第七話 魔法学園での授業開始です
「ところでリディール様、つかぬことをお伺いしますが、なぜリリアーナ嬢とよく一緒にいらっしゃるのですか?」
律が訊いてきた。
あ、それ訊いちゃう?
「フォーカス殿の浮気相手と社交界では言われてますけど……」
「えっと……その……」
律が都合悪そうにゴニョゴニョ言っている。
まあ、ぱっとみそう見えるよね〜。
仕方ない。
私がなんとかしてやろうではないか。
くらえ!
私の必死な誤魔化し!!
「まあ、あれに関しては魅了魔法耐性のないフォーカスが悪いから!魅了耐性ある人なんてゴロゴロいるのにねー!参っちゃうよ!」
私が誤魔化すと、律は「無理あるだろ」という顔で私を見てきた。
「魅了に耐性がある奴がそのへんにゴロゴロいたらそれはそれで嫌なんだけど」
「リディール様は一体何を言っていらっしゃるんですか?」
やめて、その顔やめてよ。
私の渾身のボケをそんな顔で受け止めないで。
「逆に、アルデーヌ様とリディール様はどんな感じで出会ったんですか?」
「え?そう、あれは七年前のあの日、リディール様は俺が幽閉されていた塔に道場破りして入ってきたんです……。そして俺はリディール様に驚いて声も出ませんでしたが、リディール様は色々と俺を励ましてくれて……。俺の父をボコボコにして連れてきて、和解に協力してくれたんです」
「え……?」
律がドン引きしたような顔で私を見る。
いやいやいやいや。
「アルデーヌ、公爵をボコボコにした以外のところが曖昧すぎるよ」
「あ、ボコボコにはしたんだ」
「アルデーヌの第一声って『なんでそうなる。誰だお前は。服装からして使用人ではないな。俺になんのようだ』だったじゃん?声も出なかったなんて嘘じゃん」
「なんでそんなに鮮明に覚えてるんだよ。怖っ」
「あ、そうだった……じゃあ今のは俺の妄想……」
アルデーヌはしょんぼりとした顔で、自分の記憶が美化されすぎていたことに気づいたようだ。
結構美化されてたね。
噴水広場に着くと、朝の騒ぎの後片付けが済んだみたいで、噴水から水が穏やかに流れている。
交換所のテントがいくつか張られていて、生徒達が板を持って並んでいる。
Sクラスの列は短いけど、Bクラスの列は長蛇の列。
「Sクラスのリボンは赤いんだ。楽しみだな〜」
私は自分の板を握りしめて列に並んだ。
アルデーヌは私の後ろに付き従うように立ってる。
交換所の先生が板を受け取って、赤いリボンを渡してくれる。
Sクラスの証で、金糸の縁取りが豪華。
ネクタイは男子用で、アルデーヌが受け取ってる。
私はリボンを受け取ると、その場でカッターシャツの襟元に結んだ。
「似合ってますよ、リディール様」
「ありがとう。アルデーヌも似合ってるね」
アルデーヌもネクタイを結び終えたようで、赤いネクタイが彼の制服に映えている。
「じゃあ、私達は教室に行こうか」
「そうですね」
私達は律と別れて、Sクラスの教室へ向かった。
校舎の中は広々としていて、廊下の窓からは中庭が見える。
生徒達が楽しそうに話している姿が目に入る。
「Sクラスは……三階の一番奥ですね」
アルデーヌが案内板を見て教えてくれた。
私達は階段を上がって、三階の廊下を歩く。
一番奥の扉には「Sクラス」と書かれた札がかかっていた。
扉を開けると、既に何人かの生徒が席についている。
教室は広く、窓からは学園の敷地が一望できる。
「お、王女殿下!?」
「マジかよ、同じクラスなのか……」
生徒達がざわつき始めた。
やっぱりこうなるよね。
私は気にせず、空いてる席に向かった。
窓際の一番後ろの席が空いている。
「私はここにするけど、アルデーヌは仲のいい子のところ言ったいいよ」
「いえ、俺もここにしますよ」
「そう?」
アルデーヌは私の隣の席に座った。
私は鞄を机の横にかけて、窓の外を眺めた。
魔法学園の敷地は本当に広い。
訓練場や図書館、実習棟などが見える。
その時、教室の扉が開いた。
「皆さん、おはようございます」
入ってきたのは、三十代くらいの女性教師だった。
長い黒髪を後ろで一つに束ね、眼鏡をかけている。
「S組の担任のエルミナ・ホリ・コロサレルーゾです。今日から一年間、皆さんと一緒に過ごします」
コロサレルーゾ……?
あ!
コロスーゾ公爵家の親戚!!
横を見ると、あからさまに嫌そうな顔をしてるアルデーヌがいる。
「アルデーヌ、知り合い?」
「……ええ、まあ」
アルデーヌの声は普段より低く、明らかに不機嫌だ。
エルミナ先生は生徒達を見回しながら、出席簿を開いた。
その視線がアルデーヌに止まった瞬間、先生の表情が少し変わった気がした。
「では出席を取ります。名前を呼ばれたら返事をしてください」
先生は生徒の名前を呼び始めた。
あ、家柄順なんだね。
ってことは私達はかなり最後の方に呼ばれるんだろうな。
「アルデーヌ・テア・コロスーゾ」
「……はい」
アルデーヌの返事はいつもより小さかった。
本当にどういう関係なんだ。
エルミナ先生は少しの間アルデーヌを見つめていたけど、すぐに次の名前を呼び始めた。
「リディール・セア・メッチャツオイ」
「はい」
私が返事をすると、クラスの生徒達の視線が私に集中した。
エルミナ先生も私をじっと見つめている。
い、居心地悪い……。
「……王太女殿下がこのクラスにいらっしゃるとは。光栄です」
先生は軽く会釈をした。
出席が終わると、エルミナ先生が話し始めた。
「それではみなさん、これから一年間、このメンバーで魔法を学んでいきます。Sクラスは魔力量が多い生徒が集まっていますが、それは決して優れているという意味ではありません。魔力が多ければ多いほど、制御が難しくなります。暴走させないようにしっかりと基礎から学んでいきましょう。自己紹介は各々でやってください」
自己紹介は各々で?
まあ、その方が楽かも。
エルミナ先生が教科書を配り始めた。
「それでは最初の授業を始めます。今日は魔法の基礎について学びます」
魔法の基礎……。
私はもう知ってることばかりだけど、復習だと思って聞こう。
「教科書を配りますね。風の精霊よ、我が呼びかけに応えよ、ソフト・ジェントル・ウィンド」
先生が魔法を使って私達に教科書を配った。
おー、さすが教師。
コントロール上手いな。
「あれ?アルデーヌ、教科書届いてないの?」
「…………」
アルデーヌはうつむいて何も言わない。




