第六話 魔法学園の入学式が始まりました
「は?イモタレスゴイ家?」
「なんであんなに偉そうなんだよ。イモタレスゴイ家のくせに」
聞こえてくる内容がどこかおかしいのはさておいて、イモタレスゴイ家というのはもちろんメッチャツオイ王国の貴族の一つだ。
イモタレスゴイ家の爵位は男爵家。
最高指導者の家のものでもない、男爵家の嫡男ごときがなぜ壇上で偉そうにしているのか。
みんなはそう言っているのだ。
「私の家は男爵家です。しかし、この学校では爵位など関係ありません。王族、貴族、平民、全ての人が平等であるのがこの学園のルールです」
このルールは私が作ったものではなく、元からあったものだ。
「そして、この学園のクラスは魔力量によって分けられます。しかし、それは魔力の制御方法を自分達にあった形で学園が教えられるようにしているだけです。決してそれは優越によって分けられているわけではありません。この学園は実力主義です。身分やクラスで差別をするのは絶対にしないでください」
あ、過去に何かあったのね?
百パーセント何かあったような言い方をしてるな。
ここまで言われたら差別しようという人もいないだろう。
「みなさんが楽しく学園生活を過ごせるように、生徒会は全力を尽くしますので、提案などがある場合は遠慮なく生徒会室へ来てください。以上です」
生徒会長は綺麗な一礼をして壇上から降りた。
大きな拍手が起こる。
いやぁ、いい祝辞だったなぁ。
私この後に代表挨拶するの?
嫌すぎる。
「新入生代表からの挨拶です」
私は立ち上がって、壇上に上がる。
あ、意外と緊張しないな。
国民全員の前で演説した私には、もう怖いものは何もない。
私は華麗な一礼をした。
「みなさんごきげんよう。新入生代表のリディール・セア・メッチャツオイです。本日は大変天気もよく、入学にふさわしい日になって良かったです。先程生徒会長も言ったように、この学園は実力主義です。授業がハイレベルということもあり、置いていかれてしまう人もいるでしょう。そんな時は新入生同士助け合って、いい学年を作っていきましょう。以上です。ご清聴ありがとうございました」
私は一礼して壇上から降りた。
生徒会長の時と同じくらいの拍手が起こる。
よし、成功だ。
私が椅子に戻ると、生徒会長が少し会釈をしてきた。
私もそれに返して、席に座った。
その後、入学式は早々に終わった。
私はアルデーヌとリリアーナと合流しようと、二人を探した。
「あー!リディール様!さっき逃げましたね!!」
律とアルデーヌが私のところに来て、文句を言って来た。
あー、そういえばさっきいたな……。
ガッツリ忘れてたわ。
「逃げてないよ。リリアーナ、帰りに王宮によってもらっていい?」
「えー、いいですけど……」
あの話を聞いてもらおう。
いざとなったら魅了魔法で人物特定してもらおー。
魅了魔法で……。
ん?
ちょっと待って?
◇◆◇
ここでリディールとりりあの魔法に関すること講座ー!
「リリアーナは魅了魔法を八歳の時に使ってたよね?異端児として保護されなかったのはなんで?」
「この世界にとっての魔法は、精霊に力を借りて自分の魔力を放出することなの。神聖魔法や魅了魔法、洗脳魔法は魔法と言っているものの、普通の魔法とは違う。だから、リリアーナは異端児とは言われなかったの」
「神聖魔法?光魔法とは違うの?」
「光魔法は誰でも使えるけど、神聖魔法は大神官や大聖女しか扱えない特別なものよ」
「へぇ、知らなかった。勉強になったよ」
リディールとりりあの魔法に関すること講座ー!
終わり!
◇◆◇
なるほどなるほど。
「あ、そんなことより、二人ともクラス分けは見た?」
「まだですよ。アルデーヌ様がリディール様と見た――」
「あぁぁあああ!!リリアーナ嬢!余計なこと言わなくていいですから!!リディール様、お一人で見るよりもみんなで見たほうがいいと思っただけなので」
「え?あ、うん。アルデーヌは優しいね?」
「ぶふっ」
律がなぜかむせて、アルデーヌはなんかお通夜顔をしている。
え?
私なんかやらかした?
「あ、あなた……ここまで意識されてないとは……気の毒だわ……」
「リリアーナ嬢、俺も困っているので言わないでください……」
え?
え?
マジで何なのーー!?
◇◆◇
そんなこんなで私達はクラスが貼られている掲示板を見に行った。
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Sクラス
リディール・セア・メッチャツオイ
アルデーヌ・テア・コロスーゾ
Bクラス
リリアーナ・ルア・アタマカユイ
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あらー、律とは違うクラスかぁ。
私はSクラスの名簿をもう一度見直した。
うーん、セティルド様の名前はないな。
留学生の名前はいっぱいあるけど。
「チッ、だから僕は別で見るっつたのに」
律ー?
ヒロインとは思えない顔してるけど大丈夫ー?
「別に律だけ見ててくれても良かったけど……?」
「あいつに止められたんだよ。人数は多いほうがいいって。マジで殺してやろうかと思った」
怖っ。
そんな会話をしていると、アルデーヌが名前の板を取ってくれた。
名簿の名前は見た人から名前の板を引き抜いて、リボンやネクタイを配っている人のところに持っていくのが決まりだ。
「リディール様、どうぞ」
アルデーヌは私の板をまるで宝物のように差し出した。
「ありがとう、アルデーヌ」
私は自分の名前が書かれた板を受け取った。
木製の板には、私の名前が優雅な筆記体で刻まれている。
「リリアーナ嬢のです」
「わ〜!取ってきてくれたんですか〜!ありがとうございます〜!」
「ふぐっ」
ぶりっ子キャラは健在のようで。
私が思わず吹き出してしまったから、律が笑顔じゃない笑顔で私を見てくる。
だって面白いんだもん……。
「交換所は噴水広場にあるみたいですね」
「ああ、朝リディール様が爆破した」
「してないよ!!ていうかなんでそんな遠いところにあるのよ。ここでいいじゃん」
「混雑緩和のためだと思いますよ」
あー、そっか。
王立魔法学園には国内の貴族のほとんどが入学するし、平民も入学している上に留学生もいる。
ここで交換なんかしたらすごい混むもんね。
私達は噴水広場に向かった。




