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第十三話 他国の王子は記憶を失っています

仮面の男が現れた。

彼の仮面の下から覗く目は、冷たく無感情だ。


「え〜!まだ遊び足りないよ〜!」


ユースティティアは不満げに言うが、仮面の男は無視して私を見た。


「兄様を返して!」


セレーネが叫ぶと、仮面の男は嘲笑うように言った。


「セティルド?ああ、彼のことか。もう、彼は君の知っているセティルドではないよ」

「どういう意味……?」


仮面の男は仮面の下で笑った。


「記憶を代償に莫大な魔力を手に入れさせたのさ。知っているかい?人間は自らに備わっている魔力を駆使すると、無理やりだけど魔法が使える。だが、それは体に負担がかかるからな、使いすぎるといずれ死に至るのさ」

「……っ!」


セレーネが息を呑む。


「嘘だ……!兄様がそんな……!」

「本当だよ。もう、彼はヴァニタスの忠実な人形さ」

「ふふっ!記憶を代償に魔力を得るなんて、ボスは本当に天才だよね〜!セティルドくん、今はただの強いお人形さんなんだよ〜!」


ユースティティアが無邪気に笑いながら、仮面の男の隣でクスクス笑う。

その言葉に私の胸が締め付けられるように痛んだ。

記憶を……代償に?

セティルド様の大切な思い出、家族への想い、すべてを犠牲にしてまで……。


「そんな……酷い……!」


セレーネの声が震える。

彼女は仮面の男を睨みつけ、涙を浮かべながら一歩前に出た。


「兄様を……返してよ!そんなの絶対許さない!」


仮面の男は静かに手を挙げた。

その合図でセティルド様がどこからか現れた。

彼の目は虚ろで、まるで魂が抜け落ちた人形のよう。


「兄様……!」


セティルド様に近寄ろうとするルナリア様がセレーネを制止する。


「セレーネ、危ない!あれはもう……私達の知っているお兄様じゃないわ!」


セティルド様の手のひらが、無言で私達に向けられる。

その先端から黒い魔力が溢れ出している。


「一つ訊いていいかしら?」

「何だ?」


私が訊くと、仮面の男は私を見た。


「ヴァニタスのボスはセティルド様を捨て駒としてみてたわけ?」

「愚問だな。おい、ユースティティア。足止めはもう十分だろう。帰るぞ」

「待て!」

「待てと言われて待つ敵がいるのかなぁ〜?」


ユースティティア達はそう言ってその場を去った。

クソッ、どうすれば……。

このままじゃセティルド様が死ぬのも時間の問題だ。

あれ?

手になにかついてる……?


「あれは、SSランクの呪具……?」


アルデーヌが呟いた。


「知ってるの?」

「呪具に関する本は一通り読んでましたから。あれは、遥か昔に精霊の力を使わずに、人間の魔力だけで魔法を使うことを目的として作られたものです。しかし、人間の魔力を底上げする代わりに寿命を削る上に、装着した人の魔力が低いと魔力が暴走して自らの身体を切り刻むと言われています」

「なにそれ怖い」

「王宮の禁忌区域に封印されているものがなぜここに……」


――禁呪に関する本が数冊、SSクラスの呪具が二つ盗まれた


あ、あれか!

つまり、呪具の一つは回収できるかも知れないと。

そんな事を考えていると、セティルド様が動いた。

一瞬で距離を詰め、魔法を放つ。


「展開っ!」


セティルド様の魔法は普通の魔法と違い、結界にぶつかると弾けなかった。


「……っ! 強い……!」


障壁が軋む音が響き、ヒビが入り始める。

セティルド様の力は以前の比じゃない。

記憶を失う代償に得た魔力……。

それがこれほどまでに強力だなんて。


「リディールこのままじゃ壊れる!早くなんとかして!」


ペルセポネが辛そうに叫ぶ。


「みんなで反撃を!致命傷は避けて!」


フォーカスが風魔法でセティルド様を吹き飛ばそうとする。


「風の精霊よ!我が呼びかけに応えよ!インテンス(激しい)ストーム(嵐の)ウインド()


強風がセティルド様を襲うが、彼は少しよろめくだけだ。


「兄様!目を覚まして!」

「こんなのお兄様が望んだ未来じゃないでしょ!」

「セティルド!あんたは妹を傷つけるためにヴァニタスに入ったの!?違うでしょ!!」


一瞬、彼の動きが止まる。


「……妹……」


小さな呟きが聞こえた。

セティルド様の目がわずかに揺れる。

記憶が……残ってる?


「兄様!」


セレーネが叫ぶ。


「思い出しかけてるだけじゃ足りないかも……」

「じゃあどうするんですか?」


ルナリア様が戸惑ったように訊いてきた。

直接精神に干渉できればいいんだけど……。

あ、七年前、エルディーお兄様に精神干渉に近いことをした。

あれを応用すればいけるのでは?


「ごめん、しばらく意識失うね」

「はぁ!?正気!?」


ルナリア様が訊いてくる。

けど、今は成功するかなんて考えてる暇ない。


「ペルセポネ、私に結界を張って」

「……なにか策があるのよね?」

「うん。もしかしたら記憶を取り戻せるかもしれない」

「分かった。絶対に成功させなさいよ?」

「うん」


ペルセポネは私に結界を張った。

私は詠唱する前にルナリア様の腕を触った。

これでよし。


「我が呼びかけを聞きし微精霊達よ。我が呼びかけに応え、力を貸したまえ。我、リディール・セア・メッチャツオイをセティルド・エル・シシュナの夢の中へ誘え」

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