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第六話  リディールの兄はどうやら他にもいるようです

「あれ〜?アルデーヌ殿〜??そんなにやつれてどうされたんですかぁ??」


フォーカスが非常に性格悪そうな顔でアルデーヌに訊いた。

悪意あるだろこの顔。

ほら、セティルド様とアカルス様がドン引いてるよ。


「フォーカス殿、リリアーナ嬢とダンスを踊ったことがあるか?」

「え?どうだろう。魅了魔法使われてたから記憶が曖昧なんだよな」


精神操作魔法はその名の通り精神を操作するものだ。

本人の意思とは全く別の行動をしてしまうため、精神操作されている間の記憶はかなり曖昧になってしまう。

魅了魔法は精神操作の一種であるため、記憶が曖昧になるのは当たり前なのだ。


「なんだ残念。リリアーナ嬢、また今度フォーカス殿とも踊ってやってくれ」

「いいですよ」


フォーカスが終わったという顔をする。

何かは分からないけど、非常に嫌な予感がするんだろう。


「そんなことよりお二人共、ここに長居は良くないですよ!他国の王子殿下やリディール様のお話を邪魔しちゃいけません!」

「あ、確かに」

「あなたはそんなことも考えてなかったのですか?」

「うるさいぞ、アルデーヌ殿。リディール、俺達はここで一旦退散する。会場に戻ってきたらすぐに声をかけてくれ」


そう言って、みんなは会場に戻って行った。

私も早く戻りたいよぉ……。

そんなことを考えていると、セティルド様が口を開いた


「驚いたな。フォーカスがあんな顔するとは……」

「え?フォーカスって鉄仮面系男子じゃないですよね?」

「なんだ鉄仮面系男子って」


アカルス様がツッコミを入れる。

説明しよう!

鉄仮面系男子とは、表情筋が死んでいる男子のことである!


「私といる時は不機嫌な顔しかしなかったのに……」

「それはセティルド様がセコいことして、あ逆の果てにはフォーカスをチェスでボコしたからじゃないんですか?」

「そこまで確信を突かれると何も言えないですね」


セティルド様はまるでそんなこと分かっていたかのように笑った。


「リディール王女、この国はいい国だな」


会場に戻って行ったフォーカス達の様子を遠目で見ていたアカルス様が私にそう言ってきた。

私に貿易を許可する権利とかはないぞ。

まあ、こういうのにはちゃんと返すべきだよね。


「ありがとうございます。我が国の貴族は善人ばかりで、あたたかい国であることは自負しております」


前は性根が腐ったクソ野郎がいっぱいいたけど、最近は心を入れ替えてピュアな気持ちで過ごしてくれているから、メッチャツオイ王国はあたたかい国となりつつある。


「我が国では貴族の令息があのように言い合うことはない。心の内を曝け出すのは騎士の恥と言われているからな」

「確かにそうですね。我が国でも感情を顔に出すのはタブーですから、そういった点でもメッチャツオイ王国は魅力的なのでしょうね」


いや、ただただ法律やマナーがゆるいだけだと思います。

ていうかなんだよ。

感情を表に出すのがタブーって。


「これからの留学生活が楽しくなりそうだ。な、セティルド」

「そうですね。期待値が上がりました」

「お褒めに預かり光栄です。アカルス・ギルモノ・メチャヘイト様、セティルド・エル・シシュナ様。魔法学園卒業までの短い期間になりますが、我が国をお楽しみください」


私が言うと、二人は笑顔で頷いてくれた。

そして、「よろしく」と硬い握手を交わした。


◇◆◇


その後、私は二人と別れて会場に戻った。

フォーカス達を探しながら、ついでにお兄様も探した。

お兄様は私が王太女になったことをまだ知らない。

タイミング悪く、その週にお兄様は友人と別荘に行っていたのだ。

昨日の夜には帰っているはずだけど……。


「お父様様!」


私はお父様を発見した。


「リディール、どうした?」

「お兄様とフォーカスを探しているのですが……」

「フォーカス?アルデーヌはどうした?」

「一緒だと思いますよ。他国の王子と話していたので、気を遣って離れてくれたんです」

「そうか」


…………下手な言い方するとめんどくさいからな。

言えないよ。

アルデーヌとリリアーナを踊らせてフォーカスと一緒にいたなんて。


「アルデーヌとリリアーナが踊っていたらしいが?」


バレてました。

私はガッツリ目を逸らして、別の話題を探す。

お父様は呆れたようにため息をついた。


「探している兄はアルカでいいのか?」

「え?他に誰かいました?」


私が言うと、お父様は「は?」と言う顔をした。

え?

リディールの記憶にアルカ以外に兄弟いないよ?


「そうか、お前はもう覚えていないか」


その時ちょうど王族が入場するところの扉が開かれた。

そこに立っているのはお兄様と、見知らぬ男性。


「最後にあったのが赤ん坊の時だったから、覚えていないのは仕方がない。この国の王子はアルカ一人ではない」

「え?」

「エルディー・ルザ・メッチャツオイ第一王子殿下、セラフィー・ゼア・メッチャツオイ第二王子殿下、アルカ・ミヤ・メッチャツオイ第三王子殿下がいらっしゃいました!」


衛兵が会場に響き渡るくらいの大声でそう言った。

き、今日だけで四人も知らない人が増えたぁ……。


「あの、お父様?エルディーお兄様とセラフィーお兄様は今までいったいどこに?」

「エルディーは国外に留学していた。セラフィーは持病の治療をしていたんだ」


ああ、どうりで王宮にもいねぇわけだ。

お兄様達は私とお父様を見るなり、まっくずこちらへ向かってきた。


「リディ、立太おめでとう」

「アルカお兄様、私を恨んではいないのですか?」

「ん?どうしてリディを恨むんだ?」

「だって、私が昔のままだったら、きっとお兄様達の誰かが王位継承権第一位に……」

「そんなこと思ってないよ。俺はリディがやったことは素晴らしいことだと思うし、これは正当な評価だ。気に負う必要はない」


お兄様が私の頭を撫でる。

ああ、やっぱりアルカは優しいな。

優しく頭を撫でてくれるお兄様の手を、誰かが掴んだ。


「アルカ、甘すぎるぞ。一体全体父上は何を考えているんだ。俺達を差し置いて本来ならば王位継承権第四位になるはずのガキを王太女にするとは。なあ、出来損ないのセラフィー?」

「別に……。私は気にしません。それに、父上が決めたことにあなたがケチつける権利はありません」


あれ?

あれあれあれ?

もしかしてこれ、兄弟仲悪い?

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