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第八話  精霊界の命の宿り木の葉を食べたら大変なことになりました

そのまま?

これを?

いや、桜餅の葉とか食べるしいけるか?

そもそも人間に害はないんだよな?

うわぁ、アルデーヌがいれば「食べるべき?」って訊いてたのにぃ!

帰ってきてすぐに鍛錬に行っちゃったんだよね。

やむを得ない。

私は机の上に置いていた命の宿木の葉を口に押し込んだ。

口の中で死ぬほど苦い葉を噛み、強引に飲み込む。


「にっがぁい!!」

『あ、リディール。その葉を食べると魔力が一時的に増えて、体から溢れ出すから気をつけてね』

「え?なにを?」

『クソカスに』

「は?」


私はクソカスの方を見た。

クソカスは出会った時くらいの大きさになっている。

部屋が半壊してるのは置いておいて……。


「なんかデカくなってるんですけどぉぉおお!?」

『当たり前よ。竜は魔力量によって体の大きさを保っているの。契約している竜は契約者と魔力を共有しているから、契約者の魔力が大幅に増加すれば、クソカスの体も大きくなるわよね』

「それを先に言わんかい!!」


クソカスは口を開けて息を吐いた。

ものすごい量のよだれが床に落ちる。

私はその様子に固まった。


「あの、リュミエール?なんだかクソカスから殺意のようなものを感じるのですが……」

『ええ、気のせいじゃないわ』


リュミエールも少し動揺しながら言った。

え?

これはまずいやつ?

大丈夫なやつ?


『あの、リュミエール様……。竜は精霊の魔力を好むと聞いたことのあるのですが……』

『ええ、そうよ』

『この子は先祖帰りを起こしていて、精霊の魔力が多いですよね?』

『そうよ』

『今増加している魔力はどちらの魔力でしょうか?』


リュミエールが顔を青くして固まった。


『自我は……?』

『クソカスー?聞こえてるー?』


クソカスはなにも言わない。

ただ喉を鳴らしているだけだ。

おっけ、やばいやつね?


「とりあえず……」


私は逃げの姿勢を取った。


「逃げるね!!」


私はクソカスが壊したところから外に出た。


『リディール!?ここ三階よ!?』


おっと忘れてた。

この感じ既視感あるぅぅうう!!

詠唱してる暇なんてないし……。

どうしよぉぉおお!!


「風の精よ、我が呼びかけに応えよ。ソフト(柔らかく)ジェントル(優しい)ウィンド()!!」


私の体は優しい風に包まれ、誰かの腕の中に落ちた。

前回はアルデーヌだったけど、今回は玲奈が抱き止めてくれた。


「お転婆がすぎませんか?」

「命の危機で」

「はい?」


私は部屋の方を指差した。

玲奈は指を指した方向を見て、固まった。


「なんです?あれ」

「私の使い魔」

「は?」

「訳あって自我が無くなってるの」

「訳あってが大変気になりますが、なにも聞かないでおきます。今はリディール様を守りますね」


クソカスの咆哮が城に響く。

玲奈は私の手を引いて走り始めた。

クソカスは翼を広げて、私達の前に飛んできた。

目の前に着地した時に、突風が起きた。


「風の精霊よ!我が呼びかけに応えよ!ベリー(とても)ストロング(強い)ウィンド()!!」


玲奈が風魔法を使い、私を守ってくれた。

突風がおさまってからクソカスを見ると、首を振ったりして、頑張って理性を取り戻そうとしていた。


「クソカス……」


私はうなずいてクソカスに近づいた。

クソカスは少し後ろに後ずさった。

逆効果かもしれないけど、やるしかないよね。

私はクソカスの体に触れた。

大量の魔力を感じる。


「クソカス、大丈夫?」

『…………に、げろ』

「逃げたところで追ってくるじゃない」


クソカスは苦しそうに喉を鳴らす。

最初は正直殺してやりたいほど憎んでた。

お兄様を殺して、生き返らせる方法を教えるから見逃せ、なんて自分勝手なことを言い出すから、許せなかった。

でも、関わっていくうちに、嫌いだったクソカスを大切に思うようになっていた。


――リュミエール!!聞いてよ!!

――リュミエール!!聞きたまえ!!


――おい、これは何の茶番だ?

――クソカス、言わない方がいいわ



本当に、今では大切な使い魔だ。


『リディール……』


そう言って、クソカスは咆哮を上げた。

限界だったみたいだ。

クソカスは私に噛みつく勢いで、近づいてきた。

あ、これ死ぬかもなぁ。

でも、まあいいか。

リディールの身体を借り続けるのも気が引けるし、ここで私が死ねば、リディール戻ってこれるかもしれない。

もういいかな。

やれることはしたし……。

そう思って、黙って食われようとした時、玲奈が私の前に来た。

クソカスの牙が玲奈の腕に食い込む。


「……っ!玲奈!!」

「なぜ……なぜ動かなかったのですか!?」


玲奈は私を鋭い目で睨んだ。


「王女殿下!あなたは私の守るべき人です!そんな目で、諦めた顔で立ってるなんて許せません!」


その目は、仕事を全うするために動いただけには見えなかった。

まるで、私を通して誰かを見ているみたい。


『リディール!これを食べて!!』


空からリュミエールとリュメルト、ルミナス様が降ってきて、リュミエールが私に向けて何かを投げてきた。

私はそれをキャッチした。

キャッチしたものを見て、私は絶句した。

明らかにヤバそうなキノコなんですけど。

なんかドクロみたいな模様付いてるし……。


『それを食べれば魔力の増幅が収まるわ!』

『早く食べないと、被害がもっと大きくなるぞ!』


この禍々しいオーラを放つキノコを食えとか平気で言うなよ!

明らかに食べたら死にそうな見た目してるんですけど!?

でも……。

私は玲奈を見た。

すごく痛そうに顔を歪めている。

仕方ない。

私はキノコを口に押し込んだ。

口に入れた瞬間、土と腐葉土のような変な苦味が舌を覆う。

噛むたびに毒々しい汁が喉を滑り落ち、胃の底でねじれるような痛みが広がる。


「うっ……げほっ、げほっ……!」


私は膝をつき、咳き込みながら地面に手をつく。

視界がぐるぐる回り、体内の魔力が暴れ馬のように跳ね回る。

増幅された魔力の渦がキノコの力で無理やり抑え込まれ、爆発寸前のエネルギーが内側で渦巻く。


『リディール!大丈夫!?あのキノコは魔力を強制的に封じるけど、副作用がどきついの。少し我慢してね!』


リュミエールの声が遠くから聞こえる。

ガチでなんてもの食わせてんだよ……。

空から降りてきた三人が慌てて駆け寄ってくる。

体中が痛く、今にも意識が飛びそう。

私は最後の力で、クソカスの方を見た。

どうやら落ち着いて、体が元の大きさに戻っているようだ。


「よか……た……」

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