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第五話  魔法学園の学園長はちょっとやばいです

フォーカスが目を丸くして駆け寄ってきた。

その後ろには、アルデーヌとリリアーナがいる。

あ、リリアーナの説明はまだだったね。

リリアーナ・ルア・アタマカユイは私の前世の義理の兄、雛田律の転生後!

男だった律が女に転生してるのは結構びっくりしたけど。

最初の方は私の婚約者だったフォーカスに魅了をかけて浮気させたりで大変だったけど、ずっとすれ違い続けていた実母、雛田小百合と仲直りをしたことによって心を入れ替えたんだ。

ちなみに私の義母である小百合さんもこの国の王妃として転生してるよ。


「いやぁ、ちょっと噴水の水が汚れてたから、掃除してたんだよ」


私がとぼけると、フォーカスは額に青筋を立てた。


「掃除で噴水を爆発させるやつがいるか!?」

「しかもそれ清掃員の仕事じゃない?」


リリアーナがフォーカスの言葉に同意するように、少し呆れたような顔で付け加えた。


「リディール様、入学式が始まります。これ以上、騒ぎを起こすのは……」


アルデーヌが心配そうに言った。


「分かってるよ、アルデーヌ。もう終わり。ね、リュミエール」

『ええ。もう大丈夫よ』


リュミエールは周囲の生徒たちに向けて、優雅に微笑んだ。

その笑顔は先ほどの極悪人スマイルとは打って変わって、まさに精霊王の姉にふさわしい慈愛に満ちたものだった。

私も同じように優しい微笑みを浮かべた。


「少し噴水に危険があったから対処させていただきました。危険はもうないのでご安心ください」

『リディール様、学園長に報告に行きましょう』

「そうですね。行きましょう」


私とリュミエールはあまりのいたたまれなさに大逃走。


「あ!逃げた!!」


フォーカスがなんかうるさいけど気にしない。


◇◆◇


「お、王女殿下が一体何のご用でしょうか……」

「学園長、ご多忙のところ申し訳ありません。王太女リディール・セア・メッチャツオイです」


私は優雅に一礼した。

リュミエールは私の後ろに控えている。

学園長は私の急な訪問に驚いているようだ。

ていうか学園長若っ。


「いえ、とんでもございません!本日はご入学おめでとうございます。それで、一体……」


学園長は未だに緊張した面持ちだ。


「実は先ほど、噴水広場にて魔力の異常を確認いたしました」


私は事態を穏便に収めるため、言葉を選んだ。


「魔力の異常、でございますか?」

「はい。どうやら、噴水広場を軸に魔力を吸い取る結界のようなものが張られていたようでして。私と私の契約精霊であるリュミエールがそれを発見し、安全な方法で解除いたしました」

『幸い大事には至りませんでしたが、もし放置していれば、学園の魔力バランスが崩れ、生徒達に悪影響を及ぼす可能性がありました』


リュミエールがもっともらしい説明を加える。

学園長はみるみるうちに青ざめていった。


「そんな、まさか……。この学園は代々、王家の魔術師によって守られてきたはず……。余計な結界などあるはずないです」

「ええ。ですから私も驚きました。おそらく誰かが悪戯で張ったものかと。その術式は、古の禁呪を模した非常に危険なものでした」


私はあえて()()という言葉を使い、学園側の責任を追及する意図がないことを示唆した。

まあ、生徒の管理がなっていない学園に問題があるとも言えるけど、悪意を持つ人間はかならずいるからな。


「なんてことだ……。王女殿下、そしてリュミエール様、ご英断に感謝いたします。すぐに、警備を強化させます」

「ありがとうございます。この件は国王陛下にも報告させていただきますが、問題ありませんよね?」

「はい。ぜひお伝え下さい」

「それでは、私は大講堂に行かせてもらいますね」

「あ、ちょっと待ってください!」


私とリュミエールは足を止めた。

まだ何か用があるのかな。

学園長はもじもじしている。


「リディール王女殿下!!実は!ずっと前からファンでした!!」

「…………ん!?」

「あ、握手してください!!」


私は差し出された手を見て固まってしまった。

え?

ファン?

ファンってあれかな?

有名人とかを応援するーみたいなアレ?

学園長が?

元王立魔導士団団長で、二十年前に魔物が大発生した際にほぼ一人で魔物を殲滅したと言う伝説がある人に、私が推されている?

嘘でしょ!?


「えっと、冗談ですか?」

「冗談な訳ありません!異端児差別問題や平民差別問題、さらには平民のための教育機関を作った方……!こんな魅力的な人なかなかいませんよ!!まさしく生ける伝説!!」


それはあなたも同じでは?

生ける伝説というのはあなたも同じでは?


「合法的にあなた様と会うことができるとは……!裏金を使う必要がなさそうで助かりました!!」


聞こえちゃいけない単語が……。

裏金……。

まあ、握手くらいならいいか。

私は手を握った。


「ふぁぁああああ!!初めて学園長になって良かったと思いましたよ……」


学園長は、私の手を両手で包み込み、感極まったように目を潤ませている。

その熱意に私はたじろいだ。


『リディール、早くしないと入学式に遅れるわよ』


リュミエールが私の背後から静かに、有無を言わせぬ圧力をかけてきた。


「あ、はい!学園長、それでは失礼いたしますね!」


私は学園長の手をそっと振りほどき、一目散に学園長室を飛び出した。


「ふぅ……危なかった。あのままいたら、サインまで求められそうだったよ」

『裏金という単語が気になったけれど、今は入学式が優先ね。それにしても、あの学園長、本当にあなたを慕っているようね』

「まさかあの伝説の人が私のファンだなんて……。人生何があるかわからないね」


私達は大講堂へと急いだ。


◇◆◇


なんとかギリギリ入学式には間に合った。

入学式の席は自由だ。

私は新入生代表の言葉があるから、専用の席が用意されている。

入学式の順番は前世とさほど変わりなかった。

開会式、国歌斉唱、校長式辞、来賓祝辞などなど。

かなりスムーズに進んでいった。


「続きまして、生徒会長によるお祝いの言葉です」


あ、そっか。

学園にも生徒会はあるもんね。

私の横に座っていた人が生徒会長だったらしい。

立ち上がったその人の顔は美形だった。


「新入生のみなさん、こんにちは。ご入学おめでとうございます。生徒会長のシリウス・ホゼ・イモタレスゴイです」


その名前が出た瞬間、新入生がざわつき始めた。

私は別の意味で内心ざわついていた。

まーたとんでもない名前の人が出てきたよ。

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