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転生先の兄がストーカーを始めた

なぜ私はこの世界の言葉が理解できているのだろう。

あ、この体はディールのものだからか。

納得。

あ、こんにちは。

異世界に転生した、前世クソヒキニートの日本人でーす。

死因は忘れましたー。

今はリディール・セア・メッチャツオイとして生きてまーす。

現在私は、リディールの兄であるアルカ・ミヤ・メッチャツオイにストーカーされている。

おそらくは私が『私、お兄様が少し嫌いになりました』って言ったからだろう。

私はため息をついて、物陰から私を凝視しているアルカに近づいた。


「お兄様、ストーカーじみたことをするのやめてください」

「スッ、ストッ、ストーカー……だと?」


嘘でしょ?

自覚なかったの?


「それでも王族ですか?話があるなら普通にしてください」

「……」


アルカは黙り込んだ。

そして、意を決したような顔をして、鬼のスピードで土下座をした。


「リディ!俺は!異端児差別という!王族にあるまじきことをした!すまない!!」

「いや、そういうのは私に謝ってもどうもならないのでは……?」

「では、アルデーヌに直接謝罪しよう。そうしよう。執事、馬車の用意を」

「あー!もう!いいですから!わざわざアルデーヌ様に言いに行く必要ありませんから!」


全く、王族は行動が早いから嫌だ。

特にアルカは行動力がある上に、思い込みが激しいからめんどくさい。


「どちらにせよ、俺はコロスーゾ公爵邸に行く予定だったからついでにと思ったんだが……」

「先に言えよ、そういうのは」

「リディも来るか?」

「……え?」


突拍子もない言葉に驚いた。

え、なになに?

急に何?

コロスーゾ公爵邸に行くって、つまりあのアルデーヌが幽閉されてる場所に行くってこと?

いやいや、ちょっと待って。

話が急展開すぎるんだけど。


「え、ちょっと、なんで私が?」

「ん? だって、お前、アルデーヌのこと庇ってただろ? だったら、一緒に行って話すのもいいんじゃないかと思ってさ。ほら、行動が大事だろ?」


アルカはニヤッと笑って、まるで「どうだ、俺って妹思いだろ?」みたいな顔をする。

いや、シスコン全開すぎるよ、この人。

でも、確かにアルデーヌの話で私がちょっと熱くなっちゃったのは事実だ。

だって、異端児だからって差別されるなんて、なんか納得いかないもん。

前世のヒキニートオタクの私でも、理不尽な扱いにはムカつくんだから。


「うーん、でもさ、急に押しかけて大丈夫なんですか? 公爵家って、なんかめっちゃ格式高そうだし、幽閉されてる人に会うってハードル高いですよ」

「リディ、細かいこと気にするタイプだったっけ?俺達は王族だぞ。行こうと思えばどこだって行けるさ。それに、コロスーゾ公爵とは昔から付き合いがある。向こうも俺が来るって知ったら、拒否はしないよ」


アルカのこの自信満々な態度、なんかムカつくけど、妙に頼もしくもある。

うーん、さすがシスコン王族って感じ?

でも、アルデーヌに会うって話、めっちゃ興味あるしなぁ……。

だって、幽閉されてる異端児の公爵家長男って、絶対何かドラマチックな展開が待ってるよね?

乙女ゲームだったら、100%「闇落ちイケメン」枠だよ。


「じゃあ行きます。でも、なんか変なことになったら、お兄様の責任だですからね?」

「任せとけ! リディのことは俺が守るよ!」


アルカがまたニヤッと笑って、さっさと馬車の準備を命じ始めた。

うわ、ほんと行動力バッチリだな…。

王族ってこういうとこあるよね。


「リディ、こういうのには対価が必要じゃないか?」

「……なんですか?」

「『お兄ちゃん大好き』って言っ――」

「先に行きますよ」

「あああぁぁあああああああ!!」


◇◆◇


コロスーゾ公爵邸についたら、すぐに執事が出迎えてくれた。

私はアルカにエスコートされて馬車を降りた。


「ようこそいらっしゃいました、殿下。……おや、そちらの方は?」

「私の妹だ」


紳士スイッチが入ったな。

アルカは家族の前だと超弩級のシスコンだが、人前に出ると立派な王子になる。

私はリディールの体に叩き込まれた礼儀作法を駆使して、華麗なるお辞儀をした。


「お初にお目にかかります。メッチャツオイ王国、第一王女のリディール・セア・メッチャツオイです」


私はバッチリ貴族風のお辞儀をキメて、内心「どうだ、完璧だろ!」とドヤ顔。

リディールの体に染みついたマナーがこんな時に役立つなんて、転生特典バンザイ!

執事さんは一瞬驚いたような顔をしたけど、すぐに丁寧な笑顔で応じてくれた。


「これはご丁寧に。リディール王女殿下、ようこそおいでくださいました。コロスーゾ公爵が応接室にてお待ちです。どうぞこちらへ」


執事さんに案内されて、アルカと一緒に公爵邸の奥へと進む。

邸内はめっちゃ豪華。

壁にはでっかい肖像画、床はピカピカの大理石、シャンデリアはやっぱり掃除大変そう。


「リディ、緊張してる?」


アルカが小声で耳打ちしてくる。

シスコン王子、距離近すぎ。


「してないですよ。ただ、なんか…公爵家って雰囲気すごいなって」

「慣れろよ。王族ならこのくらいの場所、朝メシ前だろ?」


しばらくすると、応接室の扉の前に到着した。

執事が静かに扉を開けると、そこにはコロスーゾ公爵がどっしり座っていた。

周りには愛人が五人いる。

愛人が五人はいすぎだろ。

前世でいうなら、ドラマに出てくるマフィアのボスみたいな雰囲気。

でも、貴族らしい品もあるんだよね。


「アルカ様、お久しぶりですね。リディール王女に関してははじめまして。我が家へようこそ」


公爵の声は低くて、なんか人を試すような響き。

やべ、緊張してきた…!


「ごっ、ご機嫌よう、コロスーゾ公爵! 今日はお招きありがとうございます!」


やっちゃった。

ちょっと噛んじゃった。

でも、公爵は気にした様子もなく、軽く頷いてくれる。

ん?

王族に対するこの態度ってどうなんだ?

足を組み、椅子にふんぞり返る。

そして何より、愛人と目の前でイチャイチャチュッチュしてくる!

やめろ!

気まずいだろ!!


「アルカ様、今日は何の御用で?」

「そういう怖い顔をしないでくれ。あなたの領地の話をしにきたのだよ」

「ほう?」

「ただ、リディにはまだ早いからな。あなたのご子息とお話させてください」


アルカがそう言うと、公爵は分かりやすくイラついた顔をした。

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