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第八話  エルディーお兄様は兄弟を毛嫌いしています

「貴様、この俺にあんなこと言っていいと思っているのか?」

「ええ、思っています。私達は家族ですし、何よりエルディーお兄様よりも立場が上です」

「このっ――」

「エルディー」


お父様が怖い声色でエルディーお兄様を呼んだ。

その顔は明らかにブチギレている。


「お前の行動は度がすぎる。あとで話がある。執務室に来なさい」

「…………はい」

「リディール、下がりなさい」

「分かりました。失礼いたします」


私は専属メイドとして働いてくれているリュミエールを連れて、食堂を出た。

やれやれ、精神年齢お子ちゃまは本当にどうしようもないな。


『リディール、次からはクソカスを連れて行ってくれないかしら』

「え?どうして?」

『決まってるでしょう?イライラしすぎて魔法であのクソガキを吹き飛ばすかもしれないからよ』

「麗しい顔してえげつないこと言うね」


まあ、さっきの会食で後ろからの殺気がすごかったから、そんなことだろうとは思ったけど。

そうだとしても、クソカスは私が尻尾を切ったから強い力を持っているわけでもないしなぁ。

第一、この間までツンデレだったクソカスが、れーなを噛んで以降えげつない変化をしてしまった。

私は自室の扉を開けた。


『リディールだー!!』


元気よく私に駆け寄ってきたショタはクソカスである。

今まではすごい素っ気ない態度だったくせに、あれ以降私にデレデレなんだ。


「ただいま、クソカス」

『おかえり〜!』


どうやら、れーなの血を飲んだことで性格が変化したらしい。

しばらく眠っていたクソカスが目を覚ましてから様子がおかしかったから、王立図書館で竜の特性の本を読み漁って、たどり着いた結論がこれだ。


【竜は血を飲んだ相手の性格に寄る】


れーなは懐く人にはかなりデレデレする。

クソカスに懐かれてるって知れて嬉しかったけど、慣れないよぉ!!

ていうか何だよ。

血を飲んだ相手の性格に寄るって。

どこの世界のファンタジーだよ。

あ、この世界のファンタジーか。


「ごめんね、れーな。クソカスの監視なんて頼んじゃって」

「ううん、大丈夫。私としては仕事をもらえるのすごい嬉しいし」

「社畜が……」

「本当にこの世界に来れてよかった。だって衣食住ついている!その上給料がいい!何より美形がたくさん!こんな世界!最高すぎるでしょ〜!」

「そう、ならよかった」


本当にこの人は社畜になってるんだなぁ。

多分、私が死んだ後もずっと働いてたんだろうし。


「ところで、リュミエール様はどうしてそんなに」

『聞くまでもないでしょ?あのクソ男よ』

「あー」


れーなは呆れたような顔で声を上げた。

昨日、れーなは影として私の護衛についていた。

メイドに紛れていたから、誰も気づいてないと思うけど。

まあ、要はれーなもあの惨状を見ていたのだ。

私は椅子に座りながら言った。


「まあ、エルディーお兄様の言いたいことも分かるけどね」

「……?」

「だってさ、今まで王位継承権第一位だったのに、その座をぽっと出の妹に取られたんだもん。流石に怒るよ」


まあ、気持ちは分からんでもないからなんとも言えないけど……。

れーな達は不満そうな顔をしている。


『だとしてもあれは言い過ぎよ』

「何か他にも恨みがあるんじゃないかってくらいりりあを嫌ってるもんね。あと、他の兄弟も」


確かに、私だけを嫌っているなら納得だけど、アルカお兄様やセラフィーお兄様を嫌うのはなんでだろう。

単純に年下が嫌いとか?

分からん……。

みんなで考察をしていると、扉がノックされた。


「はい、どうぞ」


返事をすると、入ってきたのはセラフィーお兄様だった。

私は立ち上がって、お兄様に駆け寄った。


「何かありました?」

「あ……いや、父上が『話があるからリディールを呼んでくれ』って言ってきたから」

「そうですか。わざわざありがとうございます」


お兄様は用事を済ませたはずなのに、動かない。

不思議に思っているとお兄様は彷徨わせていた視線を私に向けた。


「俺が出来損ないじゃないって本当に思っていったのか?」

「え?」

「兄上に言っただろ?俺達の方が立派だって」


――アルカお兄様やセラフィーお兄様はそんなことしません。むしろお二人の方が立派です


あー、言ったな。

だって事実やん。


「もし、売り言葉に買い言葉なら、今正直に言って欲しい」


セラフィーお兄様はとことん自己肯定感が低いようで……。

仕方がない。

ずっとエルディーお兄様に出来損ないだと言われ続けてきたんだろうから。


「お兄様、私はあれを本音で言いました」

「……なぜ?病で伏せっていただけの俺が立派なわけないだろう」

「いいえ、民のために奔走することが立派だと言われがちですが、そうではありません。病に苦しみながらも、治そうと頑張っていたセラフィーお兄様は立派だと。私はそう思ったからです」

「…………」

「持病は治りましたか?」

「…………治った」

「よかった」


私が言うと、セラフィーお兄様は少し驚いた。

病気になって動けなくても、その人は出来損ないじゃない。

誰かのために動ける人だけが立派なわけじゃない。

自分のために生きようとする。

それこそ立派な人だと私は思ってるし、知っている。

だから、私はセラフィー・ゼア・メッチャツオイを出来損ないだとは思わない。


「行きましょうか。セラフィーお兄様」


そうだな。

この間まで空いていた心の距離が、少しだけ近づいたように感じた。


◇◆◇


お父様の執務室に行くと、もうすでにエルディーお兄様とアルカお兄様がいた。

エルディーお兄様に文句の一言や二言言われると思ってたけど、案外静かだな。


「お前達に集まってもらったのは他でもない。王位継承権の話だ」


その言葉に、エルディーお兄様の眉がピクリと動く。

アルカお兄様もセラフィーお兄様も、微動だにせずにいる。

王位には興味がないのだろう。


「リディールが王位継承権第一位なことに変わりはない。第二位以下も伝えておこうと思ってな」


お父様は机に置いてある一枚の紙を手に取った。

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