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第七話  リディールの兄達は仲が悪いようです

「兄上はリディが何をしたか知らないのですか?」

「知っている。しかし、周りが助けなければこいつは何もできなかっただろ?」

「リディが提案しなければこの国は変わりませんでした。周りが助けたとはいえ、提案者であるリディは評価されるべきです」

「妹に情が沸いたのか。やはり留学するべきではなかったか?無能なお前らだけ国に残したのは失敗だったか」


は?

何コイツ。

腹立つわ。

まるで自分は無能じゃないみたいに……。

……あっ、そっか。


「ふふっ」


私は堪えきれずに笑いをこぼしてしまった。

エルディーお兄様が私を睨みつける。


「何がおかしい?」


私は心の底からバカにしたような笑みを浮かべた。


「負け犬ほどよく吠える、とはこういうことなんだなと思って」

「貴様っ!!」


エルディーお兄様は怒りで顔を赤くして、手を振り上げた。

そして、私に向けて振り下ろした。

私は怯えることもせず、動くこともしなかった。


『第一王子殿下、少しおいたがすぎるのでは?』


エルディーお兄様の手を止めたのはリュミエールだった。

私の契約精霊がかっちょいい……。


「だ、誰だ貴様は!!」

『お初にお目にかかります。私は精霊王の姉であり、リディールの契約精霊のリュミエールです』


あれ?

リュミエールの報告は行ってないのかな。

エルディーお兄様の顔が酷いことになっている。

セラフィーお兄様も驚いたように目を丸くしている。


『精霊王とその妃からの寵愛を受けるリディールに手を上げるのがどういう意味か、分かっていますか?』


エルディーお兄様の顔がどんどん青ざめていく。

そして、お父様の方を向いた。


「父上!聞いていません!」

「言っていないからな」

「なっ!嵌めたのですか!?」

「帰ってくるなりリディールが立太した件について文句を言いまくって、執務室を後にしたお前にどのように話せばよかった?」


お父様の言葉に、エルディーお兄様はぐうの音も出ないようだった。

この王子、ことごとく態度が悪いな。


『ところで第一王子殿下。あなたは今、国の貴族に恥を晒していることを理解していますか?』


ハッとしたように顔を上げたエルディーお兄様は、周りを見渡した。

ヒソヒソと軽蔑したような目を向けながら、エルディーお兄様を見る貴族達。


「し、失礼する!」


エルディーお兄様は顔を真っ赤にして、私達に背を向けてどこかへ行った。

うわぁ、はっずかしっ。

自分が周りからどう見られてるか客観的に見れない可哀想な人すぎる。


『リディール、大丈夫?』

「うん、大丈夫。守ってくれてありがとう、リュミエール」


私が笑って言うと、リュミエールは嬉しそうに笑った。

アルカお兄様はいつものように明るい笑顔で私に抱きついてきた。


「リディ、あの煽りすっごいウザかったな!」

「煽ってるのか褒めてるのか分かりませんよ、お兄様」


エルディーお兄様といる時のお兄様、別人のように暗かったから、ちょっと心配だったんだよね。


「ところでリュミエール、どうして夜会にいるの?」

『あなたのお父様が「第一王子がリディールに何かするかもしれないからリディールを守ってくれ」って』


感が鋭すぎない?

案の定喧嘩売られてるし。

あれ?

そういえば第一王子は留学してたんだよね?

今日帰ってきたってことは……。


「お父様、もしかしてエルディーお兄様って……」

「留学を終えて帰ってきている。苦労をかけるかもしれないが……」


ですよねぇぇぇえええ!!

セラフィーお兄様もアルカお兄様もため息をついている。

あの人嫌われすぎてない?

私も嫌いだけど。


「アルカ、エルディー兄さんがまたリディールに何か言ってくるかもしれない。できるだけリディールと行動してくれ」


セラフィーお兄様がそう言った。

あれ?

セラフィーお兄様も嫌なやつかと思ってたけど、そうでもない?


「セラフィー、リディールが心配なら本人に言ってやってくれないか?」

「……ふん、私は面倒ごとが嫌いなだけだ。妹が心配なわけではない」


嫌なやつだった。

私、アルカお兄様以外のお兄様達嫌いかも。

お父様が心配そうな顔をする。

仲良くできるのかな……。


「あー!リディール!遅かったな!」

「おい!もう少し落ち着きを持てよ!フォーカス殿!」

「お二人共、少しは落ち着いてくださいよ!」


フォーカス達と交流した私は、その後の夜会を満喫したのであった。


◇◆◇

――翌日 昼


私の前には、盛大に舌打ちするエルディーお兄様がいた。


「なぜこんなところに出来損ないが三人もいるんだ。飯が不味くなるだろ」


昨日の今日で性格が良くなる。

なんて夢みたいな話はなく、口が悪く性格も悪い最低男は、またしても私達のことをバカにしてきたのだ。

なんでお父様とお母様はこれを叱らないんだろう。

誰一人お兄様の罵声に耳を傾けることなく、昼食を食べ進めた。


「おい、出来損ない。聞いているのか?」

「…………」

「お前に言っているんだよ。お飾りの王太女」


一体何様なのかと訊きたくなるようなデカい態度に、かなり腹が立つ。

しかし、王太女は私しかいないから、返事をしないわけにはいかない。


「私に言っていらしたのですね」

「お前以外に誰がいる?」

「申し訳ありません。私は自分のことを出来損ないだと思っていないので、エルディーお兄様の言う『出来損ない』が誰のことかわからなかったのです」

「ああ、確かにそうだな。出来損ないはお前の他に二人いたな」


その言葉に、セラフィーお兄様が反応する。

そして、うつむいて唇を噛みしめる。

なぜ堂々としないのだろうと疑問に思った。

でも、そんな疑問はすぐに消え去った

……そういうことか。


「自分の価値観だけで人を出来損ない呼ばわりするのは、一国の王子としてどうなんですか?私にはそんなエルディーお兄様が出来損ないのように思えます」

「なに?」

「アルカお兄様やセルフィーお兄様はそんなことしません。むしろお二人の方が立派です」


エルディーお兄様の顔がどんどん赤くなっていく。

キレやすい人だな。

私は食べ終わったから席を立った。


「ごちそうさまでした」

「待てっ!」


私が扉に向かう途中で、エルディーお兄様が声を上げた。

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