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第十二話 エルディーお兄様のことを教えてもらいます

お父様は肖像画を見て、静かに息を吐く。

リディールはお母様の膝の上で無邪気に笑い、幼いアルカお兄様が剣の玩具を握り、セラフィーお兄様が本を抱えておどけている。

お父様とお母様の姿は、穏やかで愛に満ちている。

でも、そこにエルディーお兄様の姿はない。

まるで、最初から存在しなかったかのように。


「この絵は、お前が生まれた直後に描かれたものだ」

「どうしてエルディーお兄様がいないんですか?」


お父様はゆっくりと振り向き、私の目を見る。


「エルディーは私の息子ではない」


エルディーお兄様がお父様の子じゃない……?


「あの子は私の姉の息子だ」


私は息を呑んだ。

お父様の姉……。

リディールの伯母に当たる人物。

メッチャツオイ王国の国王の姉は疾うの昔に亡くなっている。

それも、リディールが一歳のときに。


「知っているだろう?私の姉の家族の死は」


詳細は知らないけど、悲劇的な死を迎えたということだけは知っている。

国民達にも詳細は知らされていない。

おそらくは機密情報なのだろう。


「お前には話しておこう。エルディーがなぜあそこまで平民を嫌うのか。なぜ私達家族を嫌うのか。エルディーすら知らない、私の姉の死の真実を」


◇◆◇


すべてを聞き終わった時、私は初めて人を軽蔑し、初めて死んで当然だと思った。

お父様は私に頭を下げた。


「リディール、お前がエルディーを好いていないことは分かっている。分かったうえでこんなことを頼むのはおこがましいとは思う。でも、どうかエルディーを助けてやってくれ」


◇◆◇

――数日後


私は医者助手のふりをしてエルディーお兄様の部屋に行った。

認識阻害を使っているから、多分バレないはず。

私がそのまま行くと、お兄様に怪しまれる。

だから、警戒されないように助手のふりをして接触することになった。

お兄様はどうやら寝つきが悪いらしく、定期的に医者に診てもらっているようだった。


「うん、今回は問題なさそうだね」

「ありがとうございます」


私はエルディーお兄様がお礼を言ったことに酷く動揺してしまった。

お礼言えるんだ、この人。


「エルディー様、実はよく眠れるという薬が手に入りましてね」

「よく眠れる……?」

「最近、また眠れなくなっていますでしょう?」

「……色々ありまして」


医者とは仲がいいのだろうか。

なんだか気を許しているように見える。


「君、例の薬を出して」

「はい」


私は医者に薬の瓶を渡した。

ちなみにこの薬を作ったのは私だ。

回復薬に人を眠らせる魔法を大量に込めて作っているから、必ず寝るだろう。

なにせ、今回の作戦では眠ってもらわないと困るのだから。

医者は瓶から少しだけ液体を取り出して、飲むフリをした。

まあ、いわゆる毒味ってやつだ。

そして、瓶をエルディーお兄様に渡した。

お兄様は瓶の中の液体を躊躇いなく飲み干した。


「……結構効くやつだな……」

「そうでしょう?どうですか?」

「すごく……眠い……」


そして、お兄様はベッドに倒れた。

よし、成功だ。

私は医者に向き合った。


「ご協力感謝いたします」

「ああ、構わないよ。君がエルディー様を呪縛から解放してくれるんだろう?」


私は目を見開いた。


「気づいていらっしゃったんですか」

「ああ、私の祖先にも精霊がいてね。人の悪いところを見ることができるんだよ」


そっか。

精霊界との道が閉ざされる前、精霊と人間の恋愛は自由だったんだ。

ただ、精霊と人間は生きられる時間が違いすぎる。

永遠の命を持つ精霊と、限りある命を持つ人間。

人間を愛せば、愛した人が先にいなくなる。

だから精霊は人間と結婚して子を作ることはしなかった。

でも、それでも構わないという精霊は人間と結婚して祖先を残した。

その力は王家と同じようにように受け継がれる。

精霊の血を引く一般人と王家の違い。

それは、明らかに精霊の強さや魔力量にある。

ルミナス様は膨大な魔力を持っている。

しかし、普通の上位精霊は人間と同じくらいの魔力だ。


「彼は心に何かがある。八年前のあの日から……」


八年前……。

お父様に聞いていた年と同じだな。


「リディール王女殿下、エルディー様を頼みます」

「はい、任されました」


医者は荷物を持って部屋から出ていった。

さて、始めようか。

私はお兄様に布団をかけて、ベッドに座った。

そして、額に触れた。

あんまり詠唱したくないけど、やらないといけないんだよね……。


「我が呼びかけを聞きし微精霊達よ。我が呼びかけに応え、力を貸したまえ。我、リディール・セア・メッチャツオイをエルディー・ルザ・メッチャツオイに八年前、国境沿いで起きた悲劇を我らに見せよ」


言い終えると、私も猛烈な眠気に襲われた。


◇◆◇


目を覚ますと、私は王宮の庭園にいた。

体を起こして周りを見る。

私の知ってる庭園と一緒……。


「……うぅ……ここは……」

「あ、起きました?」


横に寝転がっていたエルディーお兄様の顔を覗き込んで、私は挨拶をした。

エルディーお兄様はしばらく固まった。


「うわぁぁあああああ!!」


声を上げながら後ずさって行った。


「どうしたんですか?」

「誰だ貴様は!どこだここは!!」

「誰だ!って私に言ってます?」

「お前以外にいないだろう」


はて、過去の様子を見せる以外に魔法の効果はないはずだけど……。

私は首を傾げた。

顔を傾けた拍子に黒い髪が目に入った。

これは……。

(りりあ)の髪の毛?

じゃあ、今の姿は雛田りりあってこと!?

あらー、そりゃ警戒するわな。


「驚かせてごめんなさい。私は雛田りりあ」

「ヒナタリリア?変わった名だな」

「うん。変わってるね」

「俺は……」

「大丈夫だよ。分かってるから。エルディーでしょ?」

「あ、ああ」


自己紹介を終えた時、ちょうど鐘の音が鳴り響いた。

のんびりはしていられない。


「ついてきて」


私はエルディーお兄様の手を引いて王宮の門へ急いだ。

エルディーお兄様は何が起きているのか分かっていなかった。

王宮の門の前には一台の馬車があり、そこには四人の人物が立っていた。


「よかった。間に合った」

「おい貴様。一体何を……」


エルディーお兄様は目の前の光景に息を呑んだ。

そう、ここは八年前の世界。

微精霊が見た記憶を見せてもらっているのだ。


「母上……」


エルディーお兄様は自分の両親を見てか細い声を出した。

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