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第二話  いつもの日常にとんでもない爆弾(驚き)が降ってきました

――昼休み


「いやー、正直驚いたな。まさかセレーネがミスコンに出るとは……」


そう、最後まで誰もやりたがらなかったミスコン出場者は、セレーネに決まったのだ。

推薦ではなく、自らの意思で。


「前から少し興味があったのよ。どうせ秋の学園祭を最後にこの国を去るのだし、言い機会かなって」

「「「「えぇ!?聞いてない!!!!」」」」


メルリ、オスカー、私、アルデーヌの声がきれいに揃った。

いや、マジで聞いてないし初耳なんだけど……。


「まだ言ってなかったっけ?」

「聞いてないよ!なにそれ!」


メルリがサンドイッチ片手にセレーネに詰め寄る。


「元々、私に留学の予定はなかったのよ。魔力は高いけど、私は錬金術のほうが得意だし。兄様がこの国で失踪したから、その調査も兼ねて留学しただけ」

「ルナリア様じゃダメだったの?」

「姉様は魔法を学ぶために留学してるし、捜査は別の人にやらせるべきだと判断したみたい。でも、兄様のことも解決したし、もう私がここにいる理由はないの」


セレーネは淡々と言った。

でも、その目は少し寂しそうだった。


「ところでさ、リディールはさっきから何をしているの?」


セレーネが呆れたように私を見てきた。

それと同時に、アルデーヌ以外のみんなの視線が一気に私に注がれる。


「うわっ!」

「嘘っ、それずっとやってたの!?」


え?

そんなに驚くことは何もしてないと思うけど……。


「なんでアルデーヌは驚かないの……?」

「え?ああ、リディール様が尋常じゃないスピードで仕事してる状態のことですか?」

「ペンの動きが見えない……」

「え、そんなに早かった?」


私は自分の手元を見た。

確かに、生徒会の予算案を作成していた。

でも、普通のスピードだと思っていたんだけど……。


「リディール、お前、人間やめてないか?」


オスカーが呆れたように言った。


「ペンの動きが残像になってるぞ」

「え、嘘でしょ?」

「まあ、リディール様はハイスペックですから。慣れましたよ。この程度」

「この程度って……やばすぎるでしょ……」


メルリが若干引いている。

お父様達もこれくらいだけど、みんなのお父さんとかはもうちょっと遅いのかな。


「ていうか、リディール。お前、いつからそれやってたの?」


オスカーが引きつった表情で私に訊いてきた。

えーっと、食堂に入って少ししてからだから……


「さっきからずっと?」

「セレーネの話を聞きながら?」

「うん」

「……お前、本当に人間?」

「人間だよ!」


私は慌てて否定した。

心外だ。

頑張って押し付けられた仕事こなしてるだけなのに、人外判定されるなんて。

セレーネがため息をついた。


「普通の人間は話を聞きながら複雑な予算案なんて作れないから」

「そうなの?」


私は首を傾げた。


「リディール様、自覚がないのが一番怖いです」


アルデーヌが苦笑いをした。

そんな怖がらなくても……。

私は一段落ついたから、ペンを置いた。


「ところで、セレーネは秋の学園祭が終わり次第帰国するの?」

「ええ、学園祭には父様と母様も見えるらしいから、一緒に帰国するわ。あ、でも、夏休み中盤に一度両親が国に来るの。お兄様の遺体を国に持ち帰るために」


あっ、そっか。

この世界には遺体を火葬する風習はない。

それに、遺体はその人の故郷に埋めるのが決まりとなっている。

長く放置する場合は腐敗しないように腐敗防止の魔法をかけて安置所に保管される。

だから、セティルド様の遺体はまだこの国にある。


「そっか、やっと国に帰れるんだね、セティルド様」

「ええ。あっ、リディール。あなたフォーカス様と面識あったよね?」

「え?うん」

「母様が私に兄様が使っていたチェスセットを遺品くれるって言っていたんだけど、フォーカス様にお渡ししたほうがいいよね?」


その言葉に私が初めてセティルド様に会った時の会話を思い出した。



――コイツは僕に正体隠して、旅行中にいつも宿に来たんだよ!!しかも変身魔法で僕になりすまして、両親に体調が悪いと嘘をついて、僕だけ留守番にさせられるし!!

――それは君が私にチェスで勝つからですよ

――急にカフェでチェスに誘ってきたのはお前だろうが!!

――チェスをした人達はみな親友です。だからあなたも親友ですよ?フォーカス

――お断りだよアホが



――フォーカス!またチェスやろうなー!

――お断りだ!!



「リディール?」


セレーネがボーっとしてしまった私を心配そうに見つめてきた。


「ご、ごめんね。チェスの話だっけ?セレーネがいいならフォーカスに渡したらいいんじゃないかな?」

「そうね。じゃあ、フォーカス様にお渡しすることにするわ」


セレーネは微笑んだ。


「兄様、フォーカス様のことを本当に大切に思っていたから」


セティルド様とフォーカスの関係を思い出すと、胸が温かくなる。

二人は本当に良い友人だった。


「フォーカス殿、喜ぶでしょうね」


アルデーヌが言った。


「彼、セティルド様のこと今でも引きずってるから」

「そうなの?」

「ええ。この前、廊下でばったり会いましたが、元気がなさそうでした」


アルデーヌは心配そうに言った。

いつもはバチバチなのに、割と仲良くしてるんだね。


「友人とやってみてはどうかと寮に送られてきてたから、今日渡そうかな」

「それがいいね」

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