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第一話  いつもの日常が戻ってきました

――翌日


私は一週間ぶりに学園に行った。

教室に入るなり、オスカーとメルリが私に抱きついてきた。


「リディール!新聞で見たよ!大変だったね……!」

「お前がいない間、教室がどれだけ暗かったか分かってんのかよ」


二人の勢いに押されて、私はたじろぎながらもその温かさに自然と口角が上がった。


「ごめんね、二人共。心配かけちゃって」

「本当だよぉ……。リディールまでいなくなっちゃうんじゃないかって怖かったんだよぉ……」

「大丈夫だよ。私はいなくならないから」


教室を見渡すと、他のクラスメイトたちも遠巻きに、でも安堵したような表情でこちらを見ていた。

しばらくみんなと話していたら、見覚えがある人が教室に入ってきた。


「リディール王女殿下、お時間よろしいですか?」


私にそう言ってきた人は、この学園の生徒会長のシリウス・ホゼ・イモタレスゴイだった。


◇◆◇

――生徒会室


「えっと、お話とは……?」


私が訊くと、生徒会長は不敵に笑った。

なんか嫌な予感が……。


「実は、リディール王女殿下に生徒会の仕事を手伝っていただきたくて」

「生徒会の仕事……ですか?」


私は首を傾げた。

なぜ私が?


「実は先日、生徒会会計と書紀が駆け落ちして、学園を退学しまして……」

「どういう状況なんですか、それ」

「私が聞きたい次第です」


生徒会長はため息をつきながら、机の上に散らばった書類を指差した。

そこには山積みの帳簿や報告書が無秩序に積み重なっていた。

まるで、誰かが逃げ出すように放り投げたみたいに。


「彼らは熱烈な恋仲だったようで……。ある朝、突然『愛のため、学園を去ります』という置き手紙だけ残して消えてしまったんです。生徒会は今、会計と書紀の欠員でパンク状態でして」

「駆け落ち……。生徒会メンバーがそんなロマンチックなことを……」


私は思わず苦笑いした。

この学園は魔法と剣術の勉強がメインで、恋愛沙汰なんて遠い世界だと思っていたのに。

極稀に婚約者探しも兼ねて入学してくる人はいるけど……。

そこまでなる?

シリウスは肩をすくめて続けた。


「ロマンチックかどうかはさておき、残された仕事は現実的です。予算の管理、イベントの企画、報告書の整理……。特に今、秋の学園祭の準備が迫っているんです。現在の生徒会メンバーでは手が回らなくて」


彼の目は本気だった。

不敵な笑みはどこかに行き、代わりに疲れたような表情が浮かんでいる。


「でも、なぜ私に?分担すれば……」

「他のメンバーはそれぞれの役割で手一杯です。それに、王女殿下のハイスペックな能力は学園中で有名ですから。魔法の知識、組織運営の経験……。お力をお借りできればと思うんです」


……褒め殺し?

でも、彼の言葉は本心のように聞こえた。

この学園は身分に関係なく実力主義だ。

生徒会長が男爵家出身なのもその証拠。


「分かりました。手伝います。でも、私も公務があるので、全部は無理かも……」

「ありがとうございます! それで十分です。まずは今日から、書類の整理を手伝っていただけますか?」


私は生徒会長の顔を見た。

確かにこの学園での私の力や経験は誰もが知っていることだ。

魔法も学園運営も、組織の取りまとめも……。


「……分かりました。手伝います」


言葉に出すと、自分でも驚くほどすっきりした。

心の中で少しずつ、あの日から止まっていた時間が動き始めたのを感じる。


「ありがとうございます、王女殿下」


生徒会長の顔に安堵の笑みが浮かぶ。

こういう顔を見るのは、私好きなんだよね。

生徒会長は散らかっている書類から何枚、何十枚か取り出して、私の前にドンと置いた。


「では、まずはこの帳簿と報告書の整理からお願いできますか?明日までに」

「あ、はい……ん?」


明日までに……?

明日、までに……?

この山を……?

ん?

聞き間違いだよな?

今日は断罪の日(水曜日)じゃないし……。

でも、もし聞き間違いじゃなかったら……。

机の上に積まれた書類の山。

数えるのも億劫になるくらいの帳簿と報告書を明日までに整理しろってこと?


「……えっと、明日……までにですか?」


私は声に出して確認する。

生徒会長はにやりと笑った。


「えぇ。全て明日までに」


笑ってはいるけど目は真剣だ。

いや、ちょっと本気で鬼畜な目だ。

嘘でしょ?


「残された生徒会メンバーはこのペースで書類を片付けてます。できますよね?」

「アッ、ハイ……」

「じゃあこの書類は持ち帰ってもらって構わないので、明日一枚残らず持ってきてくださいね」


生徒会怖い……。


◇◆◇


「今日は久しぶりに全員揃ったということで、秋の学園祭の役割分担を決めたいと思います」


エルミナ先生がそう言った。

秋の学園祭。

王立魔法学園の名物とも言えるその祭りは、国々を回る商人や、他国の学生、平民もが参加可能の割と大規模な文化祭みたいなものである。

ちなみに、王立魔法学園の秋の学園祭は単なる文化祭ではない。

魔法技術の発表、市場との契約交渉、貴族や商人との顔合わせ。

半分は外交の場だ。

三日間、学園そのものが小さな王都になる。

あと、後夜祭は好きな人と踊ると結ばれるという言い伝えもある。

三日間に渡って行われるその行事の醍醐味は、二日目に行われるミスコンだ。

今年のミスコンは誰が選ばれるのやら。


「はい!ミスコンの運営やりたいです!」


前の席の女子が勢いよく手を挙げる。

教室が一気に華やいだ。

ただ、問題なのが誰一人ミスコンに出たいという人がいないということだ。


「一日目の音楽祭は?楽団どうするの?」

「屋台の配置、去年は導線悪かったよね」

「あ、後夜祭の警備って誰がやるの?」


次々に意見が飛び交う。

私は頬杖をつきながら、自然と全体の流れを見ていた。

誰が中心になり、どこが滞るか。

私は余ったところでいいかな。


「では、役割を書き出していきますね」


黒板に項目が書き出されていく。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


・ミスコン屋台統括

・ミスコン出場

・ミスコン運営

・音楽祭出場

・音楽祭運営

・警備補助

・クラス出し物

・クラス出し物宣伝


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「では、やりたい役職に手を挙げてください」


そして、どんどん役割が決まっていくのだった。

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