第82話 勇者、王都へ行く。
「神黒たちって王都に行ったこと無かったっけ?」
「はい、一度も行ったことが無いですけど···」
「なら、少し王都の雰囲気に圧倒されてしまうかもしれないな···」
少し心配した様子で僕らを見る勇継たちは共に見合せる。
「···?」
この時はまだ、勇継たちの言う圧倒されるの本当の意味を知るよしもなかった。
「ここが王都!?」
全体的に茶色い建物が多く、土の家に土の壁、都のほとんどが土で作られた街であった。
「土の壁だからってみくびるんじゃねぇぞ!これでも巨人の攻撃さえ防いでしまうほど固く頑丈な壁なんだぜ!」
到底そこまで頑丈とは思えない神黒は試しに全力の突きを土の壁に叩きつける。
━━━トン!······。
あれ···!?全力の拳が当たった音とは思えない音が聞こえたような···。
「分かっただろ?この壁を壊せるのはモノノケくらいだろ!ワッハッハ!!」
神黒はこの時、どういうわけか勇継のことが嫌いになった。
王都の中へ入る神黒たちはまず、侍処へ向かった。
「オーバーロードさん!やっと帰ってきましたか!あなたたちが来るのを待っていたんですよ!」
勇継は訳が分からなかったため、受付嬢に聞くと、勇継たちが旅に出ていた途中でガンスパイダーを倒したことで王城に呼ばれたらしい。
「すまん!!神黒、案内が出来なくなったのは悲しいが王城の一件が終わった時は、その時また会おうな!じゃあな~」
勇継たちはそう語るとそそくさと王城の方向へ消えていったのだった。
「これからどうしようか楓、桜?」
「どうしましょう···」
「とりあえずお腹も減ったし、飯屋にでも行くか」
神黒たちは王都で昼食を取るために、飲食のできる店を探しながら街中を歩いていると細道に雰囲気のある飲食店を見つける。
「あそこなんて良いんじゃないか?」
「あそこにしよう!何か良い匂いがあそこから匂ってくるから!」
神黒たちは細道に入り、店のある場所へ進んで行くと何だか古民家カフェのような面影を帯びていた。中に入ると一人の男とバーの制服らしさを感じる渋い男子店員が話しあっていた。
「おぉ、見たことない顔だなぁ。外の者かい?」
神黒たちは小さく会釈する。
「ここって料理とかは出るんですかね?」
「出るよ!これでも料理屋名乗ってるから」
店員はメニュー表を神黒たちに手渡した。
メニューにはサンドイッチやフレンチトーストのような喫茶店にありそうなメニューが多かった。
「僕はサンドイッチ一つ、楓たちにはフレンチトーストを一つづつくれないか?」
「分かった!少し待ってくれ···」
店員は料理をするために調理準備をし始めた。
「お前さんたちはどこから来たんだ?」
カウンターで店員と話していた男が神黒たちに話し掛けてきた。
「鬼山の麓にある村から···」
「おぉ!丁度良かった!!そこにドワーフのよな強い男が居なかったか?」
神黒はドラントのことを思い出し、カウンターでコーヒーを飲む男に話す。
「そうだ!ドラント兄さんだよ!兄さんは今どこにいるんだ!!」
「それは······」
神黒の様子を見て、神黒が言いたかったことを察する。
「そうか···、ドラント兄さんはもういないんだな······。しょうがない!何か貰っていたり、遺言だったりはあるか?」
神黒はそういえばと書類のことを思い出し、話した。
「そうか、次期当主を決めたんだな···。ドラント兄さんらしい選び方だ!俺も当然このことに対して賛成だ!」
話についていけていない神黒たちはドラントを兄さんと呼ぶ男に質問するともう一度ゆっくり話してくれた。
「ドラントさんが王様だってぇ~!!」
ドラントはこの国、【ドラン】の王様ということを初めて知った神黒は少しの間フリーズしてしまったのだった。




