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第八話  他国の王子に狙われた少女が可愛い姿で来てくれました

「おはようございます!リディール様!!」


聞き慣れた声で目を覚ますと、そこにはいるはずのない人がいた。


「シル……ビア……?」


シルビアの正体はペルセポネだったから、もう二度と会えないと思っていたのに……。


「驚きましたか?ヴァニタスはシルビアの姿を知らないので、こっちの方が安全だと陛下に言われたんですよ」

「あー、そっか。ペルセポネの姿だとバレちゃうもんね。でもさ、その喋り方はなんなの?」


ペルセポネは少しぶっきらぼうな喋り方をしていたはずだ。

確かにシルビアはこんな感じだったけど、口調までシルビアに合わせる必要はなくないか?


「ほら、あたしって姿を変えるとちょっとそれに引きずられて、口調とかも変わるんだよね〜」

「どういうシステムだよ」

「それより、昨日は大変だったらしいですね。情緒が」

「あー、うん。セティルドを殺せって言われた後に、お兄様に追っかけられたからね」

「情緒が大変だったってレベルじゃないですよね、それ」


ペルセポネが、やれやれと肩をすくめた。

若干呆れが混ざっているのは、アルカがドシスコンだと知っているからだろう。


「人を殺せって言われた後に、あのシスコンに追いかけられるとか、なかなかやばいですね」

「慰めてる?」

「事実確認ですよ?」


相変わらず毒を吐く子だな。

見た目はふわふわ系ヒロインなのに、中身がこれ。

ペルセポネだからなおさらだ。


「ねぇ、もう会えないと思ってた?」

「うん。だってペルセポネはペルセポネとして生きるって言ってたから……」


ペルセポネは一瞬だけ視線を逸らして、すぐに軽い笑顔を作った。


「悪かったわね、ペルセポネとして生きるって言ったのに、早速ペルセポネを放棄して」

「ううん、前とは違うじゃん。だからいいよ。それに、精霊もきっと許してくれてるでしょ?」


ペルセポネは「どうだろう」と言いながら、魔法詠唱をした。

すると、手のひらに小さな水の玉が現れた。


「うん、大丈夫そうだね」


ペルセポネは水の玉をパチンと弾いて消すと、不敵に笑った。


「あんたがまた変なことに首を突っ込んで死なないように、あたしが見張っててあげるわよ」

「相変わらずの言い草だね……。でも、助かるよ。……ペルセポネ、あなたに聞きたいことがあるの」


私はベッドから降りて、彼女の正面に立った。

シルビアは十二歳だから、私よりも少しだけ背が低い。

少し見下ろす形でペルセポネの目を見る。


「セティルド様がカエルム家を襲った時、本当に彼は……本気だった?」


ペルセポネは一瞬、真剣な目つきになった。


「……本気に見えたわよ。魔法の威力も、殺気も。でもね、リディール。あいつ、あたしを狙った攻撃をわざと数センチだけ外してた気がするの」

「えっ……」

「あたしが王立魔導師団に守られたのも、あいつが時間を稼いでくれたからなんじゃないかって……今思えばそう感じるわ」


ペルセポネの言葉に胸の奥が熱くなった。

やっぱり、セティルド様は変わっていない。

彼は、自分を犠牲にしてでも、誰かを守ろうとしているのかもしれない。


「ねぇ、ペルセポネ。私、セティルド様を助けたい」

「分かってるわよ。あんたならそう言うだろうと思ってた」


ペルセポネは呆れたように言いながらも、その瞳には強い意志が宿っていた。


「陛下からは『王宮に匿う』と言われているけど、あたしはあんたの計画の協力者として動くわ。シルビアの姿なら、ヴァニタスからも隠れられるしね」

「いいの? 危ないよ」

「今更何を言ってるの。あんたに命を救われた時から、あたしの命はあんたに預けてるようなもんなんだから」


さらっと重いことを言うのは、彼女なりの照れ隠しなのだろう。

私は思わず彼女の手を握った。


「ありがとう、ペルセポネ。……あ、今はシルビアだね」

「そうよ、姫様。しっかりしてね?……さて、学園に行く準備を始めましょうか!」


……この人のメリハリどうなってんの?


◇◆◇

――魔法学園


「今日は王立騎士団の副団長である、アシガクサイ騎士爵現当主のサフィーア・カナ・アシガクサイ様に剣術を教えていただきます」

「サフィーア・カナ・アシガクサイです。……名前については何も言わなくて結構。自分でも分かっているから」


訓練場に現れたのは、鋭い眼光を放つサフィーアだった。

実は言うと、Sクラスはサフィーアとの都合が合わなくて、今までずっと剣術の授業はできてなかったんだ。

ただ、なぜか先に授業を受けていた人達は、口を揃えて「地獄」「もう行きたくない」と言うのだ。

どんなスパルタ教育をしているのやら……。

サフィーアの凛々しい姿に、生徒達の間に緊張が走る。

……が、彼のファミリーネームを聞いた瞬間、何人かの生徒の顔が微妙に引き攣った。

アシガクサイ。

……足が、臭い?

私も珍しくファミリーネームに引っかかった。

いや、アバズレーとかハゲテールとかも結構引っかかったよ?

でも、それは昔に与えられたファミリーネームだ。

しかし、サフィーアが騎士爵という爵位を貰ったのは割と最近だ。

成り上がりのような騎士爵や成金貴族は、その一族の特性?

のようなものをファミリーネームとされる。


「王立騎士団副団長として、今日から皆さんの剣術指導を担当させていただきます。……言っておきますが、俺の授業は厳しいですよ」


サフィーア様は腰の剣を抜き放ち、流れるような動作で正眼に構えた。

その動作に一切の無駄はなく、まさに達人の風格だ。

しかし、優しく風が吹いた時にとんでもない匂いが漂ってきた。

何人かが鼻を押さえて顔を青くしている。


「リディール様、あの……アシガクサイ様なのですが……」


隣でアルデーヌが小声で囁いてくる。


「あれ?アルデーヌも知り合いなの?」

「はい、一応俺は王立騎士団にも所属しているので……」


うわっ、コイツスパダリだった……。


「彼は……その、驚異的な脚力とそれに伴う凄まじい発汗量で知られていまして……。『戦場を駆ければ草木も枯れる』と謳われるほどです」

「それ、褒めてないよね!?絶対に生物兵器的な意味だよね!?」


私は思わずツッコミを入れた。

名前の由来はまさかのガチだった。


「……何か言いたげな顔をしていますね、みなさん。言っておきますがこの臭いは俺の『努力の結晶』です」


サフィーア様が涼しい顔でそう言うたび微かな風に乗って、努力の結晶(物理的な刺激臭)が訓練場を蹂躙する。


「うっ……努力が、重すぎる……」

「目が、目がぁぁぁ……!」


耐性のない生徒たちが次々と膝をつく。

もはや剣術の授業というより、毒ガス訓練の様相を呈してきた。

サフィーアの足がこんなに臭かったなんて……。

どうして前は平気だったんだ……!


「さて、まずはみなさんの実力を拝見しましょう。……アルデーヌ・テア・コロスーゾ。前へ」

サフィーアに指名され、アルデーヌが覚悟を決めたように一歩前に出た。

「……はい」

「コロスーゾ公爵家の次期当主候補ですね。王立騎士団に所属していながら、普段は王立魔導師団の活動に専念しているらしいですね。そんなあなたの腕前、期待していますよ」


サフィーア様が木剣を構える。


「行きます!」


サフィーアが踏み込んだ。

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