第94話 勇者、クエストを受ける。
神黒たちはドラン国の侍処を拠点に1ヶ月もの期間を過ごしていた。
「神黒さん!」
「どうしたの楓?」
「私たちって、もうここに来てから1ヶ月も過ぎているわけで、神黒さんも国に認められた勇者ですし、そろそろ拠点になる家を探しても良いんじゃないかなって···」
「楓の言う通りかもな···」
神黒は今いる宿屋を見て、深く考えた。
神黒たちはいつも通り新規の依頼書が無いか、探しに侍処へ向かう。
侍処に着いた神黒たちは入り口横に吊るされている掲示板に張られた依頼書を見る。
第五下級妖怪討伐や薬草の採取が目立つ中で掲示板中央に赤い文字で《緊急クエスト》と書かれた依頼書が張られていた。
依頼内容はここ2ヶ月で侍が30人以上消息を絶っている理由の調査のようだ。どんな侍も始まりの洞窟で消息を絶っているらしい。
神黒たちはこの奇妙な依頼書を見て、カウンターにいるフェリアに詳しい情報を聞きに行った。
「このクエストは、確か十日前に洞窟から1人で帰ってきた侍の話から始まった依頼ですね!その男の侍は奇妙なことに新人侍で危険な洞窟に行って仲間を失ったのではなく、新人に優しい洞窟で知られている始まりの洞窟で仲間を失ったと言っておりました。最初は始まりの洞窟だからと奥に進みすぎてしまったことが理由かと思っていたのですが、階層も第1層や第2層で安全マージンをしっかり取っていたので不思議に思って少し調べてみると他にも同じような報告があることが分かったので、いっそ侍に頼んじゃおうと思いまして!」
確かに危ない洞窟には馴れている侍が調査した方が効率的に良いな。
「もうすでに誰かが受けたりしているの?」
「確かこのクエストはオーバーロードさんたちと紅蓮の鉄拳さんたちが受けましたね!」
紅蓮の鉄拳は分からないがオーバーロードの人たちが受けているから、俺たちが受けなくても良いか···。
「このクエスト、受けます?」
「今回は辞めとくよ!その代わりに俊足草の採取クエストを受けます!」
「分かりました!受注しますね!」
神黒たちは奇妙なクエストを頭の片隅に残しながら俊足草の採取クエストへ出向くのであった。
「神黒さん、どうしてさっきのクエストを受けなかったんですか?」
「まぁ、俺らはまだ新人侍の枠に入る侍だ!ベテラン侍パーティーに任せるのが上等だろう」
「確かにそうだけど······」
楓はしぶしぶ受け入れ、神黒と共に俊足草のある洞窟へ向かった。




