を尋ねる(花柳界で遊ぶ)遊び人の大将、薬種問屋を営む、姓は西門、名は慶、西門大官人その人であった。
彼は第三夫人の卓二姐を亡くし、葬儀を済ませたばかりで心が晴れず、街へ出て遊び仲間の応伯爵を探しに行こうとしていたところだった。それが偶然、武大の家の前で、うまい具合に一撃を食らったのである。
西門慶は家に帰ってからも、あの女のことが頭から離れない。「あんないい女、どうやって手に入れるか……」
ふと、隣に茶店の王婆がいたことを思い出した。「あいつなら何とかできるかもしれん。手筈を整えさせれば、銀子の数両なんぞ安いものだ」
彼は飯も食わずに家を飛び出し、王婆の茶店へ直行した。
簾の下の席に座ると、王婆がニタリと笑いかけた。
「大官人、さっきは丁寧なご挨拶でしたねえ!」
「婆さん、ちょっと来い。隣のあの女は誰の奥方だ?」
「あれは閻魔大王の妹で、五道将軍(冥界の神)の娘さ。聞いてどうするんだい?」
「真面目な話だ、からかうな」
「知らないのかい? 旦那は県庁の前で食べ物を売ってるよ」
「棗菓子の徐三の女房か?」
「違うよ。もしそうなら、お似合いの夫婦(一対児)だ」
「なら、餃子売りの李三の娘か?」
「違うよ。もしそうなら、釣り合いが取れてる(一双)」
「まさか、刺青の劉小二の女房か?」
「わっはっは、違うよ。もしそうなら、これまた似合いの夫婦さ。当ててごらん」
「婆さん、降参だ。さっぱりわからん」
王婆は高笑いして言った。
「教えてあげようかね。あの女の連れ合いは、通りで炊餅を売ってる武大郎さ」
西門慶はそれを聞くと、地団駄を踏んで笑った。
「あの『三寸釘の枯れ木の皮(チビで醜男)』と呼ばれてる武大か!」
「その通り」
「なんてこった! 『上等の羊肉が、こともあろうに犬の口に落ちた』ようなもんだ!」
「世の中そんなもんさ。『駿馬は痴漢を乗せて走り、美妻は拙夫に伴いて眠る』。月下老人(縁結びの神)の采配もいい加減なもんだね」
「婆さん、茶菓子代のツケはいくらあった?」
「大した額じゃないよ。しばらく待つから気にしないで」
「息子の王潮は誰について行ったんだ?」
「言いたかないけど、淮上の商人にくっついて行ったきり、死んだか生きたかもわからないよ」
「俺についてくりゃよかったんだ。あいつは利口だからな」
「大官人が引き立ててくれるなら、願ったり叶ったりだよ」
「帰ってきたら考えよう」
西門慶は礼を言って立ち去った。
二刻(約四時間)もしないうちに、西門慶はまた茶店へ戻ってきて、簾のそばに座り、武大の家のほうをじっと眺めた。
王婆が出てきて言う。「大官人、梅湯(梅ジュース)でもどうだい?」
「ああ、酸味をきかせてくれ」
王婆は梅湯を作って両手で差し出した。飲み終えると西門慶は言った。
「婆さん、この梅湯はうまいな。家には梅がたくさんあるのか?」
「あたしゃ一生、媒(バイ/なかうど)をしてきたんだ、梅がないわけないだろう?」
「俺は梅湯の梅を聞いてるんだ。媒じゃ話が違う」
「あたしゃてっきり、媒の腕がいいかって聞かれたのかと思ったよ」
「婆さん、あんたが縁結びの神だっていうなら、俺にいい縁談を紹介してくれ。重く礼をするぞ」
「冗談言っちゃいけないよ! お宅の奥様(月娘)に知れたら、あたしの顔が引っ叩かれちまう」
「家の女房は性格がいいんだ。妾も何人かいるが、どれも気に入らん。誰かいいのがいたら紹介してくれ。出戻りでも構わん、俺の気に入ればな」
「一昨日、いいのがいたんだけど、大官人は嫌がるだろうね」
「良ければまとめるさ。礼は弾む」
「器量は十二分なんだが、歳がいっててね」
「『半老の佳人(年増の美人)』ってのも趣があって悪くない。一歳や二歳の違いは構わん。いくつだ?」
「丁亥の生まれで、新年明けて九十三歳さ」
「このふざけた婆あめ! しわくちゃ顔で冗談ばかり言いやがって」
西門慶は笑って立ち去った。
日が暮れて、王婆が灯りをつけ、店を閉めようとしていると、また西門慶がやって来て、簾の下に座り込み、武大の家をじっと見つめている。
「大官人、和合湯(甘いスープ)でも飲むかい?」
「頼む。甘くしてくれ」
王婆は一杯汲んで出した。西門慶は飲み終わり、夜になるまで座っていたが、ようやく立ち上がった。
「婆さん、ツケといてくれ。明日まとめて払う」
「おやおや、お気をつけて。明日またおいで」
西門慶は笑って帰ったが、家でも食事も喉を通らず、心はあの女のことばかり。正妻の月娘は、夫が上の空なのは死んだ卓二姐のせいだと思い込み、気にも留めなかった。
翌朝早く、王婆が店を開けて外を見ると、西門慶がもう通りを行ったり来たりしている。
「こいつ、焦れてるね! 鼻先に甘い蜜でも塗って、じっとしていられないようにしてやろう。県庁の連中から搾取してるあいつから、こっちもたっぷり儲けさせてもらわないとね」
もともとこの茶店の王婆、ただの婆さんではない。長年、男女の仲を取り持ち、媒酌人をし、人買いをし、女衒をし、堕胎や妾の世話、揉め事の仲裁まで、裏の仕事は何でもござれの古狸である。
言を開けば陸賈を欺き、口を出せば隋何に勝る(共に漢代の能弁家)。
六国の唇槍を憑みとし、三斉の舌剣を仗とす。
孤独な男女も、たちまち一対の夫婦にし、
寡婦と男やもめも、一席の話で引き合わせる。
その手にかかれば三里四方の女はおろか、九皈殿の仙女も逃れられぬ。
玉皇大帝の侍童と、西王母の侍女ですら抱き合わせる。
姦計を施せば羅漢と尼僧を契らせ、
からくりを用いれば李天王と鬼子母神すら睦まじくさせる。
甘い言葉で封渉のごとき堅物をもその気にさせ、
軟らかい語り口で麻姑のような仙女も情に乱れさせる。
頭を隠して尾を出し、淑女に相思の病を患わせ、
嫦娥を唆して男を盗ませる。
王婆がお湯を沸かしていると、西門慶がまた店に入ってきて、武大の家のほうを覗き込んでいる。王婆は見ないふりをして火を扇いでいる。
「婆さん、茶を二つ頼む」
「おや、大官人、お久しぶりだね。お座りよ」
すぐに濃いお茶を二つ出し、卓に置いた。
「婆さん、付き合ってくれ」
「あたしゃあんたの相方じゃないよ、付き合ってどうするんだい」
西門慶は笑って尋ねた。「婆さん、隣は何を売ってるんだ?」
「あそこはね、揚げ団子、干し肉包みの餃子、貝入りの麺、熱くて辛いスープを売ってるよ」
「この婆あ、ふざけてるのか」
「ふざけちゃいないよ、あそこには『自家製の親老公(旦那)』がいるからね」
「真面目な話だ。あそこの炊餅はうまいらしいな、四、五十個買って帰りたいんだが」
「炊餅が欲しいなら、旦那が帰ってきてから買えばいいさ。わざわざ家に上がり込む必要はないだろう?」
「……婆さんの言う通りだ」
西門慶は茶を飲み、しばらく座っていたが、また出て行った。
しばらくして、王婆が店から見ていると、西門慶は東へ行っては戻り、西へ行っては戻り、七、八回も行ったり来たりした後、また茶店へ飛び込んできた。
「大官人、いいご身分だね。何日も顔を見ないような気がするよ」
西門慶は笑い出し、懐から銀子を一両取り出して渡した。
「婆さん、とりあえず茶代として取っておいてくれ」
「こんなに貰っちゃいけないよ!」
「いいから取っておけ」
王婆は心の中で「かかったな、この男、もう逃げられないよ。銀子は貰っておくさ」と思い、「大官人、何か心当たりがあるようだね」とカマをかけた。
「どうしてわかる?」
「わからないはずがないさ。『門に入りて栄枯の事を問うを休め、容顔を観て便ち知る』。あたしゃ色の道に関しては目ざといんだ」
「俺の心事を当ててみろ。当たったら五両やろう」
「三回も五回もいらないよ、一発で当ててやろう。……耳を貸しな。ここ二、三日、足繁く通ってるのは、隣のあの人のことが気になってるからだろう? どうだい?」
西門慶はニヤリと笑った。「婆さん、あんたの知恵は隋何や陸賈より上だ。隠しはしない。あの日、簾の下で一目見てから、魂を抜かれたようになって、どうしても忘れられないんだ。どうだ、手を貸してくれないか?」
王婆は高笑いした。
「隠しちゃおけないね、うちの茶店は『鬼の夜回り』みたいなもんで、三年前の大雪の日に茶が売れて以来、さっぱり客が来ない。あとは副業で食ってるんだ」
「副業ってのは?」
「三十六で亭主に死なれてから、仲人、古着売り、妾の世話、手引き、産婆、それにお灸や病気見舞いさ」
「そんな多芸な腕があるとは知らなかった! もしこの件をまとめてくれたら、十両やるよ。棺桶代にいいだろう。頼む、あの女と会わせてくれ」
「冗談で言っただけだよ、本気にしないでおくれよ。……なんてね!」
さて、どうなることやら。次回へ続く。
詩に曰く
西門の浪子、意は猖狂、
死して工夫を下し、女娘に戯る。
虧殺なん、茶を売る王老母、
生きて巫女をして襄王に会わしむ。
「義弟へのガチ恋大爆死からの、最悪のSSR男を引き当てた件」
義理の弟に「沼落ち」してワンチャン狙った結果
主人公・潘金蓮、完全に詰んでます。旦那の武大は「三寸釘の枯れ木の皮(チビでブサメンで稼ぎがショボい)」という悲惨なスペック。
そこに現れた義理の弟、武松。
高身長イケメン
公務員(都頭)
虎を素手で殴り殺すフィジカルモンスター
金蓮、完全に「推し」を見つけてしまう。で、雪の日に「寒いでしょ♡」つって彼を自宅に招き入れ、火鉢で部屋をアツアツにしてお酒でドーピング&色仕掛け。胸元チラ見せで「旦那より弟さんの方が…」とかカマかけまくる。
→ 結末:大爆死。
武松はガチガチの硬派。「兄嫁に変なことしたら拳で教育すんぞ」とブチ切れられ、テーブルの酒を床にぶちまけられる。
金蓮、「ぴえん」通り越して逆ギレ。旦那に「あいつにセクハラされた!」と嘘ついて被害者ムーブ。
武松は「もう無理」ってなって引っ越す。家の中、修羅場。
武松の出張と「鉄壁の防御指令」
武松、知事のパシリ(超重要な賄賂輸送)で東京へ出張へ。兄貴(武大)が心配すぎて、「毎日早退してすぐ家に鍵かけろ。酒飲むな。誰も入れるな」っていう、ほぼ自宅軟禁レベルのセキュリティ対策を指示。
最初はこれを守る武大。金蓮は「ウザすぎw」とイライラMAX。
運命の「棒」落下事件(ここテストに出るぞ!)
春到来。金蓮、ヒマすぎて2階から通りを見下ろす。
簾を下ろそうとした瞬間、強風が吹いて手元の竿が滑り落ちる。
ゴツン!
通りすがりのチャラ男の頭にヒット。
その男こそ、西門慶。
最初は「誰じゃゴラァ!」ってキレかけるけど、見上げた先にいた金蓮のSSR級のルックスを見た瞬間、IQが3まで低下。
「あ、美人と目があった。許す(ついでに絶対オトす)」
怒りが一瞬でニヤケ面に変わり、何度も振り返りながら去っていく。運命のフラグ、成立。
王婆という名のプロデューサー暗躍
西門慶、即座に隣のカフェ(茶屋)に突撃。店主は妖怪みたいな老婆・王婆。
ここでの会話がエグい。「あの子誰?」「紹介しろ」って言えばいいのに、遠回しな探り合いで互いの腹を見せ合う高度な情報戦。
最終的に「カネさえ積めば地獄の沙汰もなんとやら」。
西門慶と金蓮を引き合わせるため、このババアが最強の悪徳コンサルタントとして動き出す――。
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ここからは視点を変えて、第2回の「ヤバさ」を味わい尽くしましょう。
【心理フェチ視点】:「雪」と「火」のメタファーが熱い
この回の冒頭、ものすごい大雪なんですよ。外は極寒で純白の雪(世間の冷たさと貞操観念の象徴)。
でも家の中では、金蓮がガンガン炭をくべて灼熱のサウナ状態(欲情と不倫願望の象徴)を作ってる。
武松に拒絶されたあと、その「行き場のない熱(劣情)」が冷めないまま春になり、最終的に西門慶というガソリン引火して大爆発する構造が見事すぎます。環境設定がすでにエロい。
【運命論視点】:「風」がすべてを狂わせた
小説史上に残る「バタフライ・エフェクト」がこれです。
もしあの時、「風」が吹かなければ竿は落ちなかった。
竿が落ちなければ、西門慶は金蓮に気づかず素通りし、薬屋のおっさんとして一生を終えたはず。
そうすれば武大も死なず、金蓮も悲惨な死に方をせず、武松も人殺しにならなかった。
たった一吹きの風が、数多くの人間の人生を「NTRデスゲーム」に変えた瞬間。この理不尽な偶然こそが『金瓶梅』のリアリズム!
【キャラ解剖視点】:西門慶のスカウター能力
西門慶の「女を見る目」が異常です。一瞬竿が当たっただけで、怒り狂うどころか、金蓮の「足のサイズ(纏足の形)」「服の趣味」「漂うフェロモン」を0.5秒でスキャン完了してる。
普通の男なら「イテッ!」で終わるところを、「これは…いける案件だ」と瞬時に切り替える好色な本能。
彼がただの金持ちじゃなく、「女をハントすることに人生を賭けているプロのクズ」であることがわかる名シーンです。
【裏社会視点】:王婆という「フィクサー」
このババアが一番怖い。茶屋なんてのは仮の姿で、本業は「仲介屋」。
それもただの仲人じゃなくて、「妾の斡旋」「闇医者まがいのこと」「もめ事処理」までやる裏社会のマルチタレント。
西門慶が来た瞬間、「カモが来たな」と見抜いて、焦らしプレイで報酬を釣り上げる手腕。
「実力ある悪人同士が手を組むと、平凡な善人(武大)なんて一瞬で消される」という世の中の無慈悲な縮図がここにあります。
【この回のエモさ】
「拒絶」と「受容」のコントラストが最高にエモいです。
ガチムチ正義マン・武松には「お前は俺の姉ちゃんだぞ!」と氷のように冷たく拒絶され、プライドずたずたにされた金蓮。
その直後に、自分の失敗(竿落下)を「いや〜奥さん気にしないで(デレデレ)」と、全てを受け入れてくれたイケメンチャラ男・西門慶。
「真面目な正論」より「甘い誘惑」が勝っちゃう瞬間。
そりゃ金蓮、落ちるって!
これが地獄への入り口だとわかっていても、読者ですら「もう西門慶とくっついたほうが彼女も幸せなんじゃね…?」と錯覚させられる恐ろしさ。
次回、いよいよ王婆による「人妻を落とすための悪魔的10ステップ」が炸裂します。まじで教科書レベルの心理戦なので震えて待て!




