〇〇壱:西門慶、熱く十人の義兄弟を結び、武二郎、兄嫁に冷たく遇される
詩に曰く。
栄華の夢が過ぎ去れば、人の往来も絶え果て、
簫の音は止み、歌声は咽び泣く響きとなる。
雄々しき剣はその威を失って光を潜め、
宝の琴は砕け散り、綺羅星もまた輝きを失う。
玉の階は寂寞として秋露に濡れそぼち、
月はただ、かつて歌い舞った場所を虚しく照らすのみ。
あの華やかな人々は二度と帰らず、
今はただ、西陵の丘の灰土と化してしまった。
また、別の詩に曰く。
十六の乙女の肌は滑らかな乳酪のごとく、
されど腰に帯びたる剣は、愚かな男を斬り捨てる。
たとえ人の首が落ちるのが見えずとも、
知らぬ間に、その骨の髄まで枯らし尽くすのだ。
***
【呂祖の教えと、財と色の二つの魔】
この詩は、遥か昔、大唐の時代に精神を修め魂を磨き、聖人の域に達して凡俗を超越した一人の豪傑が詠んだものです。その名を呂岩、道号を純陽子といい、後には天上の宮殿にその座を占め、仙人たちの仲間入りを果たしたと伝えられています。彼は天上界に住まう仙人たちを率い、この世の苦界に喘ぐ人々を救った祖師として知られるお方です。
世の人は皆、利益のためにあくせくと駆け回り、慌ただしい一生を送りますが、結局のところ、「喜怒哀楽愛悪欲」という七つの感情と六つの欲望の関門から抜け出すことも、酒、色、財、気という四つのしがらみを断ち切ることもできません。誰もが同じく土に帰る結末を迎えるというのに、一体何を、それほどまでに大切にしているというのでしょうか。
そうは申しましても、この酒、色、財、気の四つの中で、とりわけ恐ろしいのが、財と色の二つでございます。その恐ろしさとは、いかなるものでしょうか。
たとえば、ある男が貧窮の淵に沈み、言いようのない寂しさと、些末な悩み事に苛まれているとします。夕暮れに米櫃を覗いても、明日の朝をしのぐ米すらありません。朝、かまどに火の気はなく、ただ恥ずかしさに身を縮めるばかり。妻や子が飢えと寒さに震え、己の身も凍え、粥さえ口にできない有様では、まして酒を買う余裕などあろうはずもありません。
さらに辛いのは、親戚や友人が向ける冷ややかな視線です。貧相な身なりでは、たとえ天を衝くほどの志を抱いていたとしても、その心はすり減るばかりで、誰かと張り合おうなどという気力も湧いてはこないでしょう。まさに、「ひとたび馬が死に金が尽きれば、肉親でさえも道で見知らぬ他人となる」という言葉の通りです。
ところが、ひとたび金を手にする時が来れば、どうでしょう。金を惜しげもなく使い、女の笑顔を買い、一夜にして巨万の富を投げ打つことも厭いません。飲む酒は瓊漿玉液と謳われる美酒となり、琥珀の杯が酌み交わされる様は、比べようもないほど華やかです。人と争おうとすれば、金は神さえも動かすと言われる通り、顎で人を使い、威張り散らすことができるのです。
権勢のある者には、人々が背を押し合い肩を並べて媚びへつらい、まるで腫れ物を吸い、おできを舐めるかのように付き従います。「勢いを得れば肩を並べてやって来るが、勢いを失えば袖を振って去って行く」とは、まさにこのことです。古今東西、これほど世知辛く、むごい話がありましょうか。こうした人々は、まさしく財というものの魔力に囚われていると言えるでしょう。
【色の魔力と西門慶】
次に、色の恐ろしさについて語りましょう。
今の世を見渡して、懐に美女を抱いても心が乱れなかった柳下恵、門を固く閉ざして女性を近づけなかった魯男子、夜通し蝋燭を灯して潔白を守った関雲長のような人物が、古今に一体何人いるでしょうか。多くの妻や妾を持ち、遊びに興じる者たちは、また別の話です。
好色な者たちの中には、少しでも美しい女を見かければ、あの手この手で情を通じようとします。そして、いったん女を手に入れたなら、ただ一瞬の快楽を貪るために、親族としての名分も、友人との信義も、一切を顧みなくなります。そのためにどれほどの無駄な金を使い、どれほどの酒食を費やしたことか。まさに、「三杯の酒が縁を結び、二杯の盃が色の仲立ちとなる」のです。
やがて情が深まり、事が露見すれば、争いを起こし、殺傷沙汰にまで発展することもあります。命を落とし、妻子を路頭に迷わせ、築き上げた事業も灰燼に帰してしまうのです。たとえば、石季倫は天を覆うほどの富豪でしたが、緑珠という妓女のために牢獄で命を終えました。楚の覇王、項羽は山を引き抜くほどの豪傑でしたが、虞美人のために垓下で自らの首を刎ねました。「我を生かす門は、我を死に至らしめる戸でもある。その真理を見破ろうとしても、耐え難い誘惑がある」とは、よく言ったものです。このような人々は、色の恐ろしさに囚われていると言えるのではないでしょうか。
語りはこのように続きますが、この財と色という二文字を、古来より真に見破ることのできた者はおりません。
もし見破れる者がいたならば、積み上げた金銀財宝も、棺桶の中へは持って行けない瓦礫や泥砂に過ぎないことが分かるでしょう。銭の紐が腐るほど金を持ち、穀物が腐るほど蓄えても、それは己の皮袋に詰め込みきれない、臭い汚物に過ぎないのです。壮麗な屋敷も、玉のように美しい建物も、墓の上に建てることはできません。錦の衣や刺繍の羽織、狐や貂の毛皮も、朽ち果てた骸骨を包むことはできないのです。
たとえば、妖艶な美女がみせる媚態も、その本質を見抜けば、戦場に臨む将軍の威風に過ぎません。紅を引いた唇、白い歯、袖で顔を隠して流し目を送る姿も、真に理解すれば、それは地獄の閻魔の御殿で、鬼や夜叉が威嚇しているのと同じことです。白い絹の靴下を履いた三寸ほどの小さな足も、墓穴を掘る鍬や鋤に他なりません。寝台での睦言や布団の中の情愛も、地獄の釜茹での苦しみと何ら変わりはないのです。
ただ、『金剛経』にある二句だけが、その真理を見事に説いています。
「夢、幻、泡、影のごとく、また電、露のごとし」と。
人の一生において、これらは何一つ欠かすことのできないものに見えますが、死を迎える時には、何一つとして役に立つものはありません。鼎を持ち上げ、舟を漕ぐほどの怪力があっても、最後には骨は脆くなり、筋は弛緩します。銅山や金谷を所有するほどの富豪であっても、やがて氷が溶け、雪が消えるように、すべては消え去るのです。月をも隠し、花をも恥じらわせるほどの美貌も、老いてしまえば、人々は鼻を覆って通り過ぎるでしょう。陸賈や隋何のような弁舌の才があっても、歯が抜け落ちれば、どうすることもできません。
むしろ、五感と意識を断ち切り、身を清め、袈裟をまとって、この世の空と色を悟り、生と死の理を打ち破り、最高の境地を目指すべきです。そうすれば、是非善悪の巣窟に堕ちることなく、かえって清らかで自由な境地を得て、火の海で苦しむような難を逃れることができるでしょう。まさに、「三寸の息があるうちは千の使い道があるが、無常の日が来れば、万事は休す」という言葉の通りです。
【清河の雄と十人の兄弟たち】
さて、語り手はなぜ、このように酒、色、財、気というものの因縁を長々と語ったのでしょうか。
それは、これから語る物語に登場するある一家が、かつては栄華を極めながらも、後に哀れな末路を辿ったからに他なりません。彼らが巡らせた権謀術数も、結局は何の役にも立たず、親戚も兄弟も、誰一人として頼りにはなりませんでした。わずか数年の栄華を享受しただけで、多くの人々の噂の的となり、その中には、寵愛を競い、姦淫を働き、媚を売った女たちがおりました。彼女たちは、初めこそ妖艶で美しかったものの、最後には、灯火の影に屍をさらし、がらんとした部屋で血を流すという運命から逃れることはできなかったのです。まさに、「善には善の報い、悪には悪の報い。天の網は広大で、目は粗く見えても、決して悪を見逃しはしない」のです。
話は、大宋の徽宗皇帝の御代、政和年間に遡ります。山東省東平府清河県に、一人の風流な若者がおりました。堂々たる体軀に洒脱な気性を持ち、そこそこの財産があり、年は二十六、七の頃。その男、姓は西門、名を慶と申します。
彼の父、西門達は、もとは四川や広東へ薬材を仕入れに行く商人でしたが、この清河県に大きな薬問屋を開きました。西門慶が住む家は、間口が五間、奥行きが七棟もある広大なもので、多くの召使いを抱え、馬や驢馬が群れをなしておりました。飛び抜けた大富豪とまではいかなくとも、清河県では裕福な家柄として知られていました。
しかし、父の西門達も母も早くに亡くなり、一人息子の西門慶は甘やかされて育ったため、学問には身を入れず、来る日も来る日も遊び呆けておりました。両親が亡くなってからは、もっぱら妓楼に入り浸り、色恋沙汰に明け暮れ、喧嘩に賭博、双六や象棋など、ありとあらゆる遊び事に精通していました。
彼が付き合う友人たちも、皆、お調子者やならず者ばかりでした。
その中でも最も親しいのが、応伯爵、字を光侯といいます。もとは絹物問屋の次男でしたが、商売に失敗して落ちぶれ、今ではもっぱら妓楼で遊びや酒宴の手伝いをして日銭を稼いでいました。そのため、人々は彼を「応花子」、つまり乞食の応と渾名していました。彼は蹴鞠の名手で、双六や象棋も得意でした。
二人目は謝希大、字を子純といい、清河衛という役所の武官の家柄でしたが、幼くして両親を亡くし、遊び惚けて家名を汚した、これまたごろつきの一人です。彼は琵琶を巧みに奏でました。
この二人が、西門慶とは特に馬が合いました。
その他にも、落ちぶれた者や名もない者たちがおりました。祝実念、孫天化、呉典恩、雲理守、常峙節、卜志道、そして白賚光です。この白賚光は、皆から名前の響きが悪いと言われていましたが、本人はこう説明していました。
「いや、私も変えようかと思ったのですが、ある先生が言うには、私の姓は『白』だから、昔の故事に『白い魚が周の武王の舟に飛び込んだ』という吉兆がある。また、書経にも『周には大いなる報いがあり、殷の湯王には光があった』という言葉がある。そこから取って、字を光湯としたのです。 この故事があるからこそ、私は名前を変えずにいるのです」
この総勢十数人の仲間たちは、西門慶が金持ちで気前が良いのを知って、彼の周りに集まり、博打や酒盛り、色事に明け暮れていました。まさに、「杯を交わす意気は深く、兄弟と呼び合う様は、実に親しげに見える。しかし、ひとたび事が起これば、その時の交わりこそが、真の心を映し出す」のです。
これほどの家柄に生まれながら、このような放蕩息子が育ち、しかもろくでもない友人たちと付き合っていては、いかに富があってもいずれは尽き、長続きするはずがありません。
しかし、西門慶が落ちぶれなかったのには理由がありました。彼は生まれつき気が強く、抜け目がなく、役人に金を貸して利子を取るような商売もしていました。さらに、朝廷で権勢を振るう高、楊、童、蔡という四人の奸臣にも、賄賂を贈って通じる道を持っていました。そのため、彼は県の公事にも口を挟み、人々の揉め事を金で解決するなどしていたので、県中の人々は彼を恐れていました。彼は仲間内で一番年上だったため、皆、彼を「西門の大旦那」と呼んでいました。
この西門の大旦那は、最初の妻である陳氏を早くに亡くし、一人娘の西門大姐がおりました。この娘は、都の八十万禁軍の提督である楊提督の縁者、陳洪の息子、陳敬済との縁談が決まっていましたが、まだ輿入れはしていませんでした。妻を亡くし、家を取り仕切る者がいなくなったため、彼は最近、清河左衛の呉千戸という武官の娘を後妻に迎えました。この呉氏は二十五、六歳で、八月十五日の生まれだったため、幼名を月姐といい、西門家に嫁いでからは、皆が月娘と呼ぶようになりました。この月娘は賢く、夫の意向には何でも従順でした。
彼の部屋には、以前から西門慶が手をつけていた下女が三、四人おりました。また、彼は妓楼の李嬌児とも深い仲だったため、彼女も家に迎え入れて二番目の妻としました。さらに、南街で色を売っていた卓二姐、名を卓丟児という女も、しばらく囲った後に家に迎え入れ、三番目の妻としました。しかし、この卓二姐は体が弱く、病気がちだったため、西門慶はまた外へ出て、新しい女を探していました。まさに、「東の家では美女に酔いしれ、西の隣家ではまた宴を開く。桃の花の下に憩い、牡丹が咲けば、また心を移す」といった具合でした。
【義兄弟の誓いと花子虚】
さて、ある日のこと。西門慶は家で呉月娘に向かって言いました。
「今日は九月二十五日だな。来月の三日は、俺の兄弟たちの集まりがある。その日は立派な酒席を二つ用意し、芸者を二人呼んで、うちで一日楽しくやれるように手配してくれ」
月娘は言いました。
「あなた、もうあの人たちの話はやめてください。あの中に、一体誰がまともな人間だというのですか。毎日あなたの周りをうろつく亡霊のようなものですよ。あの人たちと付き合い始めてから、この家が落ち着いたことなど一度もありません。それに、卓さんが病気なのですから、お酒も少しは控えたらいかがです」
西門慶は返しました。
「お前の言うことは大抵聞くが、今日ばかりは聞き捨てならんな。お前は兄弟たちを悪く言うが、いざという時、彼らは皆よく働いてくれる。特に謝子純は、気が利いて仕事ができる良い男だ。実はな、お前に相談があるんだ。ただ集まって飲むだけでは、どうにも実がない。いっそのこと、次の集まりで皆と義兄弟の誓いを立ててしまおうと思う。そうすれば、後々互いに頼りになるだろう」
月娘は口を挟みました。
「義兄弟の誓いも結構ですわ。ただ、後になって、あなたが彼らを頼ることよりも、彼らがあなたを頼ることの方が、ずっと多くなるでしょうね。もしあなたが人を頼るようなことになったら、それは操り人形が息切れして舞台に上がるようなものですよ」
西門慶は笑いました。
「いつまでも人から頼られる方が、かえって良いではないか。応の二番目が来たら、この話をしてみよう」
ちょうどその時、一人の小姓が入ってきました。眉目秀麗で利発な、西門慶の身の回りの世話をする玳安児という少年です。玳安児は進み出て言いました。
「応の二叔様と謝の大叔様が、旦那様にお目にかかりたいと仰せです」
「噂をすれば影、だな。二人揃って来るとは」
西門慶が広間へ行くと、応伯爵が新しい紗の帽子を被り、少し古びた空色の絹の上着を着て、上座に座っていました。その隣には謝希大がいます。西門慶の姿を見ると、二人は慌てて立ち上がり、挨拶をしました。
「兄貴、ご在宅でしたか。しばらくご無沙汰しておりました」
西門慶は二人を座らせ、茶を出すように命じると言いました。
「薄情な奴らめ。俺がこの数日、気分が乗らずに外出しなかったら、お前たちも顔ひとつ見せやしない」
伯爵は希大に顔を向け、「ほら見ろ、兄貴は絶対こう言うと思っていた」と囁くと、西門慶に向き直りました。
「兄貴の仰る通りです。自分でも、毎日何をそんなに忙しくしているのか分かりません。この二本の足が、この口の言い訳に追いつきませんよ」
「この二日、どこにいたんだ」と西門慶は尋ねました。
伯爵は答えました。
「昨日は、妓楼の李家で子供を見ておりました。兄貴の二番目の奥様(李嬌児)の姪御さんで、桂卿の妹の、桂姐児という娘ですがね。しばらく見ないうちに、それはもう見違えるような美少女になりまして。あれが一人前になったら、どうなることやら。昨日、母親が私に何度も頼むんですよ。『二旦那様、どうか良い殿方を見つけて、この子に水揚げをさせてやってください』と。明日にでも、兄貴のお眼鏡にかなうかもしれませんぜ」
「ほう、それは面白い。暇ができたら見に行ってみよう」
「兄貴、嘘じゃありませんよ。本当に綺麗な娘です」と謝希大が口を挟みました。
「昨日はそこにいたとして、一昨日はどこにいた」
「実は、先日、卜志道が亡くなりまして、皆で葬儀を手伝っておりました。彼の奥方が、兄貴からの香典と供え物に、大変感謝しておりました。ただ、家が狭く、夜には良い酒席も用意できないので、兄貴にお越しいただくのは忍びないと、恐縮しきりでしたよ」
「そうか。彼も長くはないと聞いていたが、まさかこんなに早く逝ってしまうとはな。この前、彼から純金の扇子をもらったばかりで、何か礼をしようと思っていたのに……」
謝希大はため息をつきました。「我ら十人の兄弟も、また一人欠けてしまった」そして伯爵に向かって言いました。「来月の三日は、また集まりの日だ。また大旦那様に費用を出してもらって、一日ぱっとやりましょう」
「実はな」と西門慶は切り出しました。「今しがた家内と話していたんだが、こうして集まって酒を飲むだけでは、どうにも実がない。いっそのこと、どこか寺院で誓いの文書をこしらえ、義兄弟の誓いを立ててしまおう。そうすれば、後々互いに助け合える。その日は、俺がいくらか銀子を出して供え物を揃えるが、兄弟たちも皆、少しずつ出してくれ。割り当てるというわけではないが、義兄弟の誓いは、各自が何かを出すことで、情も深まるというものだ」
伯爵はすぐに言いました。
「兄貴の仰る通り。婆さんが香を焚くのも、旦那が念仏を唱えるのも、それぞれ心尽くしです。ただ、我々一同、鼠の尻尾にできた腫れ物のようなもので、膿があったとしても、たかが知れておりますがね」
西門慶は笑いました。「このおどけ者め。大した金はいらんと言っているだろう」
謝希大が言いました。「義兄弟の契りを結ぶなら、十人揃わねばなりません。今、卜志道が欠けたので、誰を加えましょうか」
西門慶はしばらく考え、「うちの隣に住む花の二番目がいる。もとは花太監という宦官の甥で、金遣いが荒く、いつも妓楼に入り浸っている。彼の家の裏庭はうちと壁一つで、俺とは懇意にしている。彼を誘ってみてはどうだ」と言いました。
応伯爵は手を叩きました。「兄貴が妓楼で呉銀児を囲っているという、あの花子虚のことですかい」
「そうだ、その男だ」
「兄貴、早く彼を誘ってくださいよ。彼が加われば、また一杯ご馳走になれる酒の肴が増えますぜ」と伯爵は笑いました。
西門慶も笑って言いました。「この食いしん坊め。お前は食べることばかり考えているな」
笑い合った後、西門慶はすぐに玳安児を呼び、「隣の花様の家へ行き、『うちの主人が来月の三日に義兄弟の契りを結ぶので、二旦那様にもお集まりいただきたい』と伝えなさい。返事を聞いて、すぐに戻って報告せよ。もしご不在なら、奥様にお伝えしろ」と命じました。
玳安児が去ると、伯爵が尋ねました。「その日は、兄貴の家で集まりますか、それとも寺院が良いですか」
「この辺りの寺院は二つしかありません。仏教なら永福寺、道教なら玉皇廟です。どちらでも良いでしょう」と希大が言いました。
「義兄弟の契りは、仏門の管轄ではないし、永福寺の僧とは親しくない。玉皇廟の呉道官は俺と懇意だし、場所も広くて静かだ。そちらが良いだろう」と西門慶は答えました。
伯爵は口を挟みました。「兄貴がそう言うのは、もしかして永福寺の僧が謝の奥さんと仲が良いから、彼に推薦させようという魂胆じゃないですかい」
希大は笑って罵りました。「この欲張りめ。真面目な話をしているのに、すぐふざけたことを言う」
冗談を言い合っていると、玳安児が戻ってきました。
「旦那様はご不在でしたので、奥様にお話しました。奥様は大変お喜びで、『西門の旦那様がうちの主人を兄弟にしてくださるのなら、行かないわけがありません。帰りましたら必ず伝えます。期日には必ず参りますので、旦那様によろしくお伝えください』と。それから、私にお菓子を二つくださいました」
西門慶は応伯爵と謝希大に向かって言いました。「あの花の二番目の奥方は、本当に気が利いて器量も良い」
そう言いながら茶を飲み終えると、二人は立ち上がりました。「兄貴、これで失礼します。皆に知らせて、分担金を集めてきますので。兄貴は先に呉道官に話をつけておいてください」
「分かった。もう引き止めはしない」
三人は一緒に大門まで出ました。応伯爵は数歩歩いて引き返し、「その日は、芸者も呼びますかい」と尋ねました。
「いや、それはいい。兄弟だけで語り合う方が、かえって趣がある」
伯爵はそう言うと、謝希大と連れ立って去っていきました。
話は変わって、四、五日が過ぎ、十月一日になりました。
西門慶が朝早く起き、月娘の部屋に座っていると、髪を結い始めたばかりの小姓が、蒔絵の箱を持って入ってきました。小姓は西門慶に深々と頭を下げ、横に立って言いました。
「私は花の家の者です。うちの主人から、西門の旦那様によろしくとのことです。先日、旦那様がうちの主人をお招きくださいましたが、あいにく主人が出かけており、直接お礼が言えませんでした。お集まりが三日と伺いましたので、先にこの分担金をお届けいたします。どうぞよしなにお使いください。後日、不足分があれば、改めて主人の分を補います」
西門慶が封筒を見ると、表には「分資一両」と書かれていました。
「多すぎる。補う必要などない。当日は、ご主人に他所へは行かず、朝早く集まって皆で廟へ行くよう伝えてくれ」
小姓が立ち去ろうとすると、呉月娘が呼び止め、下女の玉簫に、菓子籠から蒸し菓子と果物の餡の菓子を二つ渡させました。
「これはお茶請けに。家に帰ったら、奥様に、西門の奥様が『近いうちに遊びに来てください』と言っていたと伝えてね」
小姓はそれを受け取り、再び頭を下げて去っていきました。
西門慶が花の家の小姓を送り出すと、今度は応伯爵の家の応宝が、やはり箱を抱えてやって来ました。玳安児が彼を案内し、応宝は挨拶の後、「うちの主人が皆の分担金を集めましたので、お届けに参りました」と言いました。
西門慶は中身を取り出すと、全部で八つの封筒がありました。封も切らずにすべて月娘に渡し、「これを預かって、明日の買い出しの足しにしてくれ」と言って、応宝を帰らせました。
西門慶が立ち上がり、卓二姐の部屋へ様子を見に行くと、玉簫が来て言いました。「奥様が旦那様とお話があるとのことです」
西門慶は奥の部屋へ行くと、月娘が紙包みを広げて、彼を指差して笑いました。
「この分担金を見てくださいな。応の二旦那のは銀子一銭二分八厘ですが、他のは三分とか五分とか。しかも赤やら黄色やらで、まるで金箔のよう。うちではこんな銀子、見たこともありませんわ。受け取るのも恥ずかしいですし、返したらどうです」
西門慶は言いました。「まあ、我慢しろ。放っておけ。足りない分は俺たちが出せばいい。気にするな」
次の日の二日、西門慶は銀子四両を使い、下男の来興児に、豚一頭、羊一頭、金華酒を数甕、香や紙銭、鶏や鴨などを買わせました。そして銀五銭を包み、古参の来保と玳安児、来興児の三人に命じました。
「これを玉皇廟に持って行き、呉師父に伝えるのだ。『うちの旦那が明日、義兄弟の誓いを立てるので、誓いの文書の作成をお願いしたい。夜にはここで宴を開くので、準備をお願いしたい。旦那は明日の朝、参上する』と」
やがて三日の朝、西門慶が身支度を終えると、玳安児に言いました。「隣の花の二旦那を招いて、うちで朝食を食べてから、皆で廟へ行こう。ついでに応の二叔の家へ行って、皆を急がせなさい」
玳安児が花子虚を連れて戻るや否や、応伯爵たち一行もやって来ました。先頭は応伯爵、謝希大、孫天化、祝念実、雲理守、呉典恩、常峙節、白賚光。これに西門慶と花子虚を加えて、ちょうど十人です。
門を入ると、皆で挨拶を交わし、朝食を済ませ、衣服を着替えて、玉皇廟へと向かいました。
しばらく行くと、廟門が見えてきました。それは雄大で荘厳な造りでした。
建物は険しくそびえ、塀は高く聳え立つ。正面には八の字型の壁門が築かれ、一帯は赤土色の朱泥で塗られている。中へ入れば、三本の参道が並び、四方は白い石が敷き詰められている。正殿は金と碧玉に輝き、両脇の廊下は軒が切り立っている。道教の最高神の荘厳な御像が中央に並び、老子は青い牛に背を預けて奥の殿に鎮座している。
第二の殿を過ぎ、脇の門を抜けると、呉道官の住まいでした。門をくぐると、両脇には美しい草花が咲き乱れ、蒼々とした松や青竹が植えられています。門柱には対聯が貼られていました。
『仙人の洞府には尽きぬ歳月あり、壺中の天には別世界あり』
呉道官が腰をかがめて出迎える中、一行は中へ入り、茶をいただきました。
白賚光は常峙節の手を引き、左側から見て回りました。馬元帥の像の前まで来ると、元帥は威風堂々とし、顔には三つの目が描かれていました。
白賚光は言いました。「兄貴、これはどういうことだ。今の世の中、片目を開いて片目を閉じているくらいがちょうどいいのに、さらに目を増やして人の粗探しをするとはな」
応伯爵がこれを聞いて近づき、「この馬鹿兄弟、彼に目が一つ多い方が、お前を見張るのに都合が良いのではないか」と言いました。皆がどっと笑いました。
常峙節は下座の温元帥を指差して言いました。「二哥、この全身青いのは、また変わっていますね。まさかあの盧杞という悪人の先祖ではあるまいな」
伯爵は笑いながら大声で言いました。「呉先生、こちらへ。面白い話がありますよ」
呉道官が近づくと、伯爵は話し始めました。
「ある道士が死んで閻魔大王に会った。閻魔が『お前は何者だ』と尋ねると、道士は『道士です』と答えた。調べさせると本当に道士で罪がないので、すぐに現世へ戻された。道士が戻る途中、知り合いの染物屋の番頭に出会った。番頭が『師父、どうして戻ってこられたのですか』と尋ねると、道士は『私は道士だから戻れたのだ』と答えた。番頭はそれを覚えていて、閻魔に会った時、『私も道士です』と答えた。閻魔が体を調べさせると、両手が青くなっていたので理由を尋ねると、番頭は朗々と答えた。『温元帥の腫れ物を掻いて差し上げたからです』」
この話に、また皆がどっと笑いました。
一団が右側に回ると、赤ら顔の関帝と、黒い顔の趙元帥が祀られており、その傍らには大きな虎が描かれていました。
白賚光が虎を指差して言いました。「兄貴、この虎は、まさか草食ではあるまいな。人間と一緒でも平気なのか」
伯爵は笑いました。「お前は知らないのか。この虎は、元帥の側仕えなのだ」
謝希大がこれを聞いて近づき、「あんな側仕えがいたら、私は一刻も耐えられない。食われてしまうのではないかと、恐ろしくて」と言いました。
伯爵は笑いながら西門慶に向かって言いました。「この子純がどうやって今まで生きてこられたのか、不思議ですな」
「どういうことだ」と西門慶は尋ねました。
「子純は、自分を食おうとする側仕えとは一緒にいられないと言う。それなのに、我々のような七、八人もの居候と一緒にいても平気な兄貴は、どういうことです。驚きもしないのですかい」
皆が大笑いしていると、呉道官が近づいてきました。
「皆様がこの虎の話をされていますが、この清河県では、この二日、本当に虎の被害が出ております。旅人が何人も食われ、猟師も十人ほどが犠牲になりました」
「どういうことだ」と西門慶は尋ねました。
「皆様はまだご存知ないでしょう。私の弟子が、先日、滄州の柴大官人のもとへ布施をいただきに行ったのですが、この清河県から滄州へ向かう道中に景陽岡という丘がありまして、そこに吊り目の白い額の虎が出没し、人を食らっているとのことです。今、県庁から五十両の賞金が出ていますが、なかなか捕まりません」
白賚光は飛び上がって言いました。「我々は今日、義兄弟の誓いを立てた。明日にも、我々であの虎を捕らえ、賞金を山分けしようじゃないか」
西門慶は言いました。「お前の命は惜しくないのか」
「銀子があれば、命などどうでもいい」と白賚光は笑いました。
皆が笑い出すと、応伯爵が言いました。「もう一つ、笑い話をしよう。ある男が虎に咥えられた。息子が刀を持って助けに行くと、男は虎の口の中で叫んだ。『息子よ、手加減して斬るのだぞ。虎の皮を傷つけたら値が下がる』」
この話に、皆が腹を抱えて大笑いしました。
その時、呉道官が供え物を整え、「皆様、そろそろ儀式を」と言いながら、誓いの文書を取り出しました。「文書はできましたが、どなたが長兄で、どなたが次兄か、順番を教えてくだされ。その順にお名前を書き入れます」
衆人は皆、「それは当然、西門の大旦那が長兄です」と言いました。
西門慶は、「いや、これは年功で決めるべきだ。応の二番目の方が私より年上だ。彼が長兄になるべきだ」と謙遜しました。
伯爵は舌を出して言いました。「旦那様、私を殺すおつもりですか。今の時世、財力や権勢で順番を決めるべきで、どうして年功など。それに、私が長兄になるのは二つ都合が悪い。第一に、大旦那ほどの威厳も徳もない。皆はあなたにこそ従います。第二に、私はもともと『応の二番目』と呼ばれている。今、長兄になれば『応の大哥』と呼ばれることになる。もし二人の男が来て、一人が『応の二番目』、もう一人が『応の大哥』と呼んだら、私はどちらに返事をしたらいいのですか」
西門慶は笑いました。「お前は本当にくだらないことばかり言う奴だ」
謝希大が言いました。「兄貴、もう辞退なさらずに」
西門慶は再三謙譲しましたが、一同に押し切られ、仕方なく長兄の座に就きました。二番目は応伯爵、三番目は謝希大、四番目は金持ちの花子虚となりました。
呉道官は文書を書き終えると、香を焚き、皆は順番に並びました。呉道官は誓いの文書を広げ、朗々と読み上げました。
「維、大宋国山東東平府清河県の信士、西門慶、応伯爵、謝希大、花子虚、孫天化、祝念実、雲理守、呉典恩、常峙節、白賚光らは、本日、手を清め香を焚き、神に請願申し上げます。
思うに、桃園の義は重く、我ら一同、その風に倣わんといたします。管鮑の交わりは深く、我ら異姓の者が、その志を共にせんと願います。
……願わくは、我ら兄弟、生まれた日は異なれども、死する時は同じであることを期し、この盟約が永遠に固くあることを願います。富貴になっても、貧しい友を忘れず、最後まで互いに寄り添うことができますように。……謹んで申し上げます」
呉道官が読み終えると、一同は神に拝礼し、互いに八回拝み合いました。儀式が終わり、福礼(お供え物)を下げると、すぐに宴の準備が始まりました。大きな椀、大きな皿に盛りつけられた二卓の料理が並べられ、西門慶が首席に座り、酒宴が始まりました。
酒が数巡し、皆が歌い、謎かけをし、賑やかに笑い合っていると、玳安児が西門慶の耳元で囁きました。
「奥様からお迎えが。三番目の奥様の具合が急に悪くなったので、早くお帰りくださいと」
西門慶はすぐに立ち上がり、「すまないが、三番目の妾の病が重いので、私は先に帰らせてもらう」と言いました。
花子虚も、「私も兄貴と同じ道なので、一緒に帰りましょう」と席を立ちました。
応伯爵が言いました。「あんたら金持ち二人が行ってしまったら、俺たちはどうなるんです。花の二番目はもう少し座っていなさい」
西門慶は言いました。「彼の家には誰もいない。二人一緒に行った方がいい。家内が彼の奥方に疑われるのも気の毒だ」
二人は呉道官に詫びを入れ、残りの者たちに手を上げて言いました。「皆はゆっくり遊んでいけ。我々はこれで」
そう言って門を出て馬に乗り、去っていきました。後に残されたのは、泰山をも噛み砕く勢いの、食い意地の張った連中ばかり。彼らは夜更けまで廟で酒を飲み続けたということです。
さて、西門慶が家に帰り、花子虚と別れて中へ入ると、呉月娘に尋ねました。
「卓二姐は、どうして気を失ったのだ」
月娘は言いました。「病人がいるというのに、あなたがまたあの連中とどこかへ行ってしまうのではないかと心配で、玳安児にあのように言わせたのです。ただ、日増しに病状は重くなっています。あなたは家にいて、彼女のそばにいてあげるべきですよ」
西門慶はこれを聞き、卓二姐の部屋へ行き、それから数日間、家で彼女の看病をしました。
【武松の打虎と兄嫁の誘惑】
時が経つのは早く、あっという間に十月も十日を過ぎました。
ある日、西門慶が医者を呼ぼうと広間に座っていると、応伯爵が笑いながら入って来ました。挨拶を交わし、座らせると、伯爵は言いました。
「兄貴、奥様の病状はいかがです」
「どうも、治りそうにない。どうしたものか」西門慶はため息をつき、尋ねました。「お前たちは先日、いつ頃帰ったのだ」
伯爵は言いました。「兄貴、当ててごらんなさい」
「食事は済ませたのだろう」
「当たりませんよ」と伯爵は口元を覆いました。
西門慶は笑いました。「このおどけ者め。まだならそう言えばいいものを」と言いながら、小姓を呼び、「食事を持ってこい。二叔と一緒に食べよう」と命じました。
伯爵は笑いました。「実は、食事は済ませてきました。それより、一つ珍しい話を聞いたので、兄貴に話しに来たのです。一緒に見に行きませんか」
「どんな珍しいことだ」
「先日、呉道官が言っていた景陽岡のあの大虎ですが、昨日、一人の男が素手で一晩がかりで殴り殺してしまったのです」
「また馬鹿なことを言う。信じられるか」
「兄貴、信じられないでしょうが、本当です。詳しく話しますよ」
そう言って、身振り手振りを交え、まるで自分がその場にいたかのように、またその猛虎を自分で倒したかのように語り始めました。その男は武松という名で、滄州に身を隠していたこと、兄を探して景陽岡を越えようとして虎に遭遇し、一晩中格闘の末に仕留めたという一部始終を、実に面白おかしく語るのでした。
話を聞き終えた西門慶は、首を振りながら言いました。「そうか。それなら、食事をしてから見に行こう」
「いや、兄貴、食事は後です。遅くなるといけない。大通りの酒楼で見物しましょう」
二人が通りへ出ると、謝希大に出くわしました。「兄貴たち、虎を見に行くのですか」
三人は連れ立って、通りに面した大きな酒楼に席を取りました。
しばらくすると、銅鑼と太鼓が鳴り響き、人々が一斉にざわめき始めました。槍を持った猟師たちが並んで進み、その後ろには、打ち殺された虎が、まるで美しい模様の入った袋のように、四人がかりで運ばれてきました。
最後尾の大きな白い馬の上には、一人の壮士が乗っていました。この男こそが、虎を退治した人物です。西門慶は指を噛みながら言いました。「これほどの男でなければ、千斤の水牛のような力を持つ虎を、びくともさせられまい」
三人は酒を飲みながら、その英雄譚に花を咲かせました。
さて、迎えられたこの壮士は、一体どのような姿をしていたのでしょうか。
その体躯は凛々しく、身の丈は七尺をゆうに超える。
顔立ちは角張り、年は二十四、五の頃か。
両目はまっすぐに前を見据え、遠くから見れば二つの明星のよう。
両の拳は固く握られ、近くで見れば一対の鉄の杵のようだ。
その足が動けば、深山の虎や豹も魂を失い、
その拳が振り下ろされれば、深い谷の熊や羆も息を呑む。
頭には万字模様の頭巾を被り、二輪の銀の花を挿している。
身には血の臭いが染みついた上着をまとい、赤い錦の布を羽織っている。
この男こそ、陽谷県の武二郎、武松その人でした。兄を探す旅の途中、思いがけず猛虎を退治し、その功績を知県(県の長官)に認められ、こうして迎え入れられたのです。
知県は武松の姿を見て、「これほどの男でなければ、この猛虎を打てようはずがない」と内心感心しました。知県は武松に賞金五十両を与えましたが、武松は「これは天のおかげ。私の力ではありません」と言って固辞し、その賞金をすべて、虎のために苦しめられていた猟師たちに分け与えました。
その仁徳と忠実さ、そして立派な人柄に感心した知県は、武松をこの県の巡捕都頭、つまり治安を司る役人の長に推挙しました。武松はひざまずいて感謝し、その日から都頭として働くことになりました。こうして武松の名は、この一帯に知れ渡ることとなったのです。
さて、ある日のこと、武松が街を歩いていると、背後から一人の男が叫びました。
「弟よ、知事様がお前を都頭にしてくれたというのに、どうして俺に挨拶に来ないのだ」
武松が振り返ると、その喜びが顔中に溢れ、思わず笑みがこぼれました。その男こそ、武松が日夜探していた実の兄、武大だったのです。
武大は弟と別れてから、飢饉を避けてこの清河県の紫石街に住んでいました。人々は、彼が気が弱く、背が低くみすぼらしい姿なのを見て、「三寸丁谷樹皮」、つまり、ちびで乾いた木の皮のような男、と渾名していました。彼はその渾名の通り、気が弱く朴訥で、よく人に利用されていました。
武大はこれといった生業もなく、天秤棒を担いで炊餅(蒸しパン)を売り歩いて日銭を稼いでいました。不幸にも妻を亡くし、十二歳になる娘の迎児と二人で暮らしていましたが、やがて元手を失い、大通りの張大戸という金持ちの家の部屋を借りて住むようになりました。張家の使用人たちは、彼の真面目な性格を気に入り、何かと世話を焼き、主人の張大戸も彼からは部屋代を取らなかったほどです。
【潘金蓮の美貌と誘惑】
さて、この張大戸は万貫の財産を持つ大金持ちでしたが、六十を過ぎても子宝に恵まれませんでした。妻の余氏は気性が激しく、家の中を厳しく取り締まっていたため、気の利いた下女の一人もおりませんでした。
ある日、張大戸が「私はこんな年になっても子供がいない。財産がいくらあっても、何になろう」と嘆くと、妻は、「それなら、私が下女を二人買ってあげましょう。早くから歌や楽器を習わせて、あなた様にお仕えさせますわ」と言いました。
張大戸は大いに喜び、しばらくして、妻は下女を二人買い入れました。一人は潘金蓮、もう一人は白玉蓮と名付けられました。
この潘金蓮は、南門外の仕立屋の娘で、六番目だったため六姐と呼ばれていました。幼い頃から人目を惹く美貌に恵まれ、特に一対の小さな纏足の足が美しかったことから、「金蓮」の名がつきました。父が亡くなり、母が生活に困窮したため、九歳で王招宣という役人の屋敷に売られ、歌や楽器、読み書きを習いました。彼女はもともと利発で、十二、三になる頃には、化粧を覚え、楽器を奏で、裁縫もこなし、文字も読めるようになっていました。
十五歳の時、王招宣が亡くなったため、母が彼女を取り戻し、今度は三十両の銀子で張大戸の家に売り渡したのです。張大戸は彼女たちに歌や楽器を習わせましたが、金蓮は元々心得があったので、習う必要もありませんでした。十八歳になる頃には、彼女は顔は桃の花のごとく、眉は新月のように細い、類まれな美女へと成長していました。張大戸は彼女を我が物にしようと常に狙っていましたが、妻の目が厳しく、手を出せずにいました。
ある日、妻が隣家の宴席で留守の間に、張大戸は密かに金蓮を部屋へ呼び入れ、ついに彼女を自分のものとしました。
しかし、この一件が知れると、妻の余氏は激怒し、数日間にわたって張大戸を罵り、金蓮をひどく虐げました。張大戸は妻が許さないと悟ると、意地になって、金蓮に嫁入り道具まで持たせ、ふさわしい嫁ぎ先を探し始めました。
そこで家の使用人たちが、武大が忠実で、妻もなく、ちょうど張家の部屋に住んでいることから、彼なら金蓮の夫にふさわしいと進言しました。張大戸は、いつでも金蓮の様子を近くで見られると考え、武大から一文の金も取らず、彼女を妻として嫁がせたのです。
しかし、金蓮が武大に嫁いでみると、彼のあまりのお人好しでみすぼらしい容姿に、ひどく嫌悪感を抱きました。彼女は常に夫に腹を立て、張大戸を恨みました。「この世に男は死に絶えたとでもいうのか。どうして私をこんな男に嫁がせたのか。この男、引っぱっても歩かず、叩けば退がるばかり。肝心な時には、錐のように役立たず。私は前世でどんな罪を犯して、こんな男と一緒になったのだろう。ああ、情けない」
彼女は人目がないところで、『山坡羊』という歌を口ずさみました。
「思い返せば、この縁は取り違い。あなたを立派な男と見誤った。
自惚れではないけれど、烏のようなこの男が、鳳凰である私と釣り合うはずがない。
私は土に埋もれた真の黄金。彼は安物の銅。どうして私の輝きと比べられよう。
彼はただの石ころ。羊の脂のようなこの玉の体を抱くほどの福が、どこにあろうか。
まるで糞土の上に霊芝が生えたよう。ああ、どうしようもない。私の心は満たされない。
聞くがいい。私は金の煉瓦。泥の土台とは、比べ物にもならないのだ」
読者の皆さん、お聞きください。世の女性というものは、自分に少しでも美貌と才気があれば、立派な男性に嫁ぎたいと願うものです。武大のような男では、いかに善良であっても、妻から憎まれるのも無理からぬことかもしれません。
武大は毎日、天秤棒を担いで炊餅を売りに出かけました。妻の金蓮は、夫を送り出すと、簾の下で瓜の種を噛みながら、自慢の一対の小さな足をわざと見せびらかし、町のごろつきどもを誘惑しました。彼らは毎日門前で、胡弓を弾き、詩を吟じ、「良い羊の肉が、どうして犬の口に落ちたのか」などと歌い、あらゆる手で彼女に言い寄りました。
そのため、武大は紫石街に住み続けることができなくなり、妻に引っ越しを相談しました。
妻は言いました。「この馬鹿。他人の部屋を借りているから、卑しい連中がうるさくするのよ。いっそ銀子を足して、良い家を借りて住めば、見栄えも良くなって、人に馬鹿にされることも減るでしょう」
「俺にどこにそんな金がある」
「ちぇっ! この役立たず。男のくせに、どうして何もできないの。金がないなら、私の簪や櫛を売りなさいよ。後で金ができたら、また買えばいいじゃないの」
武大は妻の言葉に従い、十数両の銀子をかき集め、県庁の門前にある二階建ての家を借りて住むことになりました。
そしてこの日、彼は思いがけず、実の弟に巡り会ったのです。兄弟の再会は、心からの喜びでした。
武大は弟を家に招き、二階の座敷に通すと、妻の金蓮を呼んで武松に会わせました。
「こいつが、景陽岡で虎を打ち殺した、お前の義理の弟だ。今は都頭になった。俺と同じ母から生まれた、実の弟だよ」
妻は手を組み、一歩進み出て言いました。「義弟さん、ようこそお越しくださいました」
武松は礼儀正しく、深く頭を下げて拝礼しようとしました。妻は武松を支えながら、「義弟さん、どうぞお立ちになって。私にそのようなご挨拶はもったいのうございます」と言いました。二人は辞退し合い、ようやく互いに頭を下げて挨拶を終えました。
しばらくして、娘の迎児がお茶を運びました。武松は、兄嫁が大変妖艶なことに気づき、ただ気まずそうに頭を低くするばかりでした。
やがて、武大が酒と料理を用意し、武松をもてなしました。
話の途中、武大が酒と肴を買いに階下へ降りて行くと、妻は一人、武松のそばに残って座りました。彼女は、武松の堂々たる体格と立派な顔立ち、そして虎を打ち殺すほどの力があることを思い、心の中で考えました。
「同じ母から生まれた兄弟なのに、どうしてうちの夫は、あんな木の切れ端のような男なのだろう。七分は人の姿をしていない。私は前世でどんな不運に見舞われ、あんな男と一緒になったのかしら。今、武松さんのようにこんなに立派な男がいる。どうして彼をうちに連れてきて住まわせない手があろうか。この縁を逃してはならない」
彼女は笑みを浮かべ、尋ねました。
「義弟さんは今、どちらにお住まいで。毎日のお食事はどなたが?」
「私は新しく都頭になりましたので、役所に詰めております。役所の前に下宿を借り、兵士に食事の世話をさせています」
「まあ、それはいけませんわ。どうしてうちに引っ越してこないのですか。兵士たちが作る食事など、汚くて食べられたものではないでしょう。一家で住めば、朝晩、汁物一つでも温かいものが食べられます。この私が、義弟さんのために食事を作って差し上げますわ。その方がずっと清潔でしょうに」
「それは、兄嫁様にはご迷惑を……」
「まさか、どこかに奥様がいらっしゃるとか。もしそうなら、一緒に連れてきて会わせてくださいな」
「いえ、私はまだ独り身です」
「義弟さんはおいくつですの」
「二十八になりました」
「まあ、私より三つもお兄様なのね。今回はどちらからいらしたの」
「滄州に一年余りおりました。兄がまさかこんな立派な家に引っ越しているとは、思いもよりませんでした」
「一言では言い尽くせませんわ。あの方に嫁いでからというもの、お兄様が優しすぎるので、人にいじめられてばかり。それでここへ越してきたのです。もし義弟さんのように雄々しい方なら、誰があえて文句など言えましょうか」
「兄は揉め事を起こさないので、兄嫁様もご心配がなくてよろしいでしょう」
妻は笑って言いました。「どうしてそう逆のことを仰るの。諺にもあるでしょう。『人は剛にあらざれば、身を立てて長く生きること能わず』と。私は生まれつき気が強いので、三度叩かれても振り返らず、四度叩かれても体を回すだけの男なんて、見ていられませんの」
武松はただ、「兄は揉め事を起こさないので、兄嫁様のご心配も減るでしょう」と繰り返すだけでした。
二人が二階で言葉を交わしていると、武大が肉や野菜を買って帰ってきました。妻を階下へ呼ぶと、彼女は答えました。
「この人は。義弟さんがいらっしゃるのに、誰もそばにいなくてどうするの」
武松は「兄嫁様はどうぞご自由に」と言いました。
妻は、「隣の王お婆さんを呼んで手伝ってもらえばいいじゃないの」と言い、武大は仕方なく、隣人を呼びに行きました。
やがて料理が整えられ、二階の食卓に並べられました。武大は妻を主人の席に、武松をその向かいに座らせ、自分は横に座りました。
妻は酒を手に取り、「義弟さん、お構いもできませんが、どうぞこの一杯を」と言いました。
武大がひたすら酒を注ぐ中、妻は笑顔を絶やさず、「義弟さん、どうして箸をつけないのですか」と声をかけ、良い肴を武松の皿に取り分けました。武松は真面目な性格なので、ただ兄嫁として彼女に接するだけでした。しかし、この妻はもともと下女の身から成り上がった女で、男に媚びることに慣れており、あの手この手で武松の心を誘おうとしているのでした。
妻は武松に数杯酒をすすめながら、その一対の瞳は、彼の体ばかりを見ていました。武松はその視線に耐えられず、ただうつむくばかりでした。
しばらくして酒宴が終わると、武松は席を立ちました。
「ご馳走様でした。また日を改めて伺います」
武大と妻は武松を階下まで見送りました。門の外へ出ると、妻が言いました。
「義弟さん、どうか真剣に考えて、うちに引っ越してきてください。もし来てくださらなければ、私たち夫婦が他人に笑われます。実の兄弟は他人とは違います。私たちのために、どうか面子を保ってくださいな」
武松は言いました。「兄嫁様がそこまで仰るなら、今晩にでも荷物をまとめて参ります」
妻は言いました。「ええ、ここで待っておりますわ」
目の前の野心に誰も気づかず、
いくつかの碧桃の花が、春に自ずと開くように
001:『金とエロは人生詰むぞ? 西門慶のパリピ生活と、武松への禁断のロックオン』
始まりました。みなの者、禁書ですよ、きんしょ・・・
【導入:説教タイム】
まず最初に言っとくけど、昔の仙人(呂祖)も言ってる。「酒・H・金・短気」は人生の落とし穴だからマジ気をつけて。特に「金(財)」と「色」はガチで沼。
金がないと親戚すら他人扱いしてくる世知辛い世の中だけど、金持ったら持ったで、権力振りかざして調子乗っちゃうじゃん?
色恋もそう。歴史上の英雄も美女に狂って自滅してるし、美人のフェロモンなんて、皮一枚めくれば骸骨だし、あの流し目も地獄の鬼の威嚇と一緒よ?……って悟りを開ければいいんだけど、凡人には無理ゲーだよね。ってことで、そんな欲望まみれで破滅した一家の話を始めようか。
【Part 1:西門慶と愉快な寄生虫たち】
舞台は宋の時代。主人公の西門慶(27歳)は、親の遺産で薬屋やってるイケメン金持ち。
こいつがマジでどうしようもないクズ。親が死んでからタガが外れて、女遊び・ギャンブル・喧嘩に明け暮れ、役人には賄賂渡して好き放題やってる地元のボス。
で、彼の周りには「応伯爵(あだ名は乞食)」とか「謝希大」とか、名前からしてふざけてる「白賚光(タダ飯食らい)」とか、総勢10人の取り巻きがいるんだけど、こいつらが全員、西門慶の金目当ての太鼓持ち(イエスマン)。
ある日、西門慶が「ただ飲むだけじゃエモくないから、俺たち義兄弟の契り結ばね?」とか言い出す。
金魚のフンたちは「ゴチになります!」とばかりに賛成。ついでに隣に住んでる金持ちの花子虚も仲間に入れて、お寺で盛大に儀式(という名の飲み会)を開催。神様に「俺たちズッ友だょ!」って誓うけど、西門慶の妾が病気になったからって途中で帰っちゃうし、残った連中は西門慶の金で朝までどんちゃん騒ぎ。この友情、絶対ペラい。
【Part 2:SSRキャラ・武松登場】
場面変わって、街が大騒ぎ。
なんと、人を食いまくってた伝説の猛虎を、素手でボコって倒した英雄が現れたらしい。それが武松。
身長2メートル超え、顔面最強、筋肉ムキムキのチートキャラ。西門慶も「こいつはヤベェ」とビビるレベル。
武松は県知事に気に入られて、その場のノリで警察署長的なポジション(都頭)に就任。人生イージーモード突入。
【Part 3:パン・キンレンの憂鬱とロックオン】
武松が街を歩いてると、「おーい弟よ!」と声をかけてくるチビで冴えないおっさんが。
なんとこれ、武松の実兄・武大。
武大は身長低いし気が弱いしで、あだ名は「三寸丁谷樹皮(枯れ木の皮のようなチビ)」。パン売りをして生計を立ててる非モテの極み。
でも、嫁がすごい。名前は潘金蓮。
元は金持ちの家の侍女だったけど、旦那に手を出されて奥バレし、嫌がらせで武大に押し付けられた超絶美女。
金蓮はずっと「なんで私がこんなチビと……前世で何の罪犯したん?」って病んでた。
そこに現れたのが、夫の弟・武松。
「え、待って。夫と同じ遺伝子とは思えない高身長イケメン来たんだけど(トゥンク)」
金蓮の乙女回路(と欲望)が爆発。
【結末:あざといお姉さん vs 鈍感な弟】
武大が武松を家に招いて飲み会スタート。
金蓮は夫をパシリに使って席を外させ、武松の隣をキープ。「彼氏いるの?」「私の方が年上ね♡」とかグイグイ攻める。
「夫は弱くて頼りないけど、貴方みたいな強い人が家に住んでくれたら安心だわ~(チラッ)」と、あざとく同居を提案。
真面目すぎる武松は、「兄嫁殿の言う通りっすね! 兄貴のためなら引っ越してきます!」と、下心に全く気づかず快諾。
金蓮、心の中でガッツポーズ。「やった、これで毎日イケメン拝めるしワンチャンあるで」。
欲望の歯車が狂い出したところで、次回へ続く!




