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第四話  転生先で親子喧嘩を解決させました

「父上!!」

「どうですか?久しぶりの再会は。息子と会えて嬉しいですよね」

「嬉しいわけあるか!あのクソ王子に急に縛り付けられて、引きずられながら愚息のいる塔の部屋の前に連れてこられて……。最近の王族はどうなってる!!」

「……普通、ですよね」

「これが普通なわけあるか!引きずられたせいで擦り傷まみれだ!全く」


アルデーヌはコロスーゾ公爵に駆け寄った。

そしてためらいながらも、公爵の体に巻かれたロープを解こうとした。


「触るな!痴れ者が!」


アルデーヌはそんな言葉を無視して、ロープをいじり続けた。

どうやっても解けないと判断したアルデーヌは魔法を使うことにしたらしい。


「炎の精よ、我が呼びかけに応えよ」

「やめろ!」

スモール(小さな)ファイヤー(炎の)フォース()


次の瞬間、公爵の体に巻かれたロープが燃え上がった。

相変わらず詠唱はダサいけど。

なんで全部英語の読みなんだよ。

あれ?

変な厨二病ポーズしないと魔法使えないんじゃないの?

アルデーヌは手をかざしただけで魔法を使えてるぞ?

あ、アルカとスパールが厨二病なだけなのか


「光の精よ、我が呼びかけに応えよ。ウォーム(温かい)ヒーリング(癒やしの)ライト()


今度は回復魔法か。

公爵の体にあった傷がみるみるうちに消えていく。

私は公爵に近寄った。

アルデーヌが公爵を庇うように立ちはだかったけど、あんまり気にならない。


「公爵、これでわかりましたか?アルデーヌ様は人を意図的に殺しませんよ」

「公爵の地位を持つ者をこんな扱いするのはお前達くらいだぞ」

「お褒めに預かり光栄です」

「褒めてたか?」


冷静かつ適切なツッコミありがとう。

一回やられてみたかったんだ。


「ち、父上は俺のことが嫌いですか?」

「……嫌いだ。嫌いなんだ……」


公爵の言葉が、塔の部屋に重く響いた。

アルデーヌの手がピタッと止まり、彼の顔が一瞬で青ざめる。

私としては、この空気がめっちゃ気まずいんだけど。

いや、待てよ。

ここで私が動かなきゃ、この親子永遠に分かり合えないままなんじゃ……。

そうなれば乙女ゲームのバッドエンド直行コースだぞ、これ。


「ちょっと待ってください、公爵。 嫌いって、ほんとにそう思ってるんですか?」


私は思わず口を挟んだ。


「リディール王女、部外者が口を出す話ではない。息子は妻を殺したんだ。許せると思うか?」

「許す許さないの話じゃないですよ。私は建前ではなく、あなたの本心を聞きたいのです」

「建前じゃなく、本心?」


コロスーゾ公爵は目を細め、私をじっと見つめる。

その視線はかなり鋭い。

でも、ここで引いたらダメだ。

元ヒキニートオタクの私が、この親子のバッドエンドを回避するためになんとかしないと。


「そうです。 公爵、さっきアルデーヌ様の魔法見たでしょ?ロープ燃やして、傷も治して。あれだけコントロールできてたじゃないですか。昔の事故は、ただの子供のミスだったんです。なのに、なんでそんな冷たくするんですか?本当に、アルデーヌ様を嫌いなんですか?心からそう思ってるんですか?」


部屋に重い沈黙が落ちる。

アルデーヌは俯いたまま、拳を握りしめてる。

公爵はゆっくりと息を吐き、椅子に深く腰を下ろした。


「俺の妻を失った痛みは、そう簡単に消えるものではない。あの時、アルデーヌはまだ幼かった。頭では分かっている。事故だったと。だが……」


公爵の声が一瞬途切れ、目が遠くを見る。


「心が、許せないんだ。息子を見るたび、妻の笑顔が蘇る。そして、それが消えた瞬間も……」


めっちゃ切ない。

公爵、めっちゃ愛妻家だったんだな。

でも、だからといってアルデーヌをこんな塔に閉じ込めて、憎しみをぶつけるのは違う。

私は一歩前に出て、アルデーヌの肩にそっと手を置いた。

アルデーヌがビクッとして顔を上げる。


「公爵、わかります。公爵夫人のことを心から愛してたんですよね?だから、辛いのもわかる。でも、アルデーヌ様だって、同じくらい悲しんでるんですよ。だって、母親を失ったんですから。それなのに父親にまで嫌われて、こんな塔に閉じ込められて……。そんなの可哀想すぎませんか?」


アルデーヌが私の言葉にハッとしたように公爵を見る。

公爵もまた、アルデーヌをじっと見つめ返す。

うん、この空気、ちょっと希望が見えてきた。


「アルデーヌ様、言いたいことあるなら、今だよ!ほら、ちゃんと本心ぶつけなさい!」


私はアルデーヌの背中をポンと叩く。

乙女ゲームの主人公なら、ここで仲直りのフラグ立てるんだから。

悪役令嬢かもしれないけど、今はヒロインになってやろう。

アルデーヌは唾を飲み込み、震える声で口を開いた。


「父上……。俺、母上のこと、本当に申し訳なかったと思っています。毎日、毎晩、思い出して……。俺が……俺がもっと制御できてたらって。父上に嫌われるのも無理ないって。でも、俺、父上のことを嫌いになんてなれなかった。父上を失いたくなかった……。だから幽閉も素直に受け入れた。だけど、ずっとずっと寂しかったんです……」


公爵の目が一瞬揺れた。

よし、いいかんじだ。

公爵はゆっくり立ち上がり、アルデーヌに近づく。


「アルデーヌ……お前も、苦しんでいたのか?……俺は自分の悲しみに囚われて、お前の気持ちを見ようともしなかった……。父親失格だ……」

「父上……」


アルデーヌの声が詰まり、涙がポロポロ落ちる。

これは親子和解ルート突入確定!

私は内心で「よっしゃああ!」ってガッツポーズした。

コロスーゾ公爵とアルデーヌの間に流れるこの感動的な空気、めっちゃ乙女ゲームのクライマックスっぽい。

私としては、この瞬間をバッチリ演出できた自分にドヤ顔したい気分。

でも、ほんとアルデーヌの涙と公爵の後悔の表情は心にくる。

公爵がアルデーヌの肩にそっと手を置く。

アルデーヌはびっくりしてるけど、すぐに俯いたまま、震える手で公爵の手を握り返す。

めっちゃいいシーンだ。

なぜスマホがないんだこの世界。


「リディール王女」


公爵が私の方を向いた。

さっきの鋭い視線がちょっと柔らかくなってる。


「お前の言葉がなければ、俺は息子とこうやって向き合うことすらしなかった。メッチャツオイ王国の第一王女、恐れ入ったよ。礼を言う」


うん、もう名前のせいで全部台無し。

マジでファミリーネームを呼ばないでほしい。


「リディール王女、父と向き合う機会、そして本音を言う機会をくださりありがとうございます」

「いえいえ、私はただエゴのために動いたに過ぎません。その一歩を踏み出せたのはアルデーヌ様の勇気によるものです」


私が言うと、アルデーヌは照れたように笑った。

可愛いなおい。

お持ち帰りしたい。

あのー、あいつ。

婚約者のフォーカス・メア・オレサイキョーと婚約破棄してさ、もうこの可愛い子と結婚しよう。

そうしよう。

だってさ、リディールの記憶からしていい人じゃないもん。

はー、マジで婚約破棄したい。


「あっ、そうだ公爵。愛人という名の刺客を傍に置くのはやめた方がいいですよ」

「……え?」

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