第80話 勇者、久しぶりの休息を得る
「こんな地味なことをなぜ俺たちがやらなきゃいけないんだよ!」
勇継が愚痴を吐きながら復興の手伝いをしていると恵里が勇継のことを叱り始めた。
「文句言わない!!私たちは居させていただいている側なのよ!!」
「そんな怒るなよ!冗談、冗談···」
「···本当に反省してるのかしら!」
勇継と恵里の痴話喧嘩を神黒たちは微笑ましく思いながら、眺めるのであった。
「いや〜、本当に助かります!良ければ何かお礼がしたいのですが···」
「良いですよ。知り合いのいる村の手伝いなら喜んで手伝いますよ!」
村人と軽いお話をしながら建物などの引火によって焦土になった畑の土を村の外まで運んでいく。
神黒が村人と共に畑作業をしていると村長の自宅の方向から楓と桜がバスケットを持ちながらやってきた。
「神黒さ〜ん!食料を届けに来ましたよ~!」
楓たちは作業をしている村人たちに楕円形の茶色いパンと木製のコップに入った水を配っているようだ。
「神黒さんの分です!」
「ありがとう!ゴクッ。···うめぇ!労働者の身体には染みてくるぜ!」
「私たちは他の場所にも配りに行くので、この後も頑張ってくださいね!」
楽しそうに次の場所へ向かっていく楓たちは、初めて出会った時とは比べ物にならないほどに明るくなっていた。
「おう!」
━━━夜━━━
村の復興に尽力していた神黒たちは一軒の家を借りて、夕飯を共に食べていた。
「今日は私特製の山草汁に鶏肉の焼き物、そして米の贅沢定食だわ!」
楓たちの親が僕らのために夕飯を作ってくれたため、テーブルに夕飯を並べ、囲うように僕らは食べる。
「これめちゃくちゃ美味い!!どんなレシピか聞かせてください!」
恵里が興味津々に楓の母親にレシピを教わろうとする。
「良いわよ!でも、食事の後でね!」
恵里は嬉しそうにしながら食事を楽しむ。
「久しぶりのお母さんのご飯······、とっても美味しい」
楓は久しぶりの親のご飯に涙を流す。楓の表情はとても嬉しそうに食べていて、こちらまでもらい泣きしてしまいそうになる。
「良かったな、楓!」
「うん!」
「そんなに感動しながら食べてくれると作った側も嬉しいな。お帰り楓、桜···」
楓の母親は優しい笑顔を浮かべながら、楓たちをしっかりと抱きしめた。
楓の母親が作った夕飯を食べ終えた神黒たちは食器を戻し、本題へと意識を変える。
「さて、ここに君たちを呼んだのには理由がある。この村にいるエリクレールという者の正体やキャロックさんの生存について、そしてこれからの方針を決めときたいんだ!」
真面目そうな顔を浮かべる勇継は、神妙な面持ちで話し始める。
「神黒、君はエリクレールとは知り合いのようなことを言っていたが、少し詳しく話してくれないか?」
神黒は勇継に言われるがままに、エリクレールのことについて話した。
「大体のことは分かった。キャロックさんとのつながりについては神黒も知らないと言うことか?」
「あぁ···」
「俺はエリクレールを信じて良いのか、未だに悩んでいる。本当に信じるに値するのか疑問だからな」
確かに魔鬼族であるエリクレールを信じて良いのか?
「でも、助けられたことには変わらないのでは、それなら今は信じるべきなのではないか?」
「確かにそうだな···」
結局、エリクレールに関しては現状維持が最善策ということになり、話は収束した。
「これからどうしよう?俺たちは今、ここに居候になっている状態だ。いつかは離れて、どこかへ向かわなければならない。俺らオーバーロード的には一度王都に戻ることにしたんだが、神黒たちも来るか?」
神黒はとても悩んだ。なぜなら、全国の情報がそこに集まる街、王都に行くチャンスを逃すのは惜しい。だが、せっかく一休みでき、楓たちも嬉しそうにしている中で王都に行くのはどうなのだろうか━━━
「少し考えさせてくれないか?」
「あぁ、分かった。考えがまとまったら教えてくれ!」
こうして、神黒たちは自分の寝床へ戻っていったのだった。




