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第三話  リディールの決意と私の決断

「……」


私は今アニメなどでよく見るなにもない世界にいる。

しかも中学生のりりあの姿で。

まさか私もここに来ることになるなんて。

そういえば、ここは物語が進むイベントスポットだよね?


「なら、私にもなにか大事なイベントが――」

「よく分かったね」


背後から声が聞こえて、私は振り向いた。

そこにはリディールがいた。


「……始めまして」

「…………」

「…………」

「で……」

「で?」

「出たぁぁぁぁあああああ!!」


リディールは私が出した大声に驚き、耳をふさいだ。

え?

リディール?

本物のリディール・セア・メッチャツオイ?

私はリディールに目線を合わせるために、膝をついた。

そして、感極まってリディールを抱きしめてしまった。


「会いたかったぁぁああ!!」

「え?え?」

「ずっと会いたかったんだよ?話がしたかったんだよ?なんで来てくれないの?」

「…………私が来ても、別になにか起きるわけでもないし……」


自信なさげに言うリディールは可愛い。


「何かは起こったよ」

「……?」

「私が嬉しくなった」


私がニヤリと笑うと、リディールは呆れたように笑った。

私はリディールの手を取った。

いる。

ここにリディールが……。


「りりあ、私はあなたと融合したくて、ここに来たの」

「融合って、お母さんや律が王妃様とリリアーナと一つになったやつと同じやつだよね?リディールはそれでいいの?」


私はリディールに訊いた。

リディールが今まで私の前に姿を表さなかったのは、きっと私と融合するのが嫌なんだと思ってた。

もし、私がリディールの感情を欲していることに気を使っているのだとしたら……。


「リディール、私はどうしてもリディールの感情が欲しいわけじゃ――」

「りりあ、これは私のわがままよ」


リディールは私の頬を両手で包んだ。


「私があなたと融合すれば、きっと私の感情があなたに与えられる。今までにあなたが感じることができなかった、私の感情がね」

「……それは、記憶の中の感情も?」


リディールはうなずいた。

その顔は何かに怯えている。


「りりあ、私の記憶の中にあるはずの感情はね、すごくすごく痛いものばかりなの。優しいあなたはきっと傷ついてしまう。どうしても嫌なら、私はこのまま消える。だから――」


私はまたリディールを抱きしめていた。

どうしてそんな事を言うんだろう。


「一人で抱え込まないでよ」

「……っ」

「私はね、リディールの感情がどれだけ悲惨であっても構わない。あなたが今まで一人で抱えてきた苦しみ、半分分けてよ。消えるなんて言わないで」


言い終わってから、私は腕に力を入れて、リディールを強く抱きしめた。

肩にリディールの涙が落ちてくる。


「一緒に生きよう。リディール」

「……うん!」


◇◆◇


私は目を覚まして、今まで感じなかったものを感じた。

空白が埋まっているような。

そんな感覚。

記憶に感情がある。

私の中に、リディールはちゃんといるんだね。

リディールは私に向き合ってくれた。

私は自分一人で着れる服を着て、部屋を飛び出した。

そして、私はお父様の部屋の扉を乱暴に開いた。

お父様は驚き、ベッドから落ちた。


「お父様!!」

「リ、リディール!?何事だ!?」

「引き受けます!立太女の話!!」


お父様はベッドから転がり落ちた体勢のまま、目を丸くして私を見上げた。

普段の威厳ある国王の顔が珍しく間抜けで、思わず笑いが込み上げてくる。


「リディール、お前……本気か?あんなに嫌がっていたのに……?」


お父様は体を起こし、ベッドの端に腰を下ろした。


「本気です。私……()()でこの国を守りたいんです。異端児の子供達も、平民も、精霊界のみんなも、みんなが笑える世界を作っていきたいんです!」


言葉が自然と溢れ出る。

リディールの感情が私の言葉に力を与えてくれる。

お父様は一瞬言葉を失ったように黙り込み、それからゆっくりと立ち上がった。

そして、私の前に来てそっと頭を撫でた。


「リディール……お前は変わったな。いや、成長したんだ。俺はお前の覚悟を受け止める。正式に王太女に任命しよう」

「はい!任せてください!」


◇◆◇


こうして、私は晴れて、メッチャツオイ王国の第一王女から、王位継承権第一位の王太女となった。

そこからは忙しく、国民に精霊界との断絶が終わったことと、私が王太女になったことを発表したり、祝いに来た貴族達への対応。

これが約半月続いた。

それにより、私はかなりくたびれていた。


「王女殿下、お疲れですね」

「まあね。まさか私もこんなに忙しくなるとは思ってなかった」


私は今、王家主催の夜会に出席している。

エスコート役のアルデーヌが心配して声をかけてきた。


「それより、今回もエスコート役をお願いしちゃってごめんね」

「い、いえ。お構いなく。それに、俺も……う、うれっ……。うどんと言う食べ物が異国にあるらしいですよ!!」


うどん?

この世界にもあるの?

あるなら食べてみたいなぁ。


「あ、あの」

「ん?」

「その……リディール王女殿下をエスコートできるのは、俺にとってごほう――」

「リディール!!」


アルデーヌの言葉を遮って、誰かが私に声をかけてきた。

声の主はフォーカスだった。


「あら、フォーカス。いい夜ね」

「そういうのいいから。王太女になったってマジか?」

「大マジだよ。あなたも聞いてたじゃない。皮肉で言ってるなら殴るわよ」

「あー、怖い。殴られるのはもうゴメンだな」

「でしょうね」


フォーカスは婚約解消をした後、オレサイキョー公爵にぶん殴られていた。

あの痛々しい頬は今でも思い出すだけで同情する。


「平民差別はどうなった?」


私はフォーカスに訊いた。

今のフォーカスは平民として生きている。

王女の婚約者という立場でありながら浮気をして、私から婚約破棄を突きつけた。

それに激怒したオレサイキョー公爵はフォーカスを殴って勘当したんだ。

でも、少し前にファーカスに手伝ってもらって、平民差別を緩和するために参加させてもらった最高指導者会議で家に戻ることを提案された。

でも、フォーカスはそれを断り、平民として生きることを決意した。

そして必要な時にはオレサイキョー公爵家の息子として、オレサイキョー公爵と行動することが特例で許可されたのだ。

だから、今日の夜会も参加できている。


「ここじゃなくてバルコニーに行こう。表向きでは公爵家に戻ったことになってるわけだし」

「あ、そうだね」

「えっと……」


フォーカスがアルデーヌを見て考え込んでいる。


「アルデーヌ・テア・コロスーゾです」

「ああ、君があのアルデーヌか」


あ、二人は初対面なんだ。

それなら名前も知らないのも納得だな。


「アルデーヌ殿、申し訳ないが席を外してもらえないか?」

「なぜですか?」


あれ?

なんだろう。

二人の間に火花が散っているような……。

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