第98話 勇者、大きなモノノケに立ち向かう。
「勇継さ~ん!!」
片耳に聞こえる微々たる声に勇継は気づき、左右を見渡す。
「楓ちゃんじゃないか!?どうしてここに···?」
勇継は楓の姿に戸惑い、バランスを崩す。
「勇継さん!私も加勢します!今は逃げる方法を考えましょう!」
「······それは出来ない相談だな」
「どうしてですか?」
「この化け物を抑える者がいなくなれば被害はこの洞窟内では済まされなくなる···」
「勇継さんたちが倒れてしまっても同じようになってしまうじゃない!」
「いや、それは無い。俺たちだけで被害が収まれば、この化け物はこの洞窟から出る方法が分からず、ここに残るだろう···。この世界には俺らよりも強い人間がわんさかといる。だから、そのために俺らはここで食い止めなければならないんだ···」
「どうして、みんな···」
楓は腰を落とし、泣き始めた。
「楓ちゃん···」
無遠慮なことに目の前にいる化け物は楓もろとも勇継に殴りかかった。
その時だった。
化け物の右の大振りを空間が止めた。
「どういうことだ···?」
オーバーロードたちは摩訶不思議な現象に戸惑い絶句しているが、楓1人だけは嬉しそうな表情を浮かばせた。
「神黒さん、来てくれたの!」
楓の言葉に戸惑いを隠せないそれぞれの侍。
静寂が包み込む洞窟内の中からうっすらと人体が現れ出した。
「神黒···?どういうことだ···」
「遅れてすまなかった!」
「どうしてここに神黒がいるんだ?」
「たまたまこの近くの依頼を受けていた時にオーバーロードの姿を見つけて楓に連れられて来たんだ!」
「お前らまで巻き込みたくはない。早く逃げるんだ!俺たちは逃げる時間を稼ぐ!早く行けぇ!」
神黒は勇継の言葉に動揺することなく、一言返す。
「俺は逃げるために来たんじゃねぇ!この化け物を倒す気で来たんだ!オーバーロードさん!力を合わせてこの化け物を倒しましょう!!」
そういうと神黒はすぐに走り出し、化け物に向けて炎刃と土術のバレットを放ち始めたのだった。
「行くぜ~!!」
神黒の勢いに遅れないように勇継たちも攻撃を始めた。
「ゴァーン!」
化け物が奇妙な悲鳴をあげる。
「どんどん撃って行くぜ~!!」
神黒は大気一体を使い、体を再び透明化させ、目の前に立ちはだかる化け物に次々と斬撃を喰らわせる。
化け物の体は10数個の切り傷と土術の球によって与えられた腫れ跡でいっぱいになっていた。
「お前1人でここまでやるとは···」
周りにいる侍たちも神黒に続いて、次々と攻撃を化け物に与えていく。
「ゴゥギャーー!!」




