第90話 勇者、神から能力を授かる。
「譲渡の呪文は成功したようだな!」
イザナミは呪文を唱え終えると元々入っていた完治草の中へ戻ってしまった。
「イザナミ様!どこへ?」
「ここじゃここ!!」
何だこの声、脳に直接語られているようだ。
「察しが良いのう!端的に言えば、君の手に握られている宝石に宿っている状態なのだ!」
神黒は握っている手を開き、視線を送るとそこにはひし形の形をしている、澄んだ緑色の宝石があった。
神黒が宝石を人差し指と親指で持っているとイザナミ様が脳裏に話しかける。
「そうじゃそうじゃ!その宝石少しでもヒビが入ったら、儂の魂消滅するから···」
「え!?」
神黒はイザナミの言葉に驚き、イザナミの魂が宿った宝石を落としかけた。
「脅かさないでくれ!一瞬、落としかけたじゃないか」
「すまんすまん、少し遊び心が出てしまった」
神黒の表情を見たイザナミは心の底から申し訳なさそうに謝ったのだった。
━━━翌朝。
「はぁー!!」
まだ少し眠いな〜。もう少しだけ寝ようかな···。
神黒は起こした体をまた布団の中に仕舞い込む。
━━━コンコン!
何だ···?まぁいいや。
━━━ゴンゴン!
うるさいな〜。誰だか知らないけど、寝る邪魔しないでよ。
━━━ガンガンガン!
「起きてー!!」
はぁ。何だ?
神黒は視界がぼやけて、ふらつきながらも足を扉の下へ進めた。
━━━ガチャ。
「誰だ?」
「私よ私!楓だよ。太陽も昇ってるし、今日もクエストを受けに行こう!」
「まだ、眠いから寝てていいか···」
「えー···、私たちもう準備を終わらせちゃったよ」
気を沈ませる楓に向けて、誰かが話しかける。
「待て、お主!」
「誰か呼んだ?」
突然ポケットに入れていた宝石が輝きだした。
「私だ!今回からこの神黒と共にすることとなった」
楓は脳裏に直接声が語りかけられてくることに驚いた。
「何この感覚!?」
「お主の脳に直接語りかけているんだ」
「あなたは誰なの?」
「私は自然の精霊、フローレンだ」
あれ?イザナミじゃ無かったっけ?
それは本来いる世界の名じゃ。こやつらにイザナミと言っても伝わらないじゃろ。だから、端的な精霊と名乗っておるのじゃ。
そういうことか!
「っで、そのフローレンさんがどうして私を呼んだの?」
「理由は複数あるが、とりあえず神黒の仲間には自然の加護を与えたくてな!」
イザナミは楓に自分の加護を与えた。
「ありがとう!フローレンさん」
「礼は要らん、当然のことをしたに過ぎない。それより、話は戻るが私もお主の言っていたクエストと言うものに興味が湧いた!私もそれに同行したい。どうだ、今すぐ行かないか?」
「フローレンも言うのか!?んー。分かった···。今すぐ準備するから宿屋の目の前で待ってろ」
「いぇーい!分かった。桜と一緒に待ってるね!」




